俳句は世界一短い詩と言われます。なぜこれほど短くて、深いのでしょうか。
日本の伝統的な詩の形を、あらためて整理します。
短歌のほうが古く、俳句は後から生まれました。
実は、俳句は短歌から生まれたのです。
最初の句は「発句」と呼ばれ、特に重んじられました。それだけを取り出して味わうようになったのが俳句です。
だから、俳句には短歌の後半(七・七)がないのです。その分、読者が想像で補うことになります。
俳句には、必ず季語を入れるという約束があります。
| 季節 | 季語の例 |
|---|---|
| 春 | 桜、うぐいす、菜の花、かすみ、卒業 |
| 夏 | 蛍、夕立、入道雲、金魚、汗 |
| 秋 | 月、紅葉、こおろぎ、稲刈り、天の川 |
| 冬 | 雪、こたつ、木枯らし、みかん、初雪 |
| 新年 | 初日の出、雑煮、書き初め、年賀状 |
季語には、大きな力があります。
説明せずに、多くを伝えられる。これが季語の役割です。
十七音という短さで深いことが言えるのは、季語が背景を運んでくれるからなのです。
季語を集めた本を歳時記といいます。何千もの季語が季節ごとに整理されていて、俳句を作る人の必需品です。
俳句の季節は、昔の暦(旧暦)を基準にしています。
そのため、今の感覚とずれることがあります。
・「七夕」は秋の季語(今の8月ごろ)
・「立春」は春の始まり(2月初め)
・「朝顔」は秋の季語
「え、夏じゃないの?」と思うものがあります。
これは間違いではなく、暦の基準がちがうのです。歳時記で確かめると分かります。
俳句のもう一つの特徴が切れ字です。
切れ字は、そこで一度切るという合図です。
この「や」がなければ、ただの描写になってしまいます。間を作ることで、余韻が生まれるのです。
切れ字は、作者の感動がどこにあるかを示す印でもあります。切れ字の前後に、心が動いた場所があります。
短歌は、俳句より十四音多いぶん、より詳しく心を表せます。
約束が少ないぶん、自由度が高いのです。
この歌は、「悲しい」とは一言も書いていません。「軽い」「三歩歩けない」という事実だけです。
それでも、母が年老いたことへの切なさが伝わってきます。物語の心情読解と同じで、直接書かないほうが深く伝わるのです。
短歌は千三百年以上前から詠まれてきました。『万葉集』には、天皇から農民まで、さまざまな人の歌が収められています。身分に関係なく、誰もが歌を詠んだのです。
読むだけでなく、自分で作ってみましょう。
作るときのコツをいくつか。
そして、字余り・字足らずも表現になります。
ただし、まずは五・七・五を守って作ることから始めましょう。基本を知ってから崩すのが順序です。
俳句には、取り合わせという面白い技があります。
説明でつなぐのではなく、ただ並べる。すると読者の中で、2つが結びついて世界が広がります。
これは俳句ならではの表現です。文章なら「柿を食べていたら鐘が鳴ったので、秋の奈良の情景に心を打たれた」と書くところを、俳句は事実だけを置きます。
解釈は読者にゆだねる。読者が想像で完成させる詩なのです。
作るときにも使えます。
まったく関係のないものを並べると、意外な味わいが出ます。説明しない勇気が、俳句の面白さなのです。
「きょう」を3音と数える。
小さい「ゃゅょ」は数えません。「きょ・う」で2音です。
俳句なのに季節が分からない。
俳句には季語が必要です。歳時記や教科書の季語一覧で確かめましょう。
「うれしい」「楽しい」と書いてしまう。
気持ちは場面や行動で表します。直接書かないほうが伝わります。
Q1 短歌と俳句の音数を言いましょう。
A 短歌は五七五七七の三十一音、俳句は五七五の十七音です。
Q2 季語にはどんな働きがありますか。
A 一語で季節の情景や気分をまとめて伝える働きです。だから短くても深く表せます。
Q3 切れ字の代表を3つ言いましょう。
A や・かな・けりです。そこで切れて、間と余韻が生まれます。
Q4 今の季節の季語を使って、俳句を作ってみましょう。
A 心が動いた場面を、説明せずに描くのがコツです。声に出して確かめましょう。
俳句や短歌は、日本語の美しさを味わう絶好の教材です。同時に、短い言葉で表現する訓練にもなります。
まずは音読から入ってください。有名な句をいくつか声に出して読むと、リズムのよさが体で分かります。
「なぜこの季語なのか」「切れ字がなかったらどうなるか」を考えてみるのも面白い活動です。作者の工夫が見えてきます。
作句は、ぜひ家族で試してみてください。今日あったことを五七五にする。うまくなくても構いません。言葉を選ぶ楽しさを味わうことが目的です。
季節の言葉を意識すると、日常の見え方も変わります。「今日の空、俳句にできそうだね」といった会話が、感性を育てます。
歳時記は一冊あると便利です。読み物としても面白く、季節の言葉の豊かさに驚かされます。