5年 理科 植物の発芽と成長

植物の発芽と成長 ── 条件を一つだけ変えて確かめる

この単元で学ぶのは植物だけではありません。実験のやり方そのものです。

発芽に必要なもの

種子が芽を出すことを発芽といいます。発芽には何が必要でしょうか。

思いつくものを挙げてみます。

水? 空気? 温度? 日光? 土? 肥料?

実験で確かめると、必要なのは3つだけだと分かります。

発芽に必要な3条件 ① 水 ② 空気(酸素) ③ 適当な温度

そして、必要でないものもはっきりします。

発芽に必要ないもの ・日光 ・土 ・肥料

意外に思うかもしれません。でも、考えてみれば納得できます。

種子は土の中で発芽します。土の中は暗いので、日光は届きません。それでも芽が出るのです。

もやしは、暗いところで育てます。日光がなくても、種子の中の養分だけで伸びるからです。

条件制御という考え方

では、どうやって「水が必要だ」と確かめるのでしょうか。

ここで登場するのが条件制御です。この単元の本当の主役はこれです。

水が必要かを調べる実験 【A】水あり + 空気あり + 適温 【B】水なし + 空気あり + 適温 → Aだけ発芽した → 水が必要だと分かる

ポイントは、変えるのは1つだけということです。

×【A】水あり・室温 【B】水なし・冷蔵庫 → 2つ変えている → どちらが原因か分からない

2つ以上変えてしまうと、結果の原因が特定できません

正しい実験の形は、こうです。

条件制御の原則 調べたいこと以外は、 すべて同じにする ・種子の種類、数、大きさ ・容器の種類 ・置く場所 ・観察する期間

そして、比べるための片方を対照実験といいます。「ふつうの状態」を用意して、それと比べるのです。

この考え方は、理科のすべての実験で使います。中学でも高校でも、そして科学の研究でも同じです。

3つの条件を確かめる

それぞれの実験方法を見てみましょう。

【水】 A:しめらせただっし綿の上に種子 B:かわいただっし綿の上に種子 → 他はすべて同じ 【空気】 A:だっし綿の上(空気にふれる) B:水中に完全にしずめる → 他はすべて同じ 【温度】 A:室温(約20℃)に置く B:冷蔵庫(約5℃)に置く → 冷蔵庫は暗いので、 Aも箱をかぶせて暗くする

とくに温度の実験には注意が必要です。冷蔵庫の中は暗いので、比べる側も暗くしないと2つ条件が変わってしまいます

こうした細かい配慮が、正しい実験には欠かせません。

子葉の中の養分

種子には、芽が出るための養分がたくわえられています。

インゲンマメの種子を割ってみると、大きな部分があります。これが子葉です。

子葉のはたらき 発芽するときの養分をたくわえている ↓ 発芽して、芽と根が伸びる ↓ 養分を使い切って、しぼむ ↓ やがて落ちる

この養分の正体はでんぷんです。ヨウ素液を使うと確かめられます。

ヨウ素液の反応 でんぷんがある → 青むらさき色になる でんぷんがない → 変わらない 発芽前の子葉 → 濃い青むらさき 発芽後の子葉 → ほとんど変わらない → 養分が使われたことが分かる

色の変化で、目に見えない養分の増減が分かる。これが実験の面白さです。

ちなみに、わたしたちが食べる米や豆も、種子にたくわえられた養分です。植物が次の世代のために用意したものを、人間がいただいているのです。

成長に必要なもの

発芽の後、大きく育つためには何が必要でしょうか。

ここで、発芽とはちがう条件が加わります。

成長に必要なもの ・水 ・空気 ・適当な温度 ・日光 ← 新しく必要 ・肥料(養分)← 新しく必要

なぜ発芽には要らなかった日光と肥料が、成長には必要なのでしょうか。

発芽のとき → 子葉の養分を使う → 自分で作る必要がない 成長するとき → 子葉の養分は使い切った → 自分で養分を作らなければならない → そのために日光が必要(光合成) → 土からも養分をとる(肥料)

