4年 社会 くらしを支える電気

1000Wの電子レンジより、100Wのテレビのほうが電気を使う ── 電気は強さではなく、強さ×時間で数えている

家の外の壁を見にいってください。小さな箱がついていて、だれも見ていないのに中の数字が少しずつ進んでいます。電力量計、いまのものならスマートメーターです。この箱は、家に入ってきた電気をずっと数えつづけています。ここで質問です。この箱は、いったい何を数えているのでしょうか。「電気の強さ」だと思った人は、あとで必ずつまずきます。箱が数えているのは強さではなく、強さに使った時間をかけたものです。たったそれだけのちがいですが、これを取りちがえていると、「1000Wの電子レンジは電気を食う」「100Wのテレビなんてたいしたことない」という、本当とは逆さまの見当ちがいが起きます。

教科書のどこに出てくるか

4年生の社会には「くらしを支える電気」という学習があります。発電所で電気がつくられ、送電線を通り、変電所で弱められて、家までとどく。この道すじは教科書にのっています。最後に「節電をしよう」という話も出てきます。

ところが、その節電の話でひとつだけ飛ばされているところがあります。使った電気の量を、だれが、どうやって数えているのかという部分です。量の数え方が分からないまま「節電しよう」と言われても、何をどれだけへらせばいいのかは決められません。

しかもこの数え方は、算数でならったかけ算がそのまま使えます。材料も家にそろっています。家電の裏にはってある小さなシールと、毎月ポストに入る紙が1枚あれば足ります。

この記事で使う道具

①家電のうしろや底についている銀色のシール(「消費電力 ○○W」と書いてある)②毎月ポストに入る「電気ご使用量のお知らせ」=検針票(「ご使用量 ○○kWh」と書いてある)③家の外の壁についている電力量計またはスマートメーター。三つとも買い足す必要がありません。

家の外に、正直な数え屋がいる

電力量計は、電気会社が「いくら請求するか」を決めるためにつけている機械です。昔のものは円ばんがくるくる回り、そのわきの数字が少しずつ進んでいきました。いまはスマートメーターという、液晶の画面に数字が出るものに取りかわりつつあります。

回転する円ばんを見たことがある人は、思い出してみてください。電子レンジを動かすと、円ばんの回り方が急に速くなります。ドライヤーをつけても同じです。反対に、家じゅうの明かりを消して冷蔵庫だけにすると、ゆっくりになります。

ここに、この記事でいちばん大事なことが全部入っています。円ばんの速さと、円ばんが何回まわったかは、別のものだということです。

円ばんの「速さ」   → いま、どれだけ強く使っているか 円ばんの「回った数」 → 今月ぜんぶで、どれだけ使ったか 電気会社が請求のもとにしているのは、下のほう。

速く回っても、すぐ止めれば回った数はわずかです。ゆっくりでも、一日じゅう回っていれば数はたまります。円ばんは、この当たり前のことを正直にやっているだけの機械です。

Wは蛇口のひねり方、Whはバケツにたまった水

家電のシールに書いてある「○○W」は、ワットと読みます。これが円ばんの速さにあたるもので、いま、どれだけいきおいよく電気を使っているかを表します。

いっぽう検針票の「○○kWh」のほうは、キロワットアワーと読みます。こちらが円ばんの回った数で、ぜんぶでどれだけたまったかです。

水道の蛇口で考えると、はっきりします。

 蛇口をどれだけひねったか → W(ワット)  そのまま何時間出したか  → h(時間)  ────────────────────────  バケツにたまった水の量  → Wh(ワットアワー)       W × h = Wh

蛇口をめいっぱいひねっても、1秒で閉めればコップ1ぱいぶんしかたまりません。ほそーく出したままにしておけば、朝にはバケツがあふれています。たまる量を決めているのは、ひねり方だけではなく、ひねり方と時間のかけ算です。

Wと Wh は、たった1文字しかちがいません。それなのに意味はまったく別で、しかも家電のシールには W、検針票には kWh と、いつもばらばらに出てきます。ここが混ざるせいで、大人でも「うちの電気代がなぜ高いのか分からない」ということが起きています。

1000Wの電子レンジより、100Wのテレビのほうが多い

では、題名のことを実際に計算してみます。数を決めておきます。電子レンジは1000W、テレビは100W。使い方は、レンジが1日10分、テレビが1日5時間とします。どちらもありそうな使い方です。

【電子レンジ】1000W を 1日10分  10分は何時間か → 10 ÷ 60 = 6分の1時間  1000 × 6分の1 = 約167Wh(1日ぶん)  167 × 30 = 約5000Wh = 5kWh(1か月ぶん) 【テレビ】100W を 1日5時間  100 × 5 = 500Wh(1日ぶん)  500 × 30 = 15000Wh = 15kWh(1か月ぶん)

強さは、レンジがテレビの10倍です。それなのに1か月でたまった量は、テレビのほうが3倍多いという結果になりました。逆転しています。

理由は時間のところにあります。レンジが動いているのは1日10分で、1か月ぜんぶ足しても5時間ぶんです。テレビは1日5時間ですから、1か月では150時間になります。強さで10倍まけていても、時間で30倍かっていれば、かけ算の答えはひっくり返ります。

