5年 国語 古文に親しむ

古文に親しむ ── 千年前の日本語が、今も読める

意味を全部つかむ必要はありません。まず声に出すところから始めましょう。

千年前の言葉が残っている

日本には、千年以上前に書かれた文章が残っています。しかも、今の日本語と地続きなので、少し慣れれば読めるのです。

代表的な古典 『竹取物語』(約1100年前) 日本最古の物語。かぐや姫の話 『枕草子』(約1000年前) 清少納言が書いた随筆 『平家物語』(約800年前) 武士の戦いを描いた物語 『徒然草』(約700年前) 兼好法師の随筆

世界的に見ても、これほど古い文章が今の言葉とつながっている国は多くありません。日本語の大きな特徴です。

5年生では、これらの冒頭部分を読みます。有名な書き出しを、声に出して味わうのが中心です。

まず声に出す

古文の学習で、いちばん大切なのは音読です。

意味を調べる前に、まず読んでみましょう。

『枕草子』の書き出し 春はあけぼの。 やうやう白くなりゆく山ぎは、 少し明かりて、 紫だちたる雲の 細くたなびきたる。

声に出すと、心地よいリズムがあることに気づきます。

意味が完全に分からなくても、「春はあけぼの」の後に何かが続く感じは伝わります。この感覚が大事なのです。

『平家物語』の書き出し 祇園精舎の鐘の声、 諸行無常の響きあり。 沙羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。

七五調に近いリズムで、朗々と読むと迫力があります。これは、もともと語り聞かせるための物語だったからです。琵琶法師という人たちが、楽器に合わせて語っていました。

だから、目で読むより耳で聞くほうが本来の姿なのです。

読み方のきまり

古文には、今とちがうかなづかいがあります。これを歴史的仮名遣いといいます。

書き方読み方
は・ひ・ふ・へ・ほ
(語の途中や最後)
わ・い・う・え・おあはれ → あわれ
いふ → いう
ゐ・ゑ・をい・え・おゐる → いる
ぢ・づじ・ずもみぢ → もみじ
auおーやうやう → ようよう
iuゆーきうに → きゅうに

いちばんよく出るのは「は行」のきまりです。

語の最初 → そのまま はな → はな 語の途中や最後 → わ行で読む かは → かわ(川) こひ → こい(恋) おもふ → おもう(思う)

実は、このきまりは今も残っています。

「わたしは」の「は」を「わ」と読む 「本を」の「を」を「お」と読む → 古文のなごり

助詞の「は」「を」「へ」は、昔の書き方がそのまま残ったものなのです。

意味がちがう言葉

古文には、今と意味がちがう言葉があります。

言葉古文での意味今の意味
あはれしみじみと心動かされるかわいそう
をかし趣がある・美しいおかしい・変だ
うつくしかわいらしい美しい
やがてすぐにそのうち
あやし不思議だ・身分が低いあやしい

とくに「をかし」は重要です。『枕草子』を貫くキーワードで、「趣がある」「風情がある」という意味です。今の「おかしい」とはまったくちがいます。

同じ言葉でも、時代とともに意味が変わるのです。これは古文だけの話ではありません。

最近の例 「やばい」 → 昔:危ない、まずい → 今:すごい(よい意味でも使う) 「全然」 → 昔:全然〜ない(打ち消しと組で使う) → 今:全然いい(肯定でも)

言葉は生きていて、変わり続けています。古文を学ぶと、そのことが実感できます。

有名な冒頭を味わう

いくつかの古典の書き出しを見てみましょう。

『竹取物語』 今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。 野山にまじりて竹を取りつつ、 よろづのことに使ひけり。 → 「今は昔」= 今となっては昔のこと → 物語の始まりの決まり文句

「今は昔」は、昔話の「むかしむかし」にあたる言い方です。物語の入り口を示す合図でした。

『徒然草』 つれづれなるままに、 日暮らし、硯にむかひて、 心にうつりゆくよしなし事を、 そこはかとなく書きつくれば、 あやしうこそものぐるほしけれ。 → やることもなく退屈なので、 一日中すずりに向かって、 心に浮かんでは消えることを とりとめもなく書いていると、 妙に気分が高ぶってくる

この文章、内容は「なんとなく書いていたら、だんだん熱中してきた」ということです。

700年前の人が、今のわたしたちと同じような気持ちを書いている。人の心は、そう変わらないのだと分かります。

暗唱してみる

古文は、暗唱すると味わいが深まります。
意味が完全に分からなくても、リズムを覚えてしまう。すると、あるとき「あ、こういう意味だったのか」と分かる瞬間が来ます。
短いものから始めましょう。
・「春はあけぼの」(枕草子・冒頭の数行)
・「祇園精舎の鐘の声…」(平家物語)
・「今は昔、竹取の翁…」(竹取物語)
声に出して何度も読むうちに、自然に覚えられます。体で覚えた言葉は、一生残ります

古文が今につながっている

古文は、遠い世界の話ではありません。今の言葉の中に生きています

ことわざ・慣用句 「情けは人のためならず」 「たで食う虫も好き好き」 四字熟語 「一期一会」「諸行無常」 古語が残る言い方 「〜のごとし」「いわく」 「あらず」「なかれ」

正月の「明けましておめでとうございます」も、古い言い方が残ったものです。

そして、俳句や短歌には、今でも古文の文法が使われています。

「古池や 蛙飛びこむ 水の音」(芭蕉) 「や」は古文の切れ字 → 今の言葉ではない

だから、古文を知ると俳句も深く読めます。次の単元「短歌・俳句」につながっていくのです。

また、お寺や神社の言葉、時代劇のせりふ、歌の歌詞にも古語は出てきます。知っていると気づけるようになります。

つまずきやすいところ

その1 全部の意味を分かろうとする

一語ずつ調べて疲れてしまう。
5年生では味わうことが目的です。まず音読して、大まかな内容が分かれば十分です。

その2 かなづかいで読めない

「あはれ」をそのまま読んでしまう。
は行はわ行で読むのが基本です。「は・ひ・ふ・へ・ほ」→「わ・い・う・え・お」。

その3 今の意味で解釈する

「をかし」を「おかしい」と読む。
古文には意味がちがう言葉があります。主要なものは注に書かれているので、確認しましょう。

やってみよう

Q1 古文の学習で、まず何をするとよいですか。

A 声に出して読むことです。意味を調べる前に、リズムを味わいます。

Q2 「いふ」はどう読みますか。

A いうです。語の途中や最後の「ふ」は「う」と読みます。

Q3 「をかし」の意味は?

A 趣がある・美しいという意味です。今の「おかしい」とはちがいます。

Q4 好きな古典の冒頭を暗唱してみましょう。

A 「春はあけぼの」から始めるのがおすすめです。短くて覚えやすく、美しい文章です。

まとめ

おうちの方へ

古文は、5年生にとって初めての出会いです。ここで苦手意識を持たせないことが何より大切です。
そのために、意味の理解を急がないでください。まずは音読、そしてリズムを楽しむ。「よく分からないけど、なんかかっこいい」で十分です。
暗唱は非常に効果的です。子どもは意味が分からなくても、リズムのよい言葉をすんなり覚えます。そして、覚えた言葉は年月を経て意味とつながっていきます。
「言葉は変わる」という話は、興味を引きやすい話題です。「やばい」の意味の変化などを例に出すと、古語との距離が縮まります。
アニメや漫画にも古典を題材にしたものがあります。入り口として活用するのも良い方法です。