5年 理科 人のたんじょう

人のたんじょう ── 38週間、守られて育つ

メダカとちがい、人は母親の体の中で育ちます。そのしくみを見ていきます。

メダカとのちがい

前の単元でメダカの誕生を学びました。人と比べてみましょう。

メダカ
受精の場所水の中(体外)母親の体内
育つ場所卵の中母親の子宮の中
養分卵の中の養分母親からもらう
期間約2週間約38週間
産む数1回に数十個ふつう1人

大きなちがいは、養分をどこから得るかです。

メダカは卵の中の養分だけで育ちます。だから、卵は大きめです。

人は母親から養分をもらい続けます。だから、受精卵は非常に小さいのです。

人の受精卵の大きさ 約0.1mm → 針の先ほどの大きさ → 肉眼ではほとんど見えない

この小さな一点から、約3kgの赤ちゃんに育つ。おどろくべき成長です。

また、産む数もちがいます。メダカは多くの卵を産みますが、そのほとんどは他の生き物に食べられます。人は少なく産んで、大切に育てるという戦略です。

子宮の中のしくみ

受精卵は、母親の子宮という場所で育ちます。

子宮の中のようす ┌──────────────┐ │ ○ ← 胎児 │ │ 〜〜〜 ← 羊水 │ │ │ ← へその緒 │ │ ▓▓ ← たいばん │ └──────────────┘

3つの大事なものがあります。

羊水(ようすい)

はたらき ・外からの衝撃を和らげる ・温度を一定に保つ ・体を自由に動かせるようにする ・乾燥を防ぐ

赤ちゃんは液体の中に浮かんでいます。だから、母親が動いても、ぶつかっても、直接の衝撃を受けません。

水の中だと体が軽くなるので、まだ力の弱い胎児でも動けるのです。

たいばん(胎盤)

はたらき ・母親の血液から養分と酸素を受け取る ・胎児の不要なものを母親側へ渡す ※ 血液が直接まざるわけではない → 必要なものだけが行き来する

血液は混ざりません。たいばんという「関所」を通して、必要なものだけがやりとりされます。

へその緒(へそのお)

はたらき ・たいばんと胎児をつなぐ管 ・養分と酸素を運ぶ ・不要なものを運び出す

へその緒は、生命線です。ここを通してすべてがやりとりされます。

生まれた後、へその緒は切られます。その跡がおへそです。誰のおへそも、母親とつながっていた証拠なのです。

成長の道のり

38週間の変化を見てみましょう。

時期大きさようす
4週約0.4cm心臓が動き始める
8週約3cm手足ができる
16週約16cm体の形が整う/髪が生える
24週約30cm体を活発に動かす/音が聞こえる
32週約42cm皮下脂肪がつく
38週約50cm・約3000g誕生の準備が整う

4週で心臓が動き始めるのは、メダカと似ています。生き物の基本のしくみは共通しているのです。

そして、24週ごろには音が聞こえるようになります。母親の心臓の音、話し声、外の音。生まれる前から、赤ちゃんは世界の音を聞いているのです。

生まれてすぐ母親の声に反応するのは、おなかの中で聞き慣れていたからだと言われています。

調べ方の工夫

おなかの中のようすは、直接見ることができません。どうやって調べるのでしょうか。

調べる方法 ・超音波(エコー)検査 → 音の反射で映像にする → 体に害がない ・本や資料 ・産婦人科の医師や助産師への取材 ・母子健康手帳の記録

とくに母子健康手帳は、身近で確かな資料です。自分がどう育ったかの記録が残っています。

ただし、この単元を学ぶときは配慮が必要です。

家庭の事情はさまざま

誕生に関する学習では、すべての子が同じ状況ではないことに気をつける必要があります。
母子手帳が手元にない、生まれたときの話を聞ける人がいない、家族の形がちがう。さまざまな事情があります。
だから、「家族に聞いてくること」を必須の課題にはしません。本や資料でも十分学べます。
大切なのは、命が大切に育まれるということを理解することです。それは、どんな家庭の子にも共通して伝えられる内容です。

命について考える

この単元は、知識だけでなく考えることが大切です。

気づけること ・自分もこうして生まれてきた ・38週間、守られて育った ・小さな受精卵から ここまで大きくなった ・多くの人が関わってくれた

そして、すべての生き物が同じように命をつないでいることにも気づけます。

メダカは卵で、人は母親の体内で。方法はちがっても、次の世代に命をつなぐという営みは同じです。

この学習を通して、自分の命も、他の生き物の命も大切だという感覚が育ちます。それが、この単元のいちばんの目的かもしれません。

また、妊娠している人への配慮についても考える機会になります。電車で席をゆずる、重い荷物を持つのを手伝う。なぜそうするのか、理由が分かると行動につながります。

生まれてからの成長

誕生は、ゴールではなくスタートです。

人の赤ちゃんは、他の動物と比べて非常に未熟な状態で生まれてきます。

生まれてすぐの状態 馬・シカ … 数時間で立って歩く 人 … 1年ほどかけて歩けるようになる → 人はとても長い時間、 世話が必要

なぜ人はこんなに未熟なまま生まれるのでしょうか。

有力な説は、頭が大きいからというものです。人は脳が発達しているため頭が大きく、これ以上おなかの中で育つと生まれられません。だから、未熟なうちに生まれて、外で育つのです。

未熟に生まれる利点 外の世界で成長する ↓ 周りの人や環境から学べる ↓ 言葉、文化、技術を身につけられる

おなかの中では学べないことを、生まれてから学ぶ。人が高度な文化を持てるのは、この長い成長期間のおかげだとも言われます。

そして、その長い期間、誰かが世話をしてくれたということでもあります。歩けない、しゃべれない、食べさせてもらう。すべて誰かの手を借りて、ここまで来たのです。

つまずきやすいところ

その1 血液がつながっていると思う

母親と胎児の血液が混ざると考える。
混ざりません。たいばんを通して、必要なものだけがやりとりされます。

その2 羊水の役割が分からない

なぜ水の中にいるのか疑問に思う。
衝撃を和らげ、温度を保ち、動きやすくするためです。守るための液体です。

その3 メダカとの共通点に気づかない

まったく別のことだと考える。
どちらも受精から始まり、養分をもらって育つ点は同じです。方法がちがうだけです。

やってみよう

Q1 人の受精卵の大きさはどれくらいですか。

A 約0.1mm。針の先ほどで、肉眼ではほとんど見えません。

Q2 羊水のはたらきを2つ言いましょう。

A 衝撃を和らげる・温度を保つなど。体を動かしやすくする役割もあります。

Q3 へその緒は何を運んでいますか。

A 養分と酸素を胎児へ、不要なものを母親側へ運びます。

Q4 メダカと人の誕生の共通点を考えてみましょう。

A 卵と精子が結びつくところから命が始まる点、そして養分を得て少しずつ形が整っていく点が同じです。

まとめ

おうちの方へ

この単元は、命の大切さを実感できる貴重な学習です。同時に、家庭の事情に配慮が必要な内容でもあります。
母子手帳やアルバムがあれば、一緒に見るのは良い体験になります。「こんなに小さかったんだよ」という話は、子どもにとって特別な意味を持ちます。
ただし、話せる範囲で構いません。無理に語る必要はありませんし、資料や本だけでも十分学べる単元です。
この学習をきっかけに、妊娠中の人への思いやりについて話し合うのもおすすめです。「なぜ席をゆずるのか」が理解できると、自然に行動できるようになります。
また、メダカの学習と結びつけて「生き物はみな命をつないでいる」という視点を持てると、理科の学びが深まります。