5年生の最初の単元です。地味に見えますが、この後の計算すべての土台になります。
これまで、整数と小数を別々に学んできました。5年生では、それを一つのしくみとして整理します。
左へ行くほど10倍、右へ行くほど10分の1。小数点をはさんで、同じ規則が続いています。
この並びには、始まりも終わりもありません。左へはいくらでも大きく、右へはいくらでも小さく続けられます。
そして、大事なのは1の位が中心だということです。小数点は、1の位のすぐ右に打たれます。
この見方を十進位取り記数法といいます。10ずつまとめて位が上がる、というしくみです。
数を10倍すると、何が起こるでしょうか。
4年生でも触れましたが、ここで正確に押さえます。動いているのは数字です。
なぜそう考えるべきなのでしょうか。小数点は「1の位の右」という定位置だからです。位の並びは固定されていて、数字がその上を移動していると考えるほうが、しくみに合っています。
| 操作 | 数字の動き | 例(3.14) |
|---|---|---|
| 10倍 | 左へ1つ | 31.4 |
| 100倍 | 左へ2つ | 314 |
| 1000倍 | 左へ3つ | 3140 |
| 10分の1 | 右へ1つ | 0.314 |
| 100分の1 | 右へ2つ | 0.0314 |
0の役割にも注目してください。3.14を1000倍すると3140になりますが、この最後の0は「一の位に何もない」ことを示しています。0は場所を示す印なのです。
この0がなければ、314と区別がつきません。0という記号があるおかげで、位取りが成り立っているのです。
数を、位ごとに分けて表すこともできます。
別の見方もできます。
この「小さい位でそろえる」見方が、実は非常に強力です。
小数のたし算・かけ算・わり算は、すべてこの考え方で説明できます。0.001を単位にすれば、整数の計算に置きかえられるのです。
算数では、単位をそろえてから計算するという原則が何度も出てきます。
・たし算の筆算 → 位をそろえる
・小数の筆算 → 小数点をそろえる
・分数のたし算 → 分母をそろえる(通分)
・単位の換算 → cmとmをそろえる
すべて同じ考え方です。そろっていないものは足せない。この原則を意識すると、算数全体が見通しよくなります。
この単元の内容は、すぐに次の単元で使われます。
単位の換算は、10倍・100倍・1000倍の操作そのものです。しくみが分かっていれば、暗記の必要はありません。
これが、5年生の小数のわり算の核心です。今の単元がその準備になっています。
大きな数や小さな数をあつかうとき、10倍・100倍に分解すると計算が楽になります。
ここで少し、視野を広げてみましょう。なぜ10ずつまとめるのでしょうか。
いちばん有力な説は、人間の指が10本だからというものです。数を数えるとき、指を使うのが自然だったのです。
でも、世界には別のまとめ方もあります。
時計が60や12を使うのは、約数が多くて分けやすいからです。60は2・3・4・5・6・10・12・15・20・30でわりきれます。
コンピュータが2を使うのは、電気が「流れる/流れない」の2つの状態しかないからです。
まとめ方は目的によって選べるのです。十進法は、たまたま人間にとって使いやすかった方法にすぎません。
そう考えると、位取りという発明のすごさが見えてきます。10個の数字(0〜9)だけで、どんな大きさの数も表せるのですから。
今では当たり前の「0」ですが、実は人類が長い時間をかけて手に入れた発明です。
古代ローマの数字を見てみましょう。
ローマ数字では、筆算ができません。「XXIII + XLII」を筆算で解くのは、ほぼ不可能です。当時はそろばんのような道具を使って計算していました。
0を使った位取りはインドで生まれ、アラビアを経てヨーロッパへ伝わりました。だから今の数字を「アラビア数字」と呼びます。
0のおかげで、こんなことができるようになりました。
わたしたちが筆算をすらすらできるのは、0という記号があるおかげなのです。「何もない」ことを書き表す──この発想の転換が、数学を大きく前進させました。
「小数点を右に動かす」と覚えて、混乱する。
動くのは数字です。位の並びは固定されています。この理解があると、小数のかけ算・わり算で迷いません。
3.14を1000倍して「314」と書いてしまう。
0は位を示す印です。空いた位には0を書く必要があります。
「mからcmは100倍」を暗記して忘れる。
数字が何けた動くかで考えます。1m=100cmという関係さえ分かれば、あとは計算できます。
Q1 位の並びは、左と右でどう変わりますか。
A 左へ行くほど10倍、右へ行くほど10分の1になります。
Q2 2.87を100倍するといくつですか。
A 数字が2つ左へ動いて287です。
Q3 0.06を10分の1にするといくつですか。
A 数字が1つ右へ動いて0.006です。
Q4 3.5kgは何gですか。
A 1kg=1000gなので1000倍して3500gです。
この単元は内容が少なく、あっさり終わってしまいがちです。しかし、ここでの理解が5年生の算数全体を左右します。
とくに「動くのは数字であって小数点ではない」という理解は重要です。この後の小数のかけ算・わり算で、小数点の位置を機械的に覚えるか、意味で理解するかの分かれ目になります。
位取り表を書いて、数字を左右に動かしてみせると効果的です。実際に紙の上で数字をずらすと、しくみが目で見えます。
単位換算も、この単元の応用です。料理のときに「200mLは何L?」と聞いてみるなど、日常で使う機会を作ってあげてください。
十進法以外のまとめ方(時間の60、ダースの12)に触れると、数のしくみへの興味が広がります。