5年 国語 敬語

敬語 ── だれを高めるかで、使う言葉が変わる

尊敬語と謙譲語の混同は、だれの動作かを確かめるだけで解決します。

敬語は3種類

敬語には、大きく3つの種類があります。

種類だれを高めるか
尊敬語相手を高める先生がおっしゃる
謙譲語自分を低めるわたしが申す
丁寧語言い方を丁寧に行きます、本です

この3つのちがいをつかむのが、この単元のすべてです。

丁寧語はいちばん簡単です。「です・ます」をつけるだけ。相手が誰でも使えます。

問題は、尊敬語と謙譲語です。ここが混乱しやすいところです。

見分け方はただ一つ

尊敬語と謙譲語を見分ける方法は、たった一つです。

その動作をするのは だれか? 相手(目上の人)がする → 尊敬語 自分(身内)がする → 謙譲語

これだけです。動作の主が誰かを確かめれば、必ず判断できます。

「先生が来る」 → 来るのは先生 → 尊敬語「いらっしゃる」 「わたしが行く」 → 行くのは自分 → 謙譲語「うかがう」

よくある間違いを見てみましょう。

×「先生、これを いただいて ください」 → いただく は謙譲語(自分が受け取る) → 先生の動作には使えない ○「先生、これを 召し上がって ください」 → 召し上がる は尊敬語

逆のパターンもあります。

×「わたしが おっしゃいました」 → おっしゃる は尊敬語(相手が言う) → 自分には使えない ○「わたしが 申しました」 → 申す は謙譲語

迷ったら、主語を確かめる。それだけで正解にたどりつけます。

特別な形を覚える

よく使う動詞には、専用の敬語があります。

ふつう尊敬語謙譲語
言うおっしゃる申す・申し上げる
行く・来るいらっしゃる・おいでになるうかがう・まいる
いるいらっしゃるおる
するなさるいたす
食べる・飲む召し上がるいただく
見るご覧になる拝見する
聞くお聞きになるうかがう・拝聴する
もらうお受け取りになるいただく・ちょうだいする
あげるくださるさしあげる
知るご存じ存じる・存じ上げる

すべて覚えるのは大変ですが、よく使うものから身につけていきましょう。

とくに間違えやすいのが「いただく」と「くださる」です。

「いただく」… 自分がもらう(謙譲語) 「先生に本をいただきました」 → もらったのは自分 ○ 「くださる」… 相手がくれる(尊敬語) 「先生が本をくださいました」 → くれたのは先生 ○ どちらも同じ場面だが、 だれを主語にするかがちがう

同じ出来事でも、誰を主語にするかで使う言葉が変わります

一般的な作り方

特別な形がない動詞は、決まった形で敬語にできます。

【尊敬語の作り方】 ① お(ご)〜になる 書く → お書きになる 利用する → ご利用になる ② 〜れる・られる 書く → 書かれる 話す → 話される ③ お(ご)〜ください 書く → お書きください
【謙譲語の作り方】 ① お(ご)〜する 持つ → お持ちする 案内する → ご案内する ② お(ご)〜いたす 知らせる → お知らせいたす

