カレンダーは、だれかが気まぐれに決めたものではありません。あまった時間の始末のしかたを、倍数を三重にかさねて解いた答えです。
「1年は365日」と習います。けれど、これは切りのいいところで止めた言い方です。地球が太陽のまわりを1周して、もとの位置にもどってくるまでの時間を、日にちで正確にはかると、こうなります。
この 0.2422日 が、うるう年の話のすべての出発点です。時間に直すとどれくらいでしょうか。1日は24時間なので、かけ算します。
つまり、カレンダーで「1月1日になった」と言っているそのとき、地球はまだ1周を終えていません。あと5時間49分ぶんだけ、走り足りないのです。逆の言い方をすると、1年を365日で打ち切ってしまうと、毎年5時間49分ずつ、カレンダーのほうが先に進んでしまいます。
1年だけなら、たいしたことはありません。半日にもならない差です。でも、こういう小さなずれはたまります。
700年ほうっておくと、カレンダーの1月と、実際の季節の7月が入れかわります。「あけましておめでとう」と言っている日が真夏になるということです。ずれを放置できない理由は、ここにあります。
4年たつと、ずれがほぼ1日分たまります。そこで、4年に1回だけ、1日多い年を作る。これがうるう年の最初の考え方です。多い1日は2月29日として置かれます。
ここが大事なところです。1日だけ多い年をまぜると、1年の平均が365.25日になる。365日ちょうどではなく、0.25日ぶんだけ長い年を、平均として作り出したわけです。実際に必要なのは0.2422日でしたから、かなり近づきました。
どの年をうるう年にするかは、4の倍数で決めます。西暦を4でわってわりきれる年です。2024年、2028年、2032年。偶数と奇数・倍数と約数で習ったことが、そのままカレンダーの中で使われています。
ところが、0.25 と 0.2422 は、同じではありません。ひき算してみます。
4年に1日足す方法だと、毎年11分ほど足しすぎになります。さっきとは向きが逆のずれです。少なすぎたのを直そうとして、こんどは多すぎた。
11分なら無視できそうに見えますが、これもたまります。
実際、この足しすぎをそのままにしていた時代があり、16世紀のヨーロッパでは暦が春分から10日ほどずれていました。そこで1582年、400年に3回だけ、うるう年をやめるという修正が入れられます。いまわたしたちが使っているカレンダーは、このとき作られたものです。
「400年に3回やめる」と言われても、どの年をやめるのかを決めなければ使えません。選ばれたのは、100の倍数の年でした。100の倍数は400年間にちょうど4回あります(たとえば2100・2200・2300・2400)。そのうち3回やめて、1回は残したい。残すのは400の倍数の年と決められました。
ここで起きていることを、倍数の言葉で言いなおします。4の倍数の中に100の倍数がふくまれ、100の倍数の中に400の倍数がふくまれている。大きなふくろの中に、小さなふくろが入っている形です。
内側にいくほど条件がきびしくなり、そのたびに前の判定がひっくり返ります。入れて、取り消して、また入れる。3段の判定です。
実際に年を見て判定するときは、上から順にたどるだけです。
ためしてみます。
2000年がうるう年だったことは、覚えている大人も多いはずです。けれどあれは400年に1度しか来ない例外中の例外でした。次にうるう年でなくなる4の倍数は2100年です。
この3段のきまりで、1年の平均日数はどうなるでしょう。400年のうち、うるう年は100回から3回へって97回です。
1年あたりのずれが26秒。1日ぶんたまるのに3300年かかります。小数第4位までそろえたということです。小数のわり算で習った「どこまで計算するか」という感覚が、そのままカレンダーの設計になっています。
足す1日を、なぜ12月31日ではなく2月29日に置くのか。これは算数ではなく、歴史の事情です。
古代ローマの暦では、1年の終わりが2月でした。1年の最後に日数を足したり引いたりして調整していたので、その名残で、いまも2月が調整の場所になっています。9月を意味する September に「7番目」という語(sept)が残っているのも同じ理由です。2か月ぶんずれているのは、あとから月が足されたからです。
ですから「2月だけ28日で短いのは、なぜか」という問いの答えは、2月がいちばん後ろだったからということになります。短くて損をしているのではなく、あまりの引き受け役なのです。
うるう年は、曜日の動き方でも顔を出します。1年は52週とあまり数日です。
このあまりが、来年の同じ日付の曜日をずらす数です。今年の誕生日が火曜なら、ふつうの年をはさむと来年は水曜。うるう年をはさむと1つとびこえて木曜になります。
「去年は日曜日だったのに、今年は平日になってしまった」と思うことがあるのは、このあまりのしわざです。わり算のあまりが、生活の中でそのまま働いている例だと言えます。
その1 「4でわりきれれば必ずうるう年」と覚えてしまう。
ほとんどの場合これで合ってしまうので、まちがいに気づきません。生きている間に反例に出会わない人もいます。次の反例は2100年です。
その2 100の倍数をぜんぶやめてしまう。
400の倍数を戻す3段目を落とすと、2000年がふつうの年になってしまいます。やめるのは4回のうち3回で、全部ではないと押さえてください。
その3 0.2422日を「2422日」のように読んでしまう。
小数の位取りを取りちがえると、話がまるごと合わなくなります。0.2422は1日より短い、4分の1弱の時間です。
その4 「ずれを直す」の向きを取りちがえる。
日を足すのは、カレンダーが実際より先に進みすぎたのを、うしろへ引きもどす作業です。逆に100の倍数で1日やめるのは、足しすぎた分をけずる作業です。足す理由とやめる理由は、向きが反対です。
Q1 1800年はうるう年だったか。
A 4でわりきれ、100でもわりきれ、400ではわりきれない。だからふつうの年です。
Q2 2026年から数えて、次のうるう年はいつか。
A 2026の次の4の倍数は2028。100の倍数ではないので2028年です。
Q3 2001年から2100年までの100年間に、うるう年は何回あるか。
A 4の倍数は2004から2100までの25回。うち2100年は400でわりきれないのでやめるので、24回です。
Q4 ある年の3月1日が金曜日だった。その年がうるう年でないとき、次の年の3月1日は何曜日か。
A 365 ÷ 7 のあまりは1なので1つ進んで土曜日です。
Q5 2月29日生まれの人は、4年に1回しか年をとらないのか。
A 年齢は毎年ふえます。ふえる日付が決まっていないだけで、日本の法律では誕生日の前日の終わりに1つ年をとると決められています。
この話は教科書の単元名にはありませんが、倍数・あまり・小数という5年生の学習が同時に使われる、めずらしく実用的な題材です。「なぜ4年に1回なのか」を説明できる子は、倍数を暗記ではなく道具として持っています。
お子さんが「4でわりきれればうるう年」で止まっているなら、2100年の話をしてみてください。例外を1つ知るだけで、きまりの形が立体的に見えてきます。
カレンダーを見ながら、去年と今年で同じ日付の曜日がどうずれたかを確かめるのもおすすめです。わり算のあまりが、目の前の紙の上で働いていることが実感できます。
なお「うるう秒」という別の調整もありますが、あちらは地球の自転(1日の長さ)の話で、公転を扱ううるう年とは別の問題です。混ぜると難しくなるので、興味を示したときだけ触れてください。