5年 理科 メダカのたんじょう

メダカのたんじょう ── 卵の中で、心臓が動き始める

命が作られていく過程を、自分の目で見られる数少ない機会です。

おすとめすを見分ける

メダカの観察は、おすとめすを見分けることから始まります。

見分けるポイントはひれの形です。

ひれおすめす
背びれ切れこみがある切れこみがない
しりびれ大きく平行四辺形に近い小さく三角形に近い
おす めす 背びれ \/ 背びれ \_/ 切れこみ なめらか しりびれ ▭ しりびれ ◺ 大きい 小さい

とくに背びれの切れこみが分かりやすい特徴です。

なぜおすのしりびれが大きいのでしょうか。産卵のときにめすに寄りそうためだと考えられています。すべての形には理由があるのです。

飼うときは、おすとめすを両方入れる必要があります。片方だけでは卵は生まれません。

受精という出来事

めすが産んだ卵に、おすが精子をかけることを受精といいます。

受精のしくみ めすが卵を産む ↓ おすが精子を出す ↓ 卵と精子が結びつく = 受精 ↓ 受精卵になる ↓ 育ち始める

重要なのは、受精しない卵は育たないということです。

これは、花の受粉と同じ考え方です。

植物メダカ
おす側花粉精子
めす側胚珠
結びつく受粉→受精受精
できるもの種子受精卵

植物も動物も、同じしくみで命をつないでいるのです。これは大きな発見です。

メダカの卵には、細い毛のようなものがついています。これは水草にからみつくためのもので、流されないようにする工夫です。

卵の中の変化

受精卵は、約2週間で子メダカになります。その間の変化を追えるのが、この単元の面白さです。

日数ようす
直後透明な球。中に油のつぶが見える
1日目細胞が分かれていく
2〜3日目体のもとになる部分ができる
4〜5日目目がはっきり見える/心臓が動き始める
6〜8日目血液の流れが見える/体が動く
9〜11日目体の形が整う/黒い模様が出る
約12〜14日目卵の膜を破って出てくる

いちばん感動的なのは、4〜5日目に心臓が動き始める瞬間です。

小さな透明な卵の中で、点のような心臓がドクドクと動いている。これが命だと実感できる場面です。

そして、血液の流れも見えます。体の中を赤いつぶが流れていくのが、けんび鏡ではっきり分かります。

生まれてすぐは食べない

卵からかえったばかりの子メダカは、2〜3日えさを食べません
おなかにふくらみがあり、そこに養分が残っているからです。これを卵黄のうといいます。
植物の子葉と同じで、最初の養分は親からもらったものです。
それを使い切ってから、自分でえさを食べ始めます。
だから、生まれてすぐにえさを与えても食べません。水を汚すだけなので、少し待ちましょう。

けんび鏡の使い方

卵の観察には、そう眼実体けんび鏡やけんび鏡を使います。

けんび鏡の使い方 ① 直射日光の当たらない明るい場所に置く ② 接眼レンズ → 対物レンズ の順に付ける ③ いちばん低い倍率にする ④ 反射鏡で明るさを調節 ⑤ プレパラートをのせる ⑥ 横から見ながら対物レンズを近づける ⑦ のぞきながら遠ざけてピントを合わせる

⑥と⑦の順序が重要です。近づけるときは横から見る。のぞきながら近づけると、レンズがプレパラートに当たって割れてしまいます。

なぜ低い倍率から始めるのか 高い倍率 → 見える範囲がせまい → 目的のものを探しにくい 低い倍率で探す → 中央に持ってくる → 倍率を上げる

探してから拡大するのが正しい手順です。

また、けんび鏡で見ると上下左右が逆になります。動かしたい方向と逆にプレパラートを動かす必要があるので、慣れるまで戸惑います。

メダカの飼い方

観察を続けるには、メダカを健康に飼う必要があります。

飼うときのポイント 【水】 ・くみ置きの水(1日以上置いた水道水) ・水道水をそのまま使わない → 塩素がメダカに有害 【場所】 ・直射日光の当たらない明るい場所 ・水温は20〜25℃くらい 【えさ】 ・1日1〜2回、数分で食べきる量 ・やりすぎない(水が汚れる) 【水そう】 ・水草を入れる(産卵場所、かくれ場所) ・卵は別の容器に移す → 親に食べられてしまうため

とくに卵を別にするのが重要です。メダカは自分が産んだ卵でも食べてしまいます。

そして、えさのやりすぎに注意してください。食べ残しが水を汚し、メダカが弱る原因になります。

生き物を飼うことは、命を預かることです。観察が終わったら、責任を持って世話を続けるか、適切な場所に返す必要があります。野生のいない場所に放すと、生態系を乱すので絶対にやめましょう。

なぜたくさん卵を産むのか

メダカは、一度に数十個の卵を産みます。そして、それを何日も繰り返します。

なぜそんなにたくさん産むのでしょうか。

自然の中では… 産んだ卵の多く → 他の魚に食べられる かえった子メダカ → さらに食べられる 大人になれるのは → ごくわずか → だから数で勝負する

生き残る確率が低いので、数を多く産むという戦略です。

これは、多くの魚や虫に共通しています。マンボウは一度に3億個もの卵を産むと言われます。それでも数が増えすぎないのは、ほとんどが生き残れないからです。

逆の戦略もあります。

少なく産んで大切に育てる ・人、ゾウ、クジラ ・鳥(巣を作り、えさを運ぶ) → 1回に産む数は少ない → そのぶん生き残る確率が高い

たくさん産むか、大切に育てるか。生き物によって、選んだ方法がちがうのです。

どちらが優れているということはありません。それぞれの暮らし方に合った方法を、長い時間をかけて身につけてきたのです。

つまずきやすいところ

その1 おすとめすを見分けられない

ひれの形が分からない。
背びれの切れこみがいちばん分かりやすい特徴です。上から見ると確かめやすくなります。

その2 けんび鏡でプレパラートを割る

のぞきながら近づけてしまう。
レンズを寄せる作業は必ず目を離して横から確認します。ピント合わせは遠ざけながらです。

その3 生まれてすぐえさをやる

食べないので水が汚れる。
子メダカは2〜3日は食べません。おなかの養分を使い切ってからです。

やってみよう

Q1 メダカのおすとめすを見分けるポイントは?

A 背びれの切れこみとしりびれの形です。おすの背びれには切れこみがあります。

Q2 受精とは何ですか。

A 卵と精子が結びつくことです。受精しない卵は育ちません。

Q3 卵の中で心臓が動き始めるのは何日目ごろですか。

A 4〜5日目ごろです。目もはっきり見えるようになります。

Q4 メダカを飼って、卵の変化を毎日記録してみましょう。

A 日付とスケッチを残すと、変化がよく分かります。写真も併用すると確実です。

まとめ

おうちの方へ

メダカの観察は、命が作られる過程を実際に目で見られる貴重な体験です。教科書の写真では伝わらない感動があります。
とくに、卵の中で心臓が動き出す瞬間は強い印象を残します。可能であれば、家庭でも飼育して毎日観察させてあげてください。
飼育のポイントはです。水道水をそのまま使うと塩素でメダカが弱ります。バケツに1日置いておくだけで大丈夫です。
えさのやりすぎも典型的な失敗です。「かわいそうだから」とたくさん与えると、かえって水を汚して死なせてしまいます。
そして、命を預かる責任についても話し合ってください。観察が終わった後どうするか。飼い続けるのか、誰かに譲るのか。安易に自然へ放すのは、生態系を乱すため避けるべきです。