5年 算数 小数のかけ算

小数のかけ算 ── かけたのに小さくなる、という衝撃

「かけ算は増える」という思いこみが、ここで壊れます。かけ算のイメージを作り直す単元です。

常識がくずれる瞬間

次の計算をしてみてください。

80 × 0.5 = 40

かけ算をしたのに、元の80より小さくなりました

これまで、かけ算は「増える計算」でした。5×3=15、100×4=400。必ず大きくなっていました。

ところが小数のかけ算では、そうならない場合があります。

かける数が 1より大きい → 答えは大きくなる 80 × 1.5 = 120 ○ かける数が 1 のとき → 変わらない 80 × 1 = 80 かける数が 1より小さい → 答えは小さくなる 80 × 0.5 = 40 80 × 0.1 = 8

この「1が境目」という理解が、この単元でいちばん大事なことです。

なぜ小さくなるのか

意味を考えれば、当たり前だと分かります。

80 × 0.5 0.5倍 = 半分 「80の半分」= 40 → 小さくなって当然

4年生で学んだ倍の見方を思い出してください。「0.5倍」は「もとの半分」でした。

「かける=増える」というのは、整数のかけ算だけで通用していた特殊な話だったのです。

もう一つの例で確かめましょう。

1mが 200円のリボン 3m 買うと 200 × 3 = 600円 1m 買うと 200 × 1 = 200円 0.5m 買うと 200 × 0.5 = 100円 → 1mより短いのだから、 200円より安くて当たり前

場面で考えれば、混乱しません。0.5m買って200円より高くなったら、そのほうがおかしいのです。

式が立てられないときは

文章題で「かけ算かわり算か」迷ったら、数を整数に置きかえて考えます。
「1mが200円のリボンを2.4m買うと?」
→ 2.4を「3」にしてみる
→ 「3m買うと?」なら 200×3 と分かる
→ だから 200×2.4 でよい
数がややこしいだけで、場面の構造は変わりません。この方法は、わり算でも割合でも使えます。

計算のしかた

では、実際にどう計算するのでしょうか。

2.3 × 1.4 = ? 【考え方】 2.3 は 0.1 が 23個 1.4 は 0.1 が 14個 23 × 14 = 322 0.1 × 0.1 = 0.01 なので 322 × 0.01 = 3.22

つまり、整数の計算をしてから、大きさをもどすのです。

筆算では、こうなります。

2.3 ← 小数第1位まで(1けた) × 1.4 ← 小数第1位まで(1けた) ────── 92 23 ────── 3.22 ← 合わせて2けた
小数点の位置の決め方 かけられる数の小数のけた数 + かける数の小数のけた数 = 答えの小数のけた数

なぜ足すのでしょうか。10分の1を2回かけたからです。

2.3 = 23 × 0.1 1.4 = 14 × 0.1 2.3 × 1.4 = 23 × 0.1 × 14 × 0.1 = (23 × 14) × (0.1 × 0.1) = 322 × 0.01 = 3.22

0.1を2回かけたから0.01。だから小数点が2けた分左に来るのです。ルールには理由があります

もう一つ、筆算の注意点があります。

整数の筆算 … 右をそろえて書く 小数のかけ算 … 右をそろえて書いてよい (たし算とちがい、 小数点をそろえる必要はない)

たし算では小数点をそろえましたが、かけ算では右そろえです。計算そのものは整数として行うからです。

面積図で確かめる

小数のかけ算は、面積で考えると納得できます。

たて2.3cm、よこ1.4cmの長方形の面積 ┌──────┬──┐ │ │ │ │ 2×1 │2×0.4│ たて2 ├──────┼──┤ │0.3×1 │0.3×0.4│ たて0.3 └──────┴──┘ よこ1 よこ0.4 2 × 1 = 2 2 × 0.4 = 0.8 0.3 × 1 = 0.3 0.3 × 0.4 = 0.12 ────────────── 合計 3.22

