5年 算数 割合

同じおにぎりが、170円にも173円にもなる ── 消費税は、割合がいちばん近くで動いているところ

コンビニのおにぎりの札を、よく見たことがあるでしょうか。数字が一つではありません。「本体158円」の下に小さく「170円」、さらにその横に「173円」と書いてある店もあります。同じたなの、同じおにぎりです。ところが、持って帰れば170円、店のいすで食べれば173円。店が急に3円だけ値上げしたのではありません。変わったのは、かけ算の相手だけです。5年生で習う割合は、テストの中だけの話ではなく、ここで毎日動いています。この記事では、その3円がどこから出てくるのかを、実際の数で最後まで追いかけます。

なぜ、札の数字は一つではないのか

まず、三つの数を区別します。名前がついているだけで、どれもむずかしい数ではありません。

呼び名意味おにぎりの例
本体価格店が品物につけた、税を入れていない値段158円
消費税額本体価格に、決まった割合をかけて出す分12円 または 15円
税込価格実際にレジではらう合計170円 または 173円

この三つの関係を、割合の言い方にそろえると、こうなります。

もとにする量 = 本体価格(158円) くらべる量  = 消費税額 割合     = 税率(8% や 10%) 消費税額 = 本体価格 × 税率 税込価格 = 本体価格 + 消費税額

割合の学習でいちばん時間をかけるのは「どちらがもとにする量か」を見分けるところでした。消費税では、そこで迷う必要がありません。もとにする量は、いつでも本体価格だからです。税込価格に税をかけることはありませんし、おつりに税をかけることもありません。基準は一つに固定されています。

ここがだいじ

消費税は、新しい計算ではありません。「もとにする量 × 割合」という、5年生で習った式が、レジの中で一日に何千回も動いているだけです。この記事で覚えることを増やすつもりはありません。増やすのは、式を使う場所のほうです。

158円から、170円と173円を作る

では、実際に計算します。まず持ち帰るとき。飲みものや食べものにかかる税率は8%です。

158 × 0.08 = 12.64  ← 消費税額 158 + 12.64 = 170.64 → 1円より小さい分を切り捨てて 170円

次に、店のいすで食べるとき。こちらは10%になります。

158 × 0.1 = 15.8  ← 消費税額 158 + 15.8 = 173.8 → 切り捨てて 173円

170円と173円。札に書いてあった二つの数が、そのまま出てきました。差の3円は、店のもうけが増えた分ではありません。本体価格158円は、どちらの場合もびくとも動いていないのです。

ところで、この計算は二段階でした。税額を出してから、本体にたす。これを一度で済ませる書き方があります。

158 × 1.08 = 170.64 (8%のとき) 158 × 1.1 = 173.8  (10%のとき)

1.08 の「1」は本体そのもの、「0.08」がたされる分です。もとの量をそのまま残して、増える分だけを上に積む。割合の単元で「〜%増し」として習った形が、そのまま使えます。8%と10%のちがいは、かける数が1.08か1.1かという、それだけのちがいにまで縮みます。

税率が二つあるのは、値段の高さのせいではない

ここでよくある勘ちがいを一つ、先につぶしておきます。8%になるか10%になるかは、値段が安いか高いかでは決まりません。3000円のケーキも8%ですし、80円の消しゴムも10%です。決め手は「何を買ったか」と「どこで食べるか」のほうです。

税率あてはまるもの身近な例
8%(軽減税率)お酒と外食をのぞく、飲みもの・食べもの/週2回以上発行される定期購読の新聞持ち帰るおにぎり、スーパーの肉や野菜、ペットボトルのお茶
10%(標準税率)上にあてはまらない、そのほかのすべてノート、シャープペン、服、ゲームソフト、電車代、店の席で食べる同じおにぎり

この8%のほうを軽減税率といいます。2019年10月に税率が8%から10%へ上がったとき、食べものまで一斉に上げると、毎日のくらしにひびく度合いが大きすぎる。だから食べものだけ元の8%に据え置いた、という仕組みです。安くするための割引ではなく、上げなかっただけ、という点はおさえておく価値があります。8%でも、税ははらっています。

