「雲は何でできているの?」と聞かれて、「水じょう気」と答える人はとても多いです。テレビでもそう言われることがあります。でも、理科の答えとしてはこれはまちがいです。水じょう気は、目に見えません。目に見えないものが空に白く浮かんでいるはずがない、ということです。では、あの白いかたまりは何なのか。ここをはっきりさせると、きり・湯気・飛行機雲・コップの外側につく水てきが、ぜんぶ同じ一つのしくみで説明できるようになります。
やかんでお湯をわかしたときのことを思い出してください。口のすぐそばは、じつは何も見えません。すきとおっています。そこから少しはなれたところで、はじめて白いもやもやが出てきます。あの白いものを、ふつう「湯気」と呼びます。
口のすぐそばにあって見えていないもの、これが水じょう気です。水が気体になったすがたで、空気と同じようにすきとおっていて、目には見えません。そこから少しはなれて空気に冷やされると、気体でいられなくなって、小さな小さな水のつぶにもどります。つぶになったとたん、光をはね返すので白く見えるようになります。
つまり、こうです。
雲も、このまん中の段にいます。雲は、空にうかんだ、とても小さな水のつぶ(や氷のつぶ)の集まりです。1つのつぶの大きさは、髪の毛の太さの十分の一よりもっと小さいくらい。だから風にのってうかんでいられます。
ここで一つ、だいじな考え方があります。空気の中には、いつも目に見えない水じょう気がふくまれている、ということです。晴れた日の教室の空気にも、洗たく物がかわいた分の水が、見えない形で入っています。
ただし、空気がかくして持てる水の量には上限(じょうげん)があります。そして、この上限はあたたかい空気ほど大きく、つめたい空気ほど小さいのです。コップに入る砂の量のようなもので、あたたかい空気は大きなコップ、つめたい空気は小さなコップだと思ってください。
| 空気の温度 | 持てる水の量(1立方メートルあたり・およその値) |
|---|---|
| 30℃ | 約30g |
| 20℃ | 約17g |
| 10℃ | 約9g |
| 0℃ | 約5g |
この表を見ると、温度が10℃下がるだけで、持てる量がほぼ半分になっていくのが分かります。ここが雲のできる理由の中心です。
たとえば、20℃の空気が13gの水をかくして持っているとします。上限は17gなので、まだ余裕があり、何も見えません。ところが、この空気が10℃まで冷やされたらどうなるでしょう。10℃の上限は約9gですから、13g − 9g = 4gの分は、もうかくしていられません。行き場をなくした4g分が、水のつぶになって出てきます。これが白く見えるのです。
このように、冷やされていって「もうかくしていられない」ぎりぎりの温度のことを露点(ろてん)といいます。小学校では名前まで覚えなくてもかまいませんが、「冷やすと出てくる」「どこまで冷やすと出てくるかは、はじめに持っていた水の量で決まる」という2つは、そのまま中学につながります。
夏に、つめたい麦茶を入れたコップを置いておくと、外側にびっしり水てきがつきます。これを「コップから水がしみ出した」と考える子は、じつはとても多いです。でも、コップにあながあいていないことは自分でも分かっているので、そこでもやもやが残ります。
答えは、いまの話のとおりです。コップのまわりの空気が、つめたいコップにふれて急に冷やされ、かくしていられなくなった水が出てきたのです。水はコップの中からではなく、部屋の空気の中から来ています。これを結露(けつろ)といいます。冬の朝に窓ガラスがくもるのも、まったく同じことです。部屋のあたたかい空気が、外の寒さで冷えたガラスにふれて冷やされています。
そして、ここがこの記事のいちばん言いたいところです。コップの水てきと、空にうかぶ雲は、同じ現象です。ちがうのは「何によって冷やされたか」だけ。コップの場合はつめたいガラスにふれて冷やされました。では空の場合、何が空気を冷やしているのでしょうか。
空には、冷やしてくれるコップはありません。そのかわり、空気そのものが上に行くほど冷たくなるという性質を使います。高い山にのぼると夏でも寒いのは、このためです。だいたい100m上がるごとに0.6℃ほど下がっていきます。1000mで6℃、3000mで18℃も下がる計算です。
地面はお日さまにあたためられます。あたためられた空気は軽くなって、上へのぼっていきます。のぼるにつれてまわりが冷たくなるので、その空気もどんどん冷えていきます。そしてある高さまで来たところで、ついに「もうかくしていられない」温度に届きます。その高さから上が、白い雲になるのです。
夏の空に見える大きな入道雲の底が、どれも同じくらいの高さでそろって平らに見えることがあります。あれは偶然ではありません。同じ空気からできた雲なので、「かくしていられなくなる高さ」が同じだからです。空を見上げて、雲の底がそろっていることに気づけたら、この単元はもう分かっています。
しくみが一つだと分かると、いろいろな現象が一列につながります。
ぜんぶ「見えない水じょう気が、冷やされて、見える水のつぶになった」という一行で説明できます。
この単元は、「目に見えないものが、そこにある」と認めるところがいちばんの山です。水じょう気は見えないので、子どもにとっては存在を信じる根拠がありません。そこで役に立つのが、冷たいコップです。コップの外側についた水は、たしかに何もないところから現れます。この一度きりの体験が、「見えないけれど空気の中にある」という感覚をつくります。ご家庭では、水てきを拭き取るついでに「この水、どこから来たと思う?」と一言たずねてみてください。答えが「コップの中から」でもかまいません。ふたをしてもへらないことをいっしょに確かめれば、それだけで十分な実験になります。なお、やかんの湯気で確かめる場合は蒸気によるやけどの危険があるため、必ず離れた位置から、大人の付き添いのもとで観察してください。「天気の変化(5年)」「水のすがた(4年)」「水のじゅんかん(4年)」もあわせて読むと、水が地面と空を回り続けている大きな話としてひとつながりになります。