意味を全部つかむ必要はありません。まず声に出すところから始めましょう。
日本には、千年以上前に書かれた文章が残っています。しかも、今の日本語と地続きなので、少し慣れれば読めるのです。
世界的に見ても、これほど古い文章が今の言葉とつながっている国は多くありません。日本語の大きな特徴です。
5年生では、これらの冒頭部分を読みます。有名な書き出しを、声に出して味わうのが中心です。
古文の学習で、いちばん大切なのは音読です。
意味を調べる前に、まず読んでみましょう。
声に出すと、心地よいリズムがあることに気づきます。
意味が完全に分からなくても、「春はあけぼの」の後に何かが続く感じは伝わります。この感覚が大事なのです。
七五調に近いリズムで、朗々と読むと迫力があります。これは、もともと語り聞かせるための物語だったからです。琵琶法師という人たちが、楽器に合わせて語っていました。
だから、目で読むより耳で聞くほうが本来の姿なのです。
古文には、今とちがうかなづかいがあります。これを歴史的仮名遣いといいます。
| 書き方 | 読み方 | 例 |
|---|---|---|
| は・ひ・ふ・へ・ほ (語の途中や最後) | わ・い・う・え・お | あはれ → あわれ いふ → いう |
| ゐ・ゑ・を | い・え・お | ゐる → いる |
| ぢ・づ | じ・ず | もみぢ → もみじ |
| au | おー | やうやう → ようよう |
| iu | ゆー | きうに → きゅうに |
いちばんよく出るのは「は行」のきまりです。
実は、このきまりは今も残っています。
助詞の「は」「を」「へ」は、昔の書き方がそのまま残ったものなのです。
古文には、今と意味がちがう言葉があります。
| 言葉 | 古文での意味 | 今の意味 |
|---|---|---|
| あはれ | しみじみと心動かされる | かわいそう |
| をかし | 趣がある・美しい | おかしい・変だ |
| うつくし | かわいらしい | 美しい |
| やがて | すぐに | そのうち |
| あやし | 不思議だ・身分が低い | あやしい |
とくに「をかし」は重要です。『枕草子』を貫くキーワードで、「趣がある」「風情がある」という意味です。今の「おかしい」とはまったくちがいます。
同じ言葉でも、時代とともに意味が変わるのです。これは古文だけの話ではありません。
言葉は生きていて、変わり続けています。古文を学ぶと、そのことが実感できます。
いくつかの古典の書き出しを見てみましょう。
「今は昔」は、昔話の「むかしむかし」にあたる言い方です。物語の入り口を示す合図でした。
この文章、内容は「なんとなく書いていたら、だんだん熱中してきた」ということです。
700年前の人が、今のわたしたちと同じような気持ちを書いている。人の心は、そう変わらないのだと分かります。
古文は、暗唱すると味わいが深まります。
意味が完全に分からなくても、リズムを覚えてしまう。すると、あるとき「あ、こういう意味だったのか」と分かる瞬間が来ます。
短いものから始めましょう。
・「春はあけぼの」(枕草子・冒頭の数行)
・「祇園精舎の鐘の声…」(平家物語)
・「今は昔、竹取の翁…」(竹取物語)
声に出して何度も読むうちに、自然に覚えられます。体で覚えた言葉は、一生残ります。
古文は、遠い世界の話ではありません。今の言葉の中に生きています。
正月の「明けましておめでとうございます」も、古い言い方が残ったものです。
そして、俳句や短歌には、今でも古文の文法が使われています。
だから、古文を知ると俳句も深く読めます。次の単元「短歌・俳句」につながっていくのです。
また、お寺や神社の言葉、時代劇のせりふ、歌の歌詞にも古語は出てきます。知っていると気づけるようになります。
一語ずつ調べて疲れてしまう。
5年生では味わうことが目的です。まず音読して、大まかな内容が分かれば十分です。
「あはれ」をそのまま読んでしまう。
は行はわ行で読むのが基本です。「は・ひ・ふ・へ・ほ」→「わ・い・う・え・お」。
「をかし」を「おかしい」と読む。
古文には意味がちがう言葉があります。主要なものは注に書かれているので、確認しましょう。
Q1 古文の学習で、まず何をするとよいですか。
A 声に出して読むことです。意味を調べる前に、リズムを味わいます。
Q2 「いふ」はどう読みますか。
A いうです。語の途中や最後の「ふ」は「う」と読みます。
Q3 「をかし」の意味は?
A 趣がある・美しいという意味です。今の「おかしい」とはちがいます。
Q4 好きな古典の冒頭を暗唱してみましょう。
A 「春はあけぼの」から始めるのがおすすめです。短くて覚えやすく、美しい文章です。
古文は、5年生にとって初めての出会いです。ここで苦手意識を持たせないことが何より大切です。
そのために、意味の理解を急がないでください。まずは音読、そしてリズムを楽しむ。「よく分からないけど、なんかかっこいい」で十分です。
暗唱は非常に効果的です。子どもは意味が分からなくても、リズムのよい言葉をすんなり覚えます。そして、覚えた言葉は年月を経て意味とつながっていきます。
「言葉は変わる」という話は、興味を引きやすい話題です。「やばい」の意味の変化などを例に出すと、古語との距離が縮まります。
アニメや漫画にも古典を題材にしたものがあります。入り口として活用するのも良い方法です。