4つに分けて足すと、筆算と同じ答えになります。

この図を見ると、面積の公式が小数でも成り立つことが確認できます。整数でしか使えないわけではないのです。

そして、この図は分配法則そのものです。4年生で学んだ計算のきまりが、小数でも通用しています。

計算のきまりは小数でも成り立つ 交換法則: 2.5 × 4 = 4 × 2.5 結合法則: (2.5 × 4) × 3 = 2.5 × (4 × 3) 分配法則: (2 + 0.3) × 1.4 = 2 × 1.4 + 0.3 × 1.4

これを使うと、工夫して計算できます。

2.5 × 3.6 × 4 = 2.5 × 4 × 3.6 ← 入れかえ = 10 × 3.6 = 36

答えの見当をつける

小数のかけ算では、小数点の位置をまちがえるミスがよく起こります。答えが10倍や100倍ずれてしまうのです。

防ぐには、計算前に見当をつけることです。

3.8 × 2.1 = ? 約4 × 約2 = 約8 → 答えは8くらいのはず もし 79.8 や 0.798 になったら 明らかにおかしい (正しくは 7.98)

この見当づけには、「1が境目」の理解も使えます。

6.4 × 0.8 = ? 0.8 は1より小さい → 答えは6.4より小さいはず → 5くらい? (正しくは 5.12)

「かける数が1より小さいのに、答えが大きくなった」なら、必ずどこかで間違えています。大きさの感覚が検算になるのです。

答えの末尾の0

小数のかけ算には、もう一つ注意点があります。

2.5 × 0.4 = ? 25 × 4 = 100 小数のけた数は 1 + 1 = 2 → 1.00 答えは 1.00 でよい? → ふつうは 1 と書く

小数の右はしの0は、消してよいのです。1.00 も 1.0 も 1 も、同じ大きさだからです。

ただし、小数点を打つ前に消してはいけません

【まちがい】 25 × 4 = 100 → 0を消して 1 → 小数点を2けた打って 0.01 ✗ 【正しい】 25 × 4 = 100 → 小数点を2けた打って 1.00 → 0を消して 1 ○

順番が大事です。まず小数点を打ち、それから余分な0を消します。

もう一つ、逆のパターンもあります。けた数が足りない場合です。

0.2 × 0.3 = ? 2 × 3 = 6 小数のけた数は 1 + 1 = 2 6 に小数点を2けた打つには けたが足りない → 0を補って 0.06

けた数が足りないときは、左に0を補ってから小数点を打ちます。0.6ではなく0.06です。

この場合も、見当をつけておけば気づけます。0.2も0.3も1より小さいので、答えは0.2より小さいはず。0.6では大きすぎます。

つまずきやすいところ

その1 かけたら増えると思いこむ

80×0.5=40に納得できない。
0.5倍=半分です。倍の見方に戻ります。場面で考えると自然に理解できます。

その2 小数点の位置をまちがえる

答えが10倍や100倍ずれる。
けた数を足すのがルールです。そして、計算前に見当をつけておけば、すぐ気づけます。

その3 筆算で小数点をそろえて書く

たし算のくせで小数点をそろえてしまう。
かけ算は右そろえです。整数として計算し、最後に小数点を打ちます。

やってみよう

Q1 かける数が1より小さいとき、答えはどうなりますか。

A 元の数より小さくなります。1が境目です。

Q2 答えの小数点の位置はどう決めますか。

A 2つの数の小数のけた数を足したけた数になります。

Q3 1.2 × 0.4 の答えの見当をつけましょう。

A 0.4は1より小さいので1.2より小さい。約0.5くらい。正しくは0.48です。

Q4 2.5 × 7.2 × 4 を工夫して計算しましょう。

A 2.5×4=10を先に。10×7.2=72です。

まとめ

おうちの方へ

この単元でつまずく最大の原因は、「かけ算=増える」という長年のイメージです。整数だけを扱ってきた4年間で作られた感覚なので、簡単には変わりません。
有効なのは、場面で考えさせることです。「1mで200円のリボンを0.5m買ったら?」と聞けば、100円だとすぐ分かります。式より場面のほうが理解しやすいのです。
文章題で式が立てられないときは、小数を整数に置きかえて考える方法を教えてあげてください。「2.4mを3mだと思ってみたら?」。この方法は割合や速さでも使える万能の手です。
小数点の位置のミスは、見当づけの習慣で防げます。「だいたいいくつになりそう?」と、計算前に一言かけるだけで効果があります。