5年 国語 短歌・俳句

短歌・俳句 ── 十七音で季節を切り取る

俳句は世界一短い詩と言われます。なぜこれほど短くて、深いのでしょうか。

2つの形

日本の伝統的な詩の形を、あらためて整理します。

短歌 … 五・七・五・七・七(三十一音) 千三百年以上の歴史 俳句 … 五・七・五(十七音) 四百年ほどの歴史

短歌のほうが古く、俳句は後から生まれました。

実は、俳句は短歌から生まれたのです。

連歌という遊び 一人が 五・七・五 を詠む ↓ 次の人が 七・七 を付ける ↓ また次の人が 五・七・五 ↓ 何人もで長くつないでいく → その最初の 五・七・五 が独立した → 俳句になった

最初の句は「発句」と呼ばれ、特に重んじられました。それだけを取り出して味わうようになったのが俳句です。

だから、俳句には短歌の後半(七・七)がないのです。その分、読者が想像で補うことになります。

季語のはたらき

俳句には、必ず季語を入れるという約束があります。

季節季語の例
桜、うぐいす、菜の花、かすみ、卒業
蛍、夕立、入道雲、金魚、汗
月、紅葉、こおろぎ、稲刈り、天の川
雪、こたつ、木枯らし、みかん、初雪
新年初日の出、雑煮、書き初め、年賀状

季語には、大きな力があります。

「蛍」と一言書くだけで… ・夏の夜 ・暗い水辺 ・ふわりと光る様子 ・涼しい風 ・はかなさ これらすべてが読者の心に浮かぶ

説明せずに、多くを伝えられる。これが季語の役割です。

十七音という短さで深いことが言えるのは、季語が背景を運んでくれるからなのです。

季語を集めた本を歳時記といいます。何千もの季語が季節ごとに整理されていて、俳句を作る人の必需品です。

季節の感覚が今とずれる

俳句の季節は、昔の暦(旧暦)を基準にしています。
そのため、今の感覚とずれることがあります。
・「七夕」は秋の季語(今の8月ごろ)
・「立春」は春の始まり(2月初め)
・「朝顔」は秋の季語
「え、夏じゃないの?」と思うものがあります。
これは間違いではなく、暦の基準がちがうのです。歳時記で確かめると分かります。

切れ字のはたらき

俳句のもう一つの特徴が切れ字です。

代表的な切れ字 や … 感動・強調・言いさし かな … しみじみとした感動 けり … 気づき・詠嘆

切れ字は、そこで一度切るという合図です。

「古池や 蛙飛びこむ 水の音」(芭蕉) 「や」で切れる ↓ 古池がある。……(間) そこへ蛙が飛びこむ。水の音。 → 間があることで、 静けさが伝わる

この「や」がなければ、ただの描写になってしまいます。間を作ることで、余韻が生まれるのです。

「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」(子規) 「なり」で軽く切れる → 柿を食べていたら、 鐘の音が聞こえてきた → 静かな秋の情景

切れ字は、作者の感動がどこにあるかを示す印でもあります。切れ字の前後に、心が動いた場所があります。

短歌の世界

短歌は、俳句より十四音多いぶん、より詳しく心を表せます。

短歌の特徴 ・季語は必要ない ・切れ字も必須ではない ・気持ちを直接表すこともできる ・恋や別れなど、人の心を詠むことが多い

約束が少ないぶん、自由度が高いのです。

「たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」(石川啄木) → 母を冗談で背負ったら あまりに軽くて、 泣けてきて三歩も歩けなかった

