5年 英語 命令文

Stand up. に you がないわけ ── 英語で主語が消えるのは、この形だけ

英語の文には「だれが」を入れる箱がかならずある。日本語とちがって、そこを省くことはできない ── そう習ったはずです。ところが英語の授業で毎日聞いている Stand up. にも、道案内で出てくる Go straight. にも、「だれが」がどこにもありません。習ったきまりが、いきなり破られているように見えます。じつはこれ、きまりが破れているのではなく、たった1つだけ用意されている例外の形です。ここを知ると、教室の英語も、道案内も、町の標識の英語も、同じ1本の線でつながります。

「だれが」が見あたらない文が、教科書には山ほどある

まず、よく似た3つの文をならべます。使われている単語は、ほとんど同じです。

I stand up.   わたしは立ちます。 You stand up.  あなたは立ちます。 Stand up.    立って。

3つとも正しい英語です。けれど意味はまったくちがいます。上の2つは「だれかが立つ」というようすの報告で、いちばん下だけが目の前の相手に向けた声かけです。

ここでつまずく人は、Stand up. を「You stand up. の you を書きわすれた文」だと思ってしまいます。そうではありません。you を消したこと自体に意味があるのです。消えた場所が、そのまま「これはあなたへの声かけですよ」という合図になっています。

この形を、中学校では命令文と呼びます。「命令」というと強い言葉に聞こえますが、英語の命令文は日本語の「立って」「見て」「がんばって」くらいの軽さで、毎日ふつうに使われています。先生が言う Look at me. も、友だちが言う Try again. も、料理の本に書いてある Mix well. も、ぜんぶ同じ仲間です。

主語の箱を空にできるのは、目の前の相手に言うときだけ

英語の文は「だれが → どうする → なにを」の順に箱がならんでいます。ふだん、この1つ目の箱を空にすることはできません。空にしたら、だれの話なのか分からなくなるからです。

ところが1つだけ、空にしても困らない場合があります。今、目の前にいる相手に直接言うときです。このとき1つ目の箱に入るのは you 以外にありえません。だれに言っているかは、声と顔の向きで、もう分かっているからです。分かりきっているものは消してよい ── それがこの形の正体です。

文1つ目の箱だれの話か使う場面
I open the door.I自分自分のしていることを言う
You open the door.you相手相手のようすを説明する
He opens the door.heその場にいない人ほかの人の話をする
Open the door.(空)目の前の相手その相手に声をかける

表のいちばん下だけ、1つ目の箱が空になっています。そして空なのに、だれのことか分からなくなっていません。むしろ空だからこそ「これはあなたに言っているんだ」と伝わります。

日本語とは逆の驚き

日本語は「立って」「見て」だけでなく、「宿題やった?」「もう食べた」のように、主語をしょっちゅう省きます。ですから日本語で育った人にとって、主語のない文はめずらしくもなんともありません。
おどろくべきなのは、じつは逆のほうです。英語は主語を省けない言葉なのに、ここ1か所だけ省ける。めずらしいのは Stand up. ではなく、ほかのすべての文で you や I を必ず書かなければならないことのほうだ ── そう考えると、この形の特別さがはっきりします。

主語がいないから、動きの言葉は裸のまま立つ

ここが、6年生で習う「動きの言葉につく s」とつながる大事なところです。

英語では、主語が自分でも相手でもない1人のとき、動きの言葉に s がつきます。He opens the door. の opens がそれです。この s は主語がちょうど1人だという印でした。

では、主語のないこの形ではどうなるでしょうか。1つ目の箱は空です。数える相手がいないのですから、数の印をつける理由もありません。だから動きの言葉は、なにもくっついていない、もとのままの形で立ちます。これを動詞の原形といいます。

○ Go straight.   まっすぐ行って。 × Goes straight.  (s をつける相手がいない) × Going straight. (ing は「今している最中」で、声かけではない)

道案内で出てくる Go straight. の go が、自己紹介で使う I go to school. の go とまったく同じ形をしているのは、そのためです。形が同じで役目だけがちがうので、読むときは文のいちばん前に「だれが」がいるかどうかを先に見ます。いなければ、それは自分に向けられた声かけです。