「持ち帰りは8%、店内は10%」がふしぎに見えるのも、この線引きで説明がつきます。店のテーブルやいすを使って食べることは、決まりのうえでは外食にあたります。外食は軽減税率の対象外。だから同じおにぎりでも、レジで「店内でお召し上がりですか」と聞かれるのです。あれは親切心だけで聞いているのではなく、税率を決めるために必要な質問でした。

ちょっと深く

10%と8%は、実は一本の税ではありません。10%は国に納める消費税7.8%と、都道府県に納める地方消費税2.2%を足した数です。8%のほうは6.24%と1.76%。合計するとちゃんと10%と8%になります。税率の歴史も意外に短く、1989年に3%で始まり、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%と上がってきました。おうちの人が子どものころは、おにぎりの札の数字は一つだけだったはずです。

自分で計算すると、レジと数円ずれることがある

ここからが、この記事でいちばんおもしろいところです。1個98円(本体)のおかしを3個買うとしましょう。税率は8%。二通りに計算してみます。

【A】1個ずつ税を入れてから、3個分を足す  98 × 1.08 = 105.84 → 105円  105 × 3 = 315円 【B】3個分を足してから、まとめて税を入れる  98 × 3 = 294円  294 × 1.08 = 317.52 → 317円

315円と317円。2円ちがいます。計算をまちがえたわけではありません。どちらも正しく計算しています。ちがうのは、切り捨てを3回やったか、1回で済ませたかだけです。Aでは0.84円の切り捨てが3回起きて、合わせて2.52円ぶんが消えました。Bでは0.52円が1回消えただけです。

実際のレジは、ふつうBのやり方をとります。だから、自分でおかしの札の数字を足し算して持っていくと、合計が数円だけ合わないことがあるのです。「計算が苦手だからずれた」のではなく、切り捨てる回数がちがっただけ。ここを知っていると、無用に自分を疑わずに済みます。

もう一つ。1円より小さい分をどう処理するかは、切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれでもよく、店が自分で選んでよいことになっています。同じ品物を同じ数だけ買っても、店がちがえば合計が1円ちがう。そんなことが本当に起こります。

税込価格から、本体価格へもどる

ここまでは「本体 → 税込」の向きでした。逆向きも、割合の三つの形のうちの一つとして計算できます。税込540円のケーキ(8%)の本体価格を出してみます。

本体価格 × 1.08 = 540 本体価格 = 540 ÷ 1.08 = 500円 (消費税額は 540 - 500 = 40円)

ここでやってはいけないのが、540 × 0.92 という計算です。やりたくなりますが、答えは496.8円になり、正しい500円とずれます。8%増やした数を元にもどすのに、8%減らしてはいけないのです。理由は割合の基本にあります。増やすときのもとにする量は本体価格の500円、減らすときのもとにする量は税込価格の540円で、基準がすりかわってしまうからです。もどすときは、必ずわり算を使います。

この「増やしたぶんと、減らすぶんは、同じ割合でも同じ額にならない」という性質は、割合の単元でいちばんつまずく場所でもあります。消費税は、それを実物で確かめられる、めずらしく身近な教材です。

税は、店のもうけではない

170円のおにぎりを売った店は、170円を受け取ります。しかし店の収入は158円です。残りの12円は、店のお金ではありません。客から預かっただけで、あとでまとめて国と都道府県に納めます。学級のお金でたとえるなら、みんなの分の集金を預かって、あとで先生にわたすのと同じ立場です。

だから、店が「今日は消費税をサービスします」と言うことは、原則としてできません。値引きはできても、税そのものを消すことはできないからです。レシートに「8%対象 〇〇円」「10%対象 〇〇円」と分けて印刷されているのも、どちらの税率でいくら預かったかを、店も客も後から確かめられるようにするためです。レシートは、買った記録であると同時に、税の記録でもあります。

納められた税がどう使われるかは、6年生の社会でくわしく学びます。学校の教室も、通学路の信号も、けがをしたときの病院の窓口の安さも、その先につながっています。算数としての消費税はかけ算とわり算ですが、その数字の行き先には、自分の毎日がありました。

