「かけ算は増える」という思いこみが、ここで壊れます。かけ算のイメージを作り直す単元です。
次の計算をしてみてください。
かけ算をしたのに、元の80より小さくなりました。
これまで、かけ算は「増える計算」でした。5×3=15、100×4=400。必ず大きくなっていました。
ところが小数のかけ算では、そうならない場合があります。
この「1が境目」という理解が、この単元でいちばん大事なことです。
意味を考えれば、当たり前だと分かります。
4年生で学んだ倍の見方を思い出してください。「0.5倍」は「もとの半分」でした。
「かける=増える」というのは、整数のかけ算だけで通用していた特殊な話だったのです。
もう一つの例で確かめましょう。
場面で考えれば、混乱しません。0.5m買って200円より高くなったら、そのほうがおかしいのです。
文章題で「かけ算かわり算か」迷ったら、数を整数に置きかえて考えます。
「1mが200円のリボンを2.4m買うと?」
→ 2.4を「3」にしてみる
→ 「3m買うと?」なら 200×3 と分かる
→ だから 200×2.4 でよい
数がややこしいだけで、場面の構造は変わりません。この方法は、わり算でも割合でも使えます。
では、実際にどう計算するのでしょうか。
つまり、整数の計算をしてから、大きさをもどすのです。
筆算では、こうなります。
なぜ足すのでしょうか。10分の1を2回かけたからです。
0.1を2回かけたから0.01。だから小数点が2けた分左に来るのです。ルールには理由があります。
もう一つ、筆算の注意点があります。
たし算では小数点をそろえましたが、かけ算では右そろえです。計算そのものは整数として行うからです。
小数のかけ算は、面積で考えると納得できます。
4つに分けて足すと、筆算と同じ答えになります。
この図を見ると、面積の公式が小数でも成り立つことが確認できます。整数でしか使えないわけではないのです。
そして、この図は分配法則そのものです。4年生で学んだ計算のきまりが、小数でも通用しています。
これを使うと、工夫して計算できます。
小数のかけ算では、小数点の位置をまちがえるミスがよく起こります。答えが10倍や100倍ずれてしまうのです。
防ぐには、計算前に見当をつけることです。
この見当づけには、「1が境目」の理解も使えます。
「かける数が1より小さいのに、答えが大きくなった」なら、必ずどこかで間違えています。大きさの感覚が検算になるのです。
小数のかけ算には、もう一つ注意点があります。
小数の右はしの0は、消してよいのです。1.00 も 1.0 も 1 も、同じ大きさだからです。
ただし、小数点を打つ前に消してはいけません。
順番が大事です。まず小数点を打ち、それから余分な0を消します。
もう一つ、逆のパターンもあります。けた数が足りない場合です。
けた数が足りないときは、左に0を補ってから小数点を打ちます。0.6ではなく0.06です。
この場合も、見当をつけておけば気づけます。0.2も0.3も1より小さいので、答えは0.2より小さいはず。0.6では大きすぎます。
80×0.5=40に納得できない。
0.5倍=半分です。倍の見方に戻ります。場面で考えると自然に理解できます。
答えが10倍や100倍ずれる。
けた数を足すのがルールです。そして、計算前に見当をつけておけば、すぐ気づけます。
たし算のくせで小数点をそろえてしまう。
かけ算は右そろえです。整数として計算し、最後に小数点を打ちます。
Q1 かける数が1より小さいとき、答えはどうなりますか。
A 元の数より小さくなります。1が境目です。
Q2 答えの小数点の位置はどう決めますか。
A 2つの数の小数のけた数を足したけた数になります。
Q3 1.2 × 0.4 の答えの見当をつけましょう。
A 0.4は1より小さいので1.2より小さい。約0.5くらい。正しくは0.48です。
Q4 2.5 × 7.2 × 4 を工夫して計算しましょう。
A 2.5×4=10を先に。10×7.2=72です。
この単元でつまずく最大の原因は、「かけ算=増える」という長年のイメージです。整数だけを扱ってきた4年間で作られた感覚なので、簡単には変わりません。
有効なのは、場面で考えさせることです。「1mで200円のリボンを0.5m買ったら?」と聞けば、100円だとすぐ分かります。式より場面のほうが理解しやすいのです。
文章題で式が立てられないときは、小数を整数に置きかえて考える方法を教えてあげてください。「2.4mを3mだと思ってみたら?」。この方法は割合や速さでも使える万能の手です。
小数点の位置のミスは、見当づけの習慣で防げます。「だいたいいくつになりそう?」と、計算前に一言かけるだけで効果があります。