1つだけ気をつける言葉があります。「〜です」を表す am・is・are です。この3つはもともと be という1つの言葉が姿を変えたもので、もとの形は be でした。ですから、この形では be が顔を出します。

ようすを説明する文声かけの形意味
You are quiet.Be quiet.しずかにして。
You are careful.Be careful.気をつけて。
You are kind to him.Be kind to him.かれにやさしくして。

Are quiet. とは言いません。are は「主語が you のときの形」ですから、you が消えればいっしょに消えて、もとの be にもどります。Be quiet. の be を落として Quiet! とだけ言うこともありますが、それは日本語の「しずかに!」と同じで、文というより合図です。

please は前でも後ろでも置ける

この形は、言い方によってはきつく聞こえることがあります。やわらげたいときは please を足します。置く場所は2か所あります。

  1. 文の前に置く ── Please stand up.(コンマは要らない)
  2. 文の後ろに置く ── Stand up, please.(前にコンマを打つ)

意味は同じです。後ろに置くときだけコンマが必要なのは、文がいったん終わってから付けたしているからです。Stand up please. とコンマなしで書くと、そこが1つながりの文に見えてしまいます。

ただし、please をつければいつでもていねいになるわけではありません。友だちどうしの Try again.(もう1回やってみて)に please をつけると、かえってよそよそしくなります。道案内の Go straight. にも please は要りません。相手に手間をかけてもらうときに足す、と覚えておくと、ちょうどよい使い方になります。

「〜しないで」は、don't を借りてくる

やめてほしいことを伝えるときは、文の前に don't を置きます。

Run.     走って。 Don't run.  走らないで。

この don't は do と not がくっついたものです。「〜しない」と言うために do という助っ人を前に呼んでくるやり方は、6年生で習う He doesn't play soccer. と同じしくみです。ちがうのは、ここでは doesn't にならないこと。does は「主語が1人」の印でしたが、この形には数えるべき主語がいないので、相手がだれであっても don't のままです。

言いたいこと正しい形やりがちなまちがい
走らないでDon't run.Don't runs. / Doesn't run.
さわらないでDon't touch.Not touch.
うるさくしないでDon't be noisy.Don't noisy.
心配しないでDon't worry.Don't worried.

3つ目に注目してください。noisy は「うるさい」というようすの言葉で、動きの言葉ではありません。Be quiet. のときと同じで、ようすを言うには be が要ります。don't のうしろにはかならず動きの言葉か be が来る、と決めてしまうと迷いません。

町の中で見かける英語も、ほとんどがこの形です。Don't touch.(さわらないで)、Don't enter.(入らないで)、Don't feed the animals.(動物にえさをあげないで)。標識に主語がないのは、読んだ人みんなが「あなた」だからです。

Let's 〜 は命令ではない ── 自分も入っている

形が似ていて、よく取りちがえられるのが Let's 〜 です。

Play soccer.    サッカーをやって。  (やるのは相手だけ) Let's play soccer. サッカーをやろう。  (やるのは相手と自分)

Let's は Let us が短くなったもので、us は「わたしたち」です。つまり Let's の中には言った本人がすでに入っています。だから Let's 〜 は指示ではなく、さそいになります。

形やるのはだれ日本語
I play soccer.自分だけわたしはサッカーをします
Play soccer.相手だけサッカーをやって
Let's play soccer.相手と自分サッカーをやろう

答え方も、Yes/No でたずねられたときとはちがいます。さそわれたら Yes, let's.(そうしよう)や Sorry, I can't.(ごめん、できない)と返します。Yes, I do. とは言いません。相手は「するかどうか」をたずねたのではなく、いっしょにやろうと声をかけているからです。

教科書のどこに出てくるか

この形は、大きな単元として取り上げられないまま、あちこちに顔を出します。5年生・6年生の教科書で出会う場所をまとめておきます。

場面出てくる英語
教室での指示Stand up. / Sit down. / Open your book. / Look at me.
道案内Go straight. / Turn left. / Turn right.
ゲームやペア活動Take one card. / Ask your partner. / Don't look.
作り方の説明Cut the carrot. / Mix well. / Put it in the pan.
はげましの言葉Try again. / Don't worry. / Be careful.