この歌は、「悲しい」とは一言も書いていません。「軽い」「三歩歩けない」という事実だけです。

それでも、母が年老いたことへの切なさが伝わってきます。物語の心情読解と同じで、直接書かないほうが深く伝わるのです。

短歌は千三百年以上前から詠まれてきました。『万葉集』には、天皇から農民まで、さまざまな人の歌が収められています。身分に関係なく、誰もが歌を詠んだのです。

作ってみる

読むだけでなく、自分で作ってみましょう

俳句の作り方 ① 心が動いた場面を思い出す ② 季語を1つ決める ③ 五・七・五に当てはめてみる ④ 言葉を削る・入れかえる ⑤ 声に出して確かめる

作るときのコツをいくつか。

【コツ1】説明しない ×「うれしくて 走り出したよ 春の道」 → 「うれしくて」が説明的 ○「かけだして ランドセルゆれる 春の道」 → 行動だけ。うれしさが伝わる 【コツ2】季語を2つ入れない 「桜散り こたつでみかん 春の暮」 → 桜(春)とこたつ(冬)が混在 → 季節がぼやける 【コツ3】音数を数える 「きょう」は2音(きょ・う) 「っ」は1音 「ー」は1音

そして、字余り・字足らずも表現になります。

字余り … 音数が多い → ゆったり、重い感じ 字足らず … 音数が少ない → 引き締まった、鋭い感じ わざとずらすことで 印象を変えられる

ただし、まずは五・七・五を守って作ることから始めましょう。基本を知ってから崩すのが順序です。

取り合わせという技

俳句には、取り合わせという面白い技があります。

関係のなさそうな2つのものを 並べて置く 「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」 柿を食べること と 鐘の音 → 直接の関係はない → でも、並べると情景が生まれる

説明でつなぐのではなく、ただ並べる。すると読者の中で、2つが結びついて世界が広がります。

これは俳句ならではの表現です。文章なら「柿を食べていたら鐘が鳴ったので、秋の奈良の情景に心を打たれた」と書くところを、俳句は事実だけを置きます。

解釈は読者にゆだねる。読者が想像で完成させる詩なのです。

作るときにも使えます。

取り合わせの作り方 ① 季語を1つ決める ② 季語とは別のことがらを1つ決める ③ 五七五に収める 例:「金魚」+「宿題」 「金魚見て 宿題やらぬ 午後三時」

まったく関係のないものを並べると、意外な味わいが出ます。説明しない勇気が、俳句の面白さなのです。

つまずきやすいところ

その1 音数の数え方をまちがえる

「きょう」を3音と数える。
小さい「ゃゅょ」は数えません。「きょ・う」で2音です。

その2 季語が入っていない

俳句なのに季節が分からない。
俳句には季語が必要です。歳時記や教科書の季語一覧で確かめましょう。

その3 説明的になる

「うれしい」「楽しい」と書いてしまう。
気持ちは場面や行動で表します。直接書かないほうが伝わります。

やってみよう

Q1 短歌と俳句の音数を言いましょう。

A 短歌は五七五七七の三十一音、俳句は五七五の十七音です。

Q2 季語にはどんな働きがありますか。

A 一語で季節の情景や気分をまとめて伝える働きです。だから短くても深く表せます。

Q3 切れ字の代表を3つ言いましょう。

A や・かな・けりです。そこで切れて、間と余韻が生まれます。

Q4 今の季節の季語を使って、俳句を作ってみましょう。

A 心が動いた場面を、説明せずに描くのがコツです。声に出して確かめましょう。

まとめ

おうちの方へ

俳句や短歌は、日本語の美しさを味わう絶好の教材です。同時に、短い言葉で表現する訓練にもなります。
まずは音読から入ってください。有名な句をいくつか声に出して読むと、リズムのよさが体で分かります。
「なぜこの季語なのか」「切れ字がなかったらどうなるか」を考えてみるのも面白い活動です。作者の工夫が見えてきます。
作句は、ぜひ家族で試してみてください。今日あったことを五七五にする。うまくなくても構いません。言葉を選ぶ楽しさを味わうことが目的です。
季節の言葉を意識すると、日常の見え方も変わります。「今日の空、俳句にできそうだね」といった会話が、感性を育てます。
歳時記は一冊あると便利です。読み物としても面白く、季節の言葉の豊かさに驚かされます。