養分の出どころが変わるのです。ここが発芽と成長のいちばんのちがいです。

日光の必要性は、実験で確かめられます。

【日光の実験】 A:日光に当てる B:箱をかぶせて日光を当てない → 肥料や水は同じにする 結果 A:緑色で、太くしっかり育つ B:黄色っぽく、細長くひょろひょろ

日光が足りないと、光を求めて上へ伸びようとします。だからひょろひょろになるのです。

光合成のしくみは6年生で学びますが、5年生では「日光が必要だ」という事実を実験で確かめます。

種子の工夫

種子には、生き残るためのさまざまな工夫があります。

なぜすぐに発芽しないのか 秋に落ちた種子が すぐ発芽したら… ↓ 冬の寒さで枯れてしまう ↓ だから、春まで待つしくみがある

種子は、条件がそろうまでじっと待ちます。この状態を休眠といいます。

そして、条件を判断する材料が温度です。一定期間の寒さを経験してから暖かくなると、「春が来た」と判断して発芽します。

もし温度を感じ取れなければ、暖かい秋の日に発芽してしまい、冬に枯れてしまうでしょう。温度が発芽の条件である理由が、ここにもあります。

種子の運ばれ方にも工夫があります。

・風に乗る(タンポポ、カエデ) ・動物にくっつく(オナモミ) ・実を食べてもらう(サクランボ、カキ) ・水に浮かぶ(ヤシ) ・はじけ飛ぶ(ホウセンカ)

なぜ遠くへ運ばれる必要があるのでしょうか。親のそばでは日光や養分を奪い合うからです。離れた場所のほうが、育ちやすいのです。

植物は動けませんが、種子の段階で移動しているのです。これも生き残るための戦略です。

つまずきやすいところ

その1 条件を2つ以上変える

水と温度を同時に変えてしまう。
変えるのは1つだけ。他はすべて同じにします。これが実験の絶対条件です。

その2 発芽と成長の条件を混同する

発芽にも日光が必要だと考える。
発芽は水・空気・温度の3つ。日光と肥料は成長に必要です。

その3 冷蔵庫の実験で暗さを考えない

片方だけ暗くなってしまう。
冷蔵庫は暗いので、比べる側も暗くします。条件を1つに絞るための工夫です。

やってみよう

Q1 発芽に必要な3つの条件は?

A 水・空気・適当な温度です。日光と肥料は必要ありません。

Q2 条件制御とは何ですか。

A 調べたいこと以外はすべて同じにすることです。変えるのは1つだけです。

Q3 子葉には何がたくわえられていますか。

A でんぷんなどの養分です。ヨウ素液で青むらさき色になります。

Q4 インゲンマメの種子で、発芽の実験をしてみましょう。

A だっし綿と容器があればできます。条件を1つだけ変えることを守ってください。

Q5 冷蔵庫を使う実験で、気をつけることは何ですか。

A 冷蔵庫の中は暗いので、比べる側も箱をかぶせて暗くします。変える条件を温度だけに絞るためです。

まとめ

おうちの方へ

この単元の本当の目的は、植物の知識よりも「条件制御」という科学の方法を身につけることにあります。中学・高校の理科、そして論理的な思考全般に生きる考え方です。
「変えるのは1つだけ」という原則は、日常でも使えます。「勉強法を変えたら成績が上がった」というとき、他に変わったことはないか。この見方ができると、ものごとを正しく判断できるようになります。
家庭でも簡単に実験できます。インゲンマメやカイワレの種、だっし綿、容器があれば十分です。冷蔵庫を使った温度の実験も、家庭ならすぐできます。
実験がうまくいかないこともありますが、それも学習です。「なぜうまくいかなかったか」を考えることが、科学的な態度を育てます。