5年 算数 偶数と奇数・倍数と約数

最小公倍数の使いどころ ── バスも歯車も、「そろう瞬間」はかけ算では求まらない

バス停で2つの路線を待っていると、たまに同じ瞬間に2台が出発することがあります。偶然ではありません。周期をもって動くものが重なる瞬間は、公倍数で決まっているからです。

バス停で起きていること

ある駅前のバス停に、2つの路線が来ます。

A系統 … 12分おきに出発 B系統 … 18分おきに出発 午前9時00分、2台が同時に出発した。

次に2台が同時に出発するのは何分後でしょうか。「12+18=30分後」と、たし算で答えたくなりますが、それはまちがいです。たし算は「1台が次に来る時間」を求める式ではありません。2つの数の両方の倍数になっている時間を探す必要があります。

Aが出発する時刻(9:00から何分後) 12, 24, 36, 48, 60, 72 … Bが出発する時刻(9:00から何分後) 18, 36, 54, 72 … 共通して出てくる数 → 36, 72, …

2つの数の列を並べてみると、36分後に初めて両方の数字がそろいます。これが「公倍数」です。そのうちで一番小さいもの、36が最小公倍数です。9時36分に、2台はもう一度同時に出発します。

ここで大切なのは、36より前の時刻ではけっして2台が重ならない、ということです。たとえば24分後はAだけが来ている時刻で、Bはまだ来ていません。18分おきのBにとって24分後は「まだ1周していない」時間だからです。どちらの倍数にもなっている最初の瞬間を探しているのだということを、頭の中に置いておいてください。

連除法で確かめる

「偶数と奇数・倍数と約数」で習った連除法を使えば、倍数を書き出さなくても同じ答えが求められます。

2 ) 12 18 3 )  6  9    2  3 最大公約数 = 2 × 3 = 6 最小公倍数 = 2 × 3 × 2 × 3 = 36

左に並んだ数をかけると最大公約数、左と下をL字にかけると最小公倍数になります。書き出した36と、連除法で求めた36が一致しました。数が大きくなるほど、書き出す方法では時間がかかります。連除法はそのための道具です。

3つに増えるとどうなるか

バスがもう1路線増えて、3つになったとします。

A系統 … 12分おき B系統 … 18分おき C系統 … 24分おき

3つの数の最小公倍数を求めるときも、考え方は同じです。先に2つの最小公倍数を求め、その答えと残り1つの最小公倍数を、もう一度求めます。

① AとBの最小公倍数 = 36(前の計算) ② 36 と C(24)の最小公倍数 2 ) 36 24 2 ) 18 12 3 )  9  6    3  2 最小公倍数 = 2 × 2 × 3 × 3 × 2 = 72

3つの路線が同時に出発するのは、72分後です。36分後にはA・Bだけがそろい、Cはまだそろっていません。3つすべてがそろう瞬間は、2つだけがそろう瞬間よりも、めったに来ないということです。これは数の種類が増えるほど、「全員の都合がそろう日」を見つけにくくなる、という感覚ともつながっています。クラス全員が同じ日に委員会の用事が入っていない日を探すのが難しいのと、同じしくみです。

歯車でも同じことが起きる

倍数がそろう瞬間は、時間だけの話ではありません。かみ合って回る歯車でも、同じしくみが働きます。

歯車P … 歯数12 歯車Q … 歯数18 2つの歯車がかみ合っている。 最初、両方の歯車に付けた印が、ちょうど向かい合っている。

印が再び向かい合うまでに、歯車は何回転するでしょうか。歯車がかみ合って回るとき、かみ合った歯の数は、両方の歯車でつねに同じだけ増えていくという決まりがあります。だから、印がそろうのは「歯の数」が12の倍数にも18の倍数にもなったときです。

12と18の最小公倍数 = 36(すでに求めた答え) 歯車P:36 ÷ 12 = 3 → 3回転で印がそろう 歯車Q:36 ÷ 18 = 2 → 2回転で印がそろう

歯数の少ない歯車Pのほうが、多く回ります。歯数の比は12:18=2:3ですが、回転数の比はその逆の3:2になっています。歯数が少ないほど速く回るという、歯車の基本的な性質が、最小公倍数の計算の中にそのまま表れています。

つまずきやすいところ

その1 公倍数を1つ見つけただけで、最小公倍数だと思い込む。
12と18の公倍数は36だけではありません。72も108も公倍数です。見つけた中でいちばん小さいものを選ばないと、最小公倍数にはなりません。

その2 最小公倍数の代わりに最大公約数を使ってしまう。
12と18の最大公約数は6です。「6分後にそろう」と答えてしまうミスがよくありますが、9時6分にBはまだ出発していません(Bは18分おきなので、次は9時18分)。公約数は「割り切れる数」、公倍数は「そろう数」で、役割が反対です。

その3 3つの数の最小公倍数を、一度に3つまとめて計算しようとする。
12×18×24と、かけ算で求めてしまうと、答えが大きすぎになります(実際は5184になり、本当の答え72の72倍です)。2つずつ、順番に最小公倍数を求めていくのが確実な方法です。

その4 歯車の回転数の比を、歯数の比と同じ向きにしてしまう。
歯数が多い歯車のほうが、同じ時間でゆっくり回ります。歯数12:18なら、回転数は3:2(逆の比)になることを、計算のあとで確かめてください。

やってみよう

Q1 バスAは15分おき、バスBは20分おきに出発する。9時に同時に出発したとき、次に同時に出発するのは何分後か。

A 15=3×5、20=2²×5なので最小公倍数は2²×3×5=60分後(10時00分)です。

Q2 歯数8の歯車Pと歯数12の歯車Qがかみ合っている。印が再びそろうまで、Pは何回転するか。

A 8と12の最小公倍数は24。24÷8=3回転です。

Q3 公倍数と最小公倍数は、どうちがうか。

A 公倍数は「両方の倍数になっている数」全部のこと。最小公倍数は、その中でいちばん小さい1つです。

Q4 3つの信号機が、6分・8分・9分ごとに青になる周期をもっている。午前8時に3つ同時に青になったあと、次に3つ同時に青になるのは何分後か。

A 6=2×3、8=2³、9=3²なので最小公倍数は2³×3²=72分後です。

Q5 「そろう時間を求めるのに、最大公約数を使ってはいけない」のはなぜか。

A 最大公約数はわりきれる数(約数)の話で、公倍数はどちらの倍数にもなっている数の話だからです。6分後の時点では、18分おきのバスはまだ1回も出発していません。

まとめ

おうちの方へ

最小公倍数は、教科書の中では「分数の通分」で使う場面しか出てきませんが、実際には周期をもって動くものが重なる瞬間を求める、とても実用的な道具です。バスの時刻表や歯車のほかにも、信号機、ふりこの周期、曲のリズムなど、身のまわりには「ずれながら繰り返す」現象がたくさんあります。
お子さんが公倍数と最大公約数を混同しているようなら、「割り切れる数」と「そろう数」という言葉で区別してあげてください。どちらも連除法という同じ手順の中で求まるため、どちらを答えるべきかで混乱しやすいところです。
時間があれば、実際に時計を見ながら「何分おき」の現象を2つ決めて、次にそろう時刻を計算してから、本当にそうなるか確かめてみるのもおすすめです。