この形を知っていれば、どんな動詞でも敬語にできます

ただし、使いすぎに注意です。

二重敬語に注意

敬語を重ねすぎると、かえっておかしくなります。
×「おっしゃられる」(おっしゃる+られる)
○「おっしゃる」

×「お召し上がりになられる」
○「召し上がる」

×「ご覧になられる」
○「ご覧になる」

敬語は1回で十分です。丁寧にしようとして重ねると、不自然になります。

身内をどう言うか

敬語で難しいのが、身内の扱いです。

家の中では 「お父さんが帰ってきた」 ○ 外の人に話すときは ×「父が帰ってこられました」 ○「父が帰ってまいりました」 → 身内には尊敬語を使わない

なぜでしょうか。身内は自分の側だからです。外の人に対しては、自分の側を低めます。

身内(外の人に話すとき)相手側
父・母お父さま・お母さま
兄・姉お兄さま・お姉さま
家・自宅お宅
会社・当社御社・貴社

この考え方は、学校でも同じです。

他の学校の人に話すとき ×「うちの校長先生がおっしゃいました」 ○「校長が申しました」 → 自分の学校の先生も「身内」

ただし、5年生の段階では、ここまで厳密でなくてかまいません。「身内には尊敬語を使わない」という原則を知っておけば十分です。

なぜ敬語があるのか

敬語は面倒に感じるかもしれません。でも、大事な役割があります。

敬語の働き ① 相手を尊重する気持ちを表す ② 関係の距離を示す ③ 場の改まり方を伝える

②の距離が面白いところです。

親しい友だち … ためぐち 「明日、来る?」 あまり親しくない人 … 丁寧語 「明日、来ますか」 目上の人 … 尊敬語 「明日、いらっしゃいますか」

言葉づかいで、相手との関係が表現されます

逆に言えば、使い方をまちがえると関係を損なうこともあります。目上の人にためぐちを使えば失礼になり、親しい友だちに敬語を使えばよそよそしく感じられます。

敬語は、相手を大切に思う気持ちを形にしたものです。形だけ覚えるのではなく、その気持ちを持って使うことが大切です。

使う場面を考える

敬語は、いつでも使えばよいというものではありません。場面に合わせることが大切です。

敬語を使う場面 ・目上の人と話すとき ・初めて会う人と話すとき ・お店や公共の場で ・手紙やメールを書くとき ・発表やスピーチのとき 敬語を使わない場面 ・親しい友だちとの会話 ・家族との日常会話 ・独り言や日記

友だちに敬語を使い続けると、よそよそしく感じられます。距離を置いているという合図になってしまうのです。

また、同じ相手でも場面によって変わります。

先生と… 授業中や職員室 → 敬語 部活の休憩中や雑談 → 少しくだけてもよい場合がある

この判断は難しく、大人でも迷います。基本は迷ったら丁寧にです。丁寧すぎて失礼になることは、ほとんどありません。

そして、言葉づかいだけが敬意ではないことも覚えておきましょう。あいさつ、姿勢、話を聞く態度。それらすべてが相手への敬意を表します。完璧な敬語より、相手をきちんと見て話すことのほうが大切な場合もあるのです。

つまずきやすいところ

その1 尊敬語と謙譲語を逆に使う

自分の動作に尊敬語を使ってしまう。
だれの動作かを確かめます。主語に指を置いてから言葉を選ぶ習慣をつけましょう。

その2 二重敬語になる

「おっしゃられる」のように重ねる。
敬語は1回で十分です。丁寧にしようとしすぎないことです。

その3 身内に尊敬語を使う

外の人に「父がおっしゃいました」と言う。
身内は自分の側です。外の人に対しては謙譲語を使います。

やってみよう

Q1 尊敬語と謙譲語の見分け方は?

A だれの動作かで決まります。相手なら尊敬語、自分なら謙譲語です。

Q2 「食べる」の尊敬語と謙譲語を言いましょう。

A 尊敬語は召し上がる、謙譲語はいただくです。

Q3 「おっしゃられる」はなぜ間違いですか。

A 「おっしゃる」に「られる」を重ねた二重敬語だからです。「おっしゃる」で十分です。

Q4 先生に何かをたずねる場面を、敬語で書いてみましょう。

A 「先生、これについてうかがってもよろしいでしょうか」など。主語を意識して選びます。

まとめ

おうちの方へ

敬語は、覚える量が多く感じられますが、原則は「だれの動作か」の一点です。ここさえ押さえれば、あとは語彙の問題になります。
実際の場面で使う機会を作ってあげてください。お店の人と話す、電話を取る、親戚に挨拶する。使ってみて初めて身につくのが敬語です。
間違えたときは、その場で厳しく直すよりも、後で「こう言うといいよ」と伝えるほうが効果的です。萎縮すると使わなくなってしまいます。
テレビのニュースやドラマも教材になります。「今の言い方、尊敬語?謙譲語?」と聞いてみると、自然に意識が向きます。
なお、大人でも二重敬語や身内への尊敬語はよく間違えます。完璧を求めず、少しずつ身につけていけば十分です。