この単元で学ぶのは植物だけではありません。実験のやり方そのものです。
種子が芽を出すことを発芽といいます。発芽には何が必要でしょうか。
思いつくものを挙げてみます。
実験で確かめると、必要なのは3つだけだと分かります。
そして、必要でないものもはっきりします。
意外に思うかもしれません。でも、考えてみれば納得できます。
種子は土の中で発芽します。土の中は暗いので、日光は届きません。それでも芽が出るのです。
もやしは、暗いところで育てます。日光がなくても、種子の中の養分だけで伸びるからです。
では、どうやって「水が必要だ」と確かめるのでしょうか。
ここで登場するのが条件制御です。この単元の本当の主役はこれです。
ポイントは、変えるのは1つだけということです。
2つ以上変えてしまうと、結果の原因が特定できません。
正しい実験の形は、こうです。
そして、比べるための片方を対照実験といいます。「ふつうの状態」を用意して、それと比べるのです。
この考え方は、理科のすべての実験で使います。中学でも高校でも、そして科学の研究でも同じです。
それぞれの実験方法を見てみましょう。
とくに温度の実験には注意が必要です。冷蔵庫の中は暗いので、比べる側も暗くしないと2つ条件が変わってしまいます。
こうした細かい配慮が、正しい実験には欠かせません。
種子には、芽が出るための養分がたくわえられています。
インゲンマメの種子を割ってみると、大きな部分があります。これが子葉です。
この養分の正体はでんぷんです。ヨウ素液を使うと確かめられます。
色の変化で、目に見えない養分の増減が分かる。これが実験の面白さです。
ちなみに、わたしたちが食べる米や豆も、種子にたくわえられた養分です。植物が次の世代のために用意したものを、人間がいただいているのです。
発芽の後、大きく育つためには何が必要でしょうか。
ここで、発芽とはちがう条件が加わります。
なぜ発芽には要らなかった日光と肥料が、成長には必要なのでしょうか。
養分の出どころが変わるのです。ここが発芽と成長のいちばんのちがいです。
日光の必要性は、実験で確かめられます。
日光が足りないと、光を求めて上へ伸びようとします。だからひょろひょろになるのです。
光合成のしくみは6年生で学びますが、5年生では「日光が必要だ」という事実を実験で確かめます。
種子には、生き残るためのさまざまな工夫があります。
種子は、条件がそろうまでじっと待ちます。この状態を休眠といいます。
そして、条件を判断する材料が温度です。一定期間の寒さを経験してから暖かくなると、「春が来た」と判断して発芽します。
もし温度を感じ取れなければ、暖かい秋の日に発芽してしまい、冬に枯れてしまうでしょう。温度が発芽の条件である理由が、ここにもあります。
種子の運ばれ方にも工夫があります。
なぜ遠くへ運ばれる必要があるのでしょうか。親のそばでは日光や養分を奪い合うからです。離れた場所のほうが、育ちやすいのです。
植物は動けませんが、種子の段階で移動しているのです。これも生き残るための戦略です。
水と温度を同時に変えてしまう。
変えるのは1つだけ。他はすべて同じにします。これが実験の絶対条件です。
発芽にも日光が必要だと考える。
発芽は水・空気・温度の3つ。日光と肥料は成長に必要です。
片方だけ暗くなってしまう。
冷蔵庫は暗いので、比べる側も暗くします。条件を1つに絞るための工夫です。
Q1 発芽に必要な3つの条件は?
A 水・空気・適当な温度です。日光と肥料は必要ありません。
Q2 条件制御とは何ですか。
A 調べたいこと以外はすべて同じにすることです。変えるのは1つだけです。
Q3 子葉には何がたくわえられていますか。
A でんぷんなどの養分です。ヨウ素液で青むらさき色になります。
Q4 インゲンマメの種子で、発芽の実験をしてみましょう。
A だっし綿と容器があればできます。条件を1つだけ変えることを守ってください。
Q5 冷蔵庫を使う実験で、気をつけることは何ですか。
A 冷蔵庫の中は暗いので、比べる側も箱をかぶせて暗くします。変える条件を温度だけに絞るためです。
この単元の本当の目的は、植物の知識よりも「条件制御」という科学の方法を身につけることにあります。中学・高校の理科、そして論理的な思考全般に生きる考え方です。
「変えるのは1つだけ」という原則は、日常でも使えます。「勉強法を変えたら成績が上がった」というとき、他に変わったことはないか。この見方ができると、ものごとを正しく判断できるようになります。
家庭でも簡単に実験できます。インゲンマメやカイワレの種、だっし綿、容器があれば十分です。冷蔵庫を使った温度の実験も、家庭ならすぐできます。
実験がうまくいかないこともありますが、それも学習です。「なぜうまくいかなかったか」を考えることが、科学的な態度を育てます。