つまずきやすいところ

1 「食べものは8%だから、おトク」と思ってしまう

8%は割引ではありません。税率が上がるときに、食べものだけ上げなかった、という意味です。158円のおにぎりでも12円は税としてはらっています。「安い」ではなく「上がらなかった」。この区別ができると、ニュースで税の話が出たときの聞こえ方が変わります。

2 「店内で食べると値上げされる」と思ってしまう

店がつけた値段である本体価格158円は、持ち帰っても店内で食べても1円も変わりません。変わるのはかける税率だけで、増えた3円は店ではなく国と都道府県へ行きます。だれが受け取るのかまで見ると、値上げとは別物だと分かります。

3 もどすときに、かけ算を使ってしまう

税込540円から本体を出すのに 540 × 0.92 としてしまう誤りです。増やすときの基準は本体、減らすときの基準は税込で、基準が入れかわっています。もどすときはわり算(÷1.08)。これは消費税にかぎらず、割引後の値段から元の値段を出すときも同じです。

やってみよう

Q1 本体200円のおかしを持ち帰りで買います(8%)。税込価格はいくらですか。

A 216円です。200 × 1.08 = 216。ちょうど割り切れるので、切り捨てる分はありません。

Q2 本体200円のえんぴつを買います(10%)。税込価格はいくらで、Q1との差は何円ですか。

A 220円で、差は4円です。200 × 1.1 = 220、220 - 216 = 4。本体が同じ200円でも、何を買ったかで税額が変わることが、この4円に出ています。

Q3 税込540円のケーキ(8%)の本体価格はいくらですか。

A 500円です。540 ÷ 1.08 = 500。540 × 0.92 = 496.8 としないこと。もどすときはわり算です。

Q4 1000円を持って、税込170円のおにぎりを買います。何個買えて、おつりはいくらですか。もし本体の158円で考えていたら、何個買えると思ってしまいますか。

A 5個買えて、おつりは150円です。170 × 5 = 850、1000 - 850 = 150。本体158円で考えると 158 × 6 = 948 なので6個買えそうに見えますが、6個のレジ合計は 948 × 1.08 = 1023.84 → 1023円。23円たりずに、レジで1個もどすことになります。

Q5 本体98円のおかしを3個買います(8%)。1個ずつ税を入れてから足すと315円、3個分を足してから税を入れると317円。なぜ2円ちがうのでしょうか。

A 切り捨てる回数がちがうからです。1個ずつだと0.84円の切り捨てが3回起きて2.52円が消えますが、まとめると0.52円が1回消えるだけです。実際のレジは後者で計算します。

Q1とQ2は同じ本体価格、Q3はその逆向き、Q4は買える個数への影響、Q5は端数。ばらばらに見えますが、動かしているのは「もとにする量 × 割合」という一本の式だけです。式を増やさずに、当てはめる場面を増やす。それがこの単元のいちばん効率のよい進み方です。

まとめ

おうちの方へ

割合は5年算数の最大の山場で、つまずくお子さんの多くは計算ではなく「何をもとにするか」で迷っています。消費税を題材に選んだのは、基準が本体価格に固定されていて、迷いようがないからです。基準が動かない場面で式の形に慣れてから、基準を探す問題にもどると、見通しがよくなります。
ご家庭で一度やっていただけると効くのは、買い物のあとにレシートの「8%対象」「10%対象」の行を一緒に見ることです。どの品物がどちらに入ったかを当てるだけで、軽減税率の線引きが実物で頭に入ります。持ち帰りと店内で税率が変わる店なら、それも見せどころです。
なお、この記事では事業者が納める仕組み(仕入れにかかった分を差し引く計算)には踏みこんでいません。小学生の段階では、店は預かって納める立場であるところまでで十分だと判断しました。税の使い道は6年社会で扱う内容なので、そちらへ橋をかける形にとどめています。
最後に一点。Q4のような「思っていたより買えない」という経験は、金額の感覚を育てるうえでとても効きます。お子さんが自分のおこづかいで買い物をするとき、札の数字だけで個数を決めていないかを、そっと見ていただけるとよいかもしれません。