ここから、家の中の電気について役に立つ見方が出てきます。短い時間しか動かさない機械は、強くても合計ではたいしたことがない。長くついている機械は、弱くても積み上がる。ドライヤーや電子レンジより、照明やテレビや冷蔵庫のほうが、ふだんは効いているということです。

kの正体は、算数でならったあの階段

検針票に出てくるのは Wh ではなく kWh でした。この k は、6年生の算数でならう「量の単位のしくみ」に出てくるキロと、まったく同じものです。

1kg = 1000g 1km = 1000m 1kL = 1000L 1kWh = 1000Wh ← 同じ階段の、同じ段

なぜ Wh のままにしないのかというと、家1けんが1か月に使う量が大きすぎるからです。ふつうの家庭で1か月に250kWhくらい使います。Wh で書くと250000Wh。ゼロが多すぎて読みまちがえます。g をやめて kg で書くのと、まったく同じ理由です。

1kWh がどれくらいかを、体でつかんでおきましょう。

1kWh = 1000Wh でできること  1000W の機械(電子レンジ)を  1時間   100W の機械(テレビ)を   10時間    8W の機械(LED電球)を  125時間(5日以上)

三つとも同じ1kWh です。使い切るのにかかる時間がぜんぜんちがうだけで、電力量計から見ればまったく同じ1めもりぶんになります。

家じゅうの機械を、同じものさしで並べる

W と時間さえ分かれば、台所のものもリビングのものも、ぜんぶ同じものさしの上に並べられます。1kWh のねだんは住んでいる地域と契約によってちがうのですが、この記事では計算しやすいように1kWh=30円としておきます。本当の数字は検針票に書いてあるので、あとで自分の家のもので計算しなおしてください。

機械強さのめやす1日に使う時間1か月(30日)30円/kWhなら
LED電球8W5時間1.2kWh36円
白熱電球54W5時間8.1kWh243円
ドライヤー1200W5分3kWh90円
電子レンジ1000W10分5kWh150円
テレビ100W5時間15kWh450円
こたつ(中)300W5時間45kWh1350円
エアコン(冷房)600W8時間144kWh4320円

この表を上から下へ見ていくと、強さの列はばらばらな順番になっているのに、右はしの金額はきれいに増えていきます。並びを決めているのは W の列ではなく、W と時間をかけた結果のほうだということが、目で見て分かります。

とくにおどろくのは、1200W のドライヤーが表のいちばん安い側にいて、300W のこたつがその15倍になっているところです。ドライヤーの強さはこたつの4倍ですが、動かしている時間が60分の1しかありません。

正直に書いておくこと

ここまで「W × 時間」で計算してきましたが、これがそのまま当たらない場合があります。かくさずに2つ書いておきます。

その1 強さがずっと同じではない機械がある

エアコンと冷蔵庫は、つけている間じゅう同じ W を使いつづけているわけではありません。部屋や庫内が目あての温度に近づくと、自分で弱くなります。この仕組みをインバーターといいます。動かしはじめがいちばん強く、あとは弱くなったり強くなったりをくりかえします。

ですから、さっきの表のエアコンの行はいちばんあらいめやすでしかありません。本当の量を知りたいときは、カタログにのっている「期間消費電力量」という数字を見ます。1年間ぶんの kWh が書いてあって、メーカーが決まったやり方で測ったものです。W×時間では出せないからこそ、わざわざこの表示が用意されている、と考えると分かりやすくなります。

その2 請求される金額は、使った量×単価ではない

「15kWh 使ったから 15×30 で450円」と出しましたが、実際に請求される金額はこのかけ算だけでは決まりません。すくなくとも次のものが乗ってきます。

名前どういうものか
基本料金1kWhも使わなくてもかかる、つないでおくためのお金
段階制の単価使う量が増えると、1kWhあたりのねだんが上がる仕組み
燃料費調整額石炭やガスの値段の上がり下がりを、毎月反映させる分
再エネ賦課金太陽光や風力を広げるために、みんなで少しずつ出す分

ですから、この記事の計算で出るのは請求書の金額ではなく、機械どうしを比べるための目安です。それでも十分に役に立ちます。どれをへらせばよく効くのかは、この目安だけで決められるからです。

つまずきやすいところ

その1 WとWhを同じものだと思ってしまう

「1000Wも使ってるの」という言い方をよく聞きますが、この文だけでは量は決まっていません。1秒なのか3時間なのかが書かれていないからです。Wは、写真でいえばシャッターを切った一瞬。Whは、動画でいえば最初から最後までの長さぶんです。シールに W と書いてあったら「いまの強さ」、検針票に kWh と書いてあったら「合計」と、置きかえて読むくせをつけると混ざりません。

その2 強い機械ほど電気を食う、と決めてしまう

これは大人でもやります。ドライヤーやアイロンのように、使うとブレーカーが落ちそうになる機械は、たしかに W が大きいものです。ただしブレーカーが気にしているのは「同時にどれだけ強く使っているか」であって、月ぜんぶの合計ではありません。ブレーカーが見ているのは W、電力量計が見ているのは Wh。家の中に、ちがうものを見ている機械が2つある、と整理してください。

その3 スイッチを切れば0になると思ってしまう

リモコンで消したテレビ、コンセントにさしたままの充電器、時計が光っている炊飯器。これらはスイッチが切れているように見えて、じつは少しだけ電気を使いつづけています。これを待機電力といいます。1台では1Wや2Wでも、24時間365日ずっと、という時間の長さがかけ算のもう一方にかかってきます。1Wでも1年つけっぱなしなら 1×24×365 で8760Wh、およそ8.8kWh です。待機電力が「こまめにコンセントを抜こう」という形で話題になるのは、強さが大きいからではなく時間が長いからです。

やってみよう

Q1