どれも主語がありません。逆にいえば、主語のない英語を見かけたら、それは自分に向けられた声かけだと判断してよい、ということです。読むときの手がかりとして、とても役に立ちます。

つまずきやすいところ

この形でよく起きるまちがいは、原因ごとに分けると6つです。

1. you を足してしまう

「あなたに言うのだから you が要るはず」と考えて You stand up. と言ってしまう例です。文としては正しいのですが、意味が「あなたは立ちます」という説明に変わってしまいます。声かけにしたいなら you は消します。

2. 動きの言葉に s や ing をつけてしまう

Goes straight. / Going straight. のパターンです。s は主語が1人であることの印、ing は今その最中であることの印で、どちらもこの形とは関係ありません。裸の形が正解です。

3. be を落とす

Quiet. や Don't noisy. のように、ようすの言葉だけで済ませてしまう例です。ようすを伝えるときは Be quiet. / Don't be noisy. と be が要ります。

4. don't を doesn't にする

6年生で三人称の s を習った直後に増えます。数えるべき主語がいないので、この形の否定はいつでも don't です。

5. Let's を指示だと思う

Let's clean the classroom. と言われて、自分だけが掃除を始めてしまう例です。Let's には、言った本人も入っています。

6. 主語をさがして読めなくなる

Turn right. を見て「だれが曲がるの?」と考えこんでしまう例です。書き手はあなたに言っています。1つ目の箱が空の文を見たら、そこに自分を入れて読めば通じます。

やってみよう

Q1 You sit down. と Sit down. のちがいを説明してください。

A You sit down. は「あなたは座ります」という説明、Sit down. は「座って」という目の前の相手への声かけです。主語を消したこと自体が、声かけであるという合図になっています。

Q2 「まっすぐ行って」と言うとき、go・goes・going のどれを使いますか。

A go です。s は主語が1人だという印ですが、この形には主語がいないので印もつきません。Go straight. となります。

Q3 「うるさくしないで」を Don't noisy. と書いたら、どこを直しますか。

A Don't be noisy. と be を入れます。noisy はようすを表す言葉なので、動きの言葉のかわりに be が必要です。

Q4 Stand up, please. のコンマは、なぜ必要ですか。

A please を文の後ろに付けたしているからです。前に置く Please stand up. のときは、コンマは要りません。

Q5 Let's go to the park. と言われました。行けないとき、どう答えますか。

A Sorry, I can't. と答えます。さそいなので、行けるときは Yes, let's. です。Yes, I do. は質問への答え方なので、ここでは使いません。

まとめ

おうちの方へ

この形は、小学校の外国語では文法として教えられないまま、1年生のころから浴び続けている言い方です。Stand up. も Look at me. も、意味はフレーズとして丸ごと覚えています。そのため子どもは困っていないように見えますが、中学生になって自分で文を組み立てる段になると、急に手が止まります。「知っているのに作れない」が起きるのは、なぜ you がないのかを一度も考えたことがないからです。
ご家庭では、正しい形を覚えさせるより「この文、だれに言っているんだろうね」と聞いてあげてください。答えが「わたしに」であれば、主語が消える条件を子どもは自分の言葉で言い当てられます。
もう一点。「命令」という名前から、きつい言い方だと感じる子がいます。実際には Try again.(もう1回やってみよう)や Don't worry.(心配しないで)のような、やさしい声かけのほうが日常でははるかに多く使われます。名前のほうが中身より強いだけだと伝えておくと、使うことをためらわなくなります。
町なかの英語の標識や、外国のお菓子の箱に書かれた作り方も、ほとんどがこの形です。見かけたときに「主語がないね」と一言いっしょに気づくだけで、教科書の外にも同じきまりが生きていることが実感できます。