「りんごを食べた」と日本語で言うとき、いくつ食べたかを言わなくても文になります。ところが英語では、りんごを口にしたしゅん間に「1つなのか、2つ以上なのか」を決めないと、そもそも言葉が出てきません。a をつけるか、s をつけるか。これは覚える量が多いからむずかしいのではなく、日本語が持っていない「数のしるし」を、毎回つける習かんがないからむずかしいのです。ここを一度整理しておくと、これまで習った動物・果物・持ち物の言い方が、まとめて正しくなります。
まず、日本語と英語で同じことを言ってみます。
日本語の「本がある」は、1さつでも5さつでも同じ言い方で通じます。聞いた人は、数が知りたければ「何さつ?」とあとから聞けばよいからです。ところが英語は、book をそのままおくことができません。1つなら前に a を、2つ以上なら後ろに s をつけて、数のしるしをつけてから文にします。つまり英語は、話し始める前に数を決めておく言葉なのです。日本の小学生が英語でつまずく理由の多くは、単語を知らないからではなく、この「決めてから言う」順番になれていないところにあります。
数が1つのときは、言葉の前に a をつけます。ただし、読んだときの音が「ア・イ・ウ・エ・オ」で始まる言葉の前は an になります。
| 言い方 | 意味 | なぜ |
|---|---|---|
| a dog | 1ぴきの犬 | d の音で始まる |
| a pencil | 1本のえんぴつ | p の音で始まる |
| an apple | 1つのりんご | ア の音で始まる |
| an orange | 1つのオレンジ | オ の音で始まる |
| an egg | 1つのたまご | エ の音で始まる |
a と an のちがいは、意味ではなく言いやすさです。「ア・アップル」と続けると口が止まってしまうので、あいだに n を入れて「アナップル」となめらかにしているだけです。ですから、書いてある文字ではなく、声に出した音で決めます。じっさいに声に出してみて、言いにくいと感じたら an、すっと言えたら a。この耳で決めるやり方なら、いちいち思い出さなくても選べます。
数が2つ以上になったら、a をやめて、言葉のうしろに s をつけます。a と s は、いっしょには使いません。
「a はやめて、s をつける」。この入れかえが、英語の数のしるしの中心です。two や many のように数を表す言葉がついていても、s は省けません。日本語なら「2ひきの犬」の「犬」は形が変わらないので、s を落としてもまちがいに気づきにくいのですが、英語では数の言葉と s の両方が必要です。数を言うたびに s まで手をのばす、とおぼえておきましょう。なお、s・x・ch・sh で終わる言葉は、s だけでは音がつながらないので es をつけます(bus → buses、box → boxes)。
s は、前の音によって読み方が変わります。意識しなくても自然にそうなりますが、知っておくと聞き取りやすくなります。
| 読み方 | 例 | 前の音 |
|---|---|---|
| ス | cats(キャッツ) | t・k・p など |
| ズ | dogs(ドッグズ) | g・n・母音など |
| イズ | buses(バスィズ) | s・x・ch・sh |
日本語ふうに「ドッグス」と読んでしまうと、英語を話す人には s が聞こえません。これは発音がへただからではなく、日本語に「ズ」で終わる言葉が少ないためです。cats はス、dogs はズ、buses はイズ。3つだけ声に出して練習すれば、あとは似た言葉に自然に広がります。聞き取りのときも、この最後のわずかな音が「1つか2つ以上か」を教えてくれます。
数えられないものには、a も s もつけません。形が決まっていなくて、1つ2つと指で数えられないものです。
水・牛にゅう・ごはん・さとう・パンなどは、どこで切っても同じものなので、英語では数えません。数を言いたいときは、入れ物や形の言葉を借りて「a glass of water(コップ1ぱいの水)」「two pieces of bread(パン2切れ)」のように言います。ここは日本語の「〜はい」「〜切れ」と同じ考え方なので、じつは日本の小学生にはなじみやすいところです。数えられるかどうかは、頭の中で2つ並べてみると見分けられます。犬は2ひき並びますが、水は並べても1つのかたまりにもどってしまいます。
s をつけずに、言葉の形が変わるものが少しだけあります。数が多くないので、出てきたときに覚えれば十分です。
| 1つ | 2つ以上 | 意味 |
|---|---|---|
| foot | feet | 足 |
| tooth | teeth | 歯 |
| child | children | 子ども |
| man | men | 男の人 |
| fish | fish | 魚(形が同じ) |
体の部分や人を表す、昔からよく使われてきた言葉ほど、古い形が残っています。使う回数が多い言葉は、みんなが言いなれていて形が変わりにくいからです。fish のように、1ぴきでも何びきでも同じ形のものもあります。ここはりくつよりも、体の単元で習った eyes・ears・hands といっしょに、声に出して覚えるのが早道です。
「a dogs」とは言いません。1つなら a dog、2つ以上なら dogs。
a が出たら s は消える、と対にして覚えます。
「犬が好き」は、その種類ぜんぶが好きということなので I like dogs. です。
I like dog. だと、食べ物としての犬の話に聞こえてしまうことがあります。
「水がほしい」は I want water. で、a water とは言いません。
量を言いたいときは a glass of water のように、入れ物の言葉を借ります。
Q1 「1つのたまご」を英語で言うと?
A an egg(エの音で始まるので an)
Q2 「3さつの本」を英語で言うと?
A three books(数の言葉があっても s は必要)
Q3 「わたしはねこが好きです」を英語で言うと?
A I like cats.(種類ぜんぶが好きなので s をつける)
Q4 「水がほしい」に a はいる?
A いらない。I want water.(数えられないもの)
Q5 foot が2つ以上になると、どんな形になる?
A feet(s をつけず形が変わる仲間)
単数・複数の区別は、中学英語のはじめに出てきて、そこから三人称単数の s や be動詞の is / are の選び方まで、ずっと影きょうし続ける土台です。ところが日本語には数のしるしがないため、単語を覚えていても文にすると s が抜ける、という状態が長く続きます。これは不注意ではなく、母語のしくみのちがいによるものなので、しかるより「英語は毎回数を言う言葉なんだね」と、ちがいそのものを話題にしてあげてください。ご家庭でできる練習としては、身のまわりのものを指して「1つ? 2つ以上?」と日本語で聞き、そのあと英語で言ってもらう方法が手軽です。数を決めてから口を開く、という順番が身につきます。また、a water のような言い方をしたときは、正しい形を言い直して聞かせるだけで十分です。細かく直しすぎると話す気持ちがしぼんでしまいます。この記事の内容は、すでに習った動物・果物・持ち物・体の部分の単元をつなぐ横ぐしにあたります。新しく覚えることを増やすより、これまでの言葉に a と s をつけ直してみる復習として使うと、いちばん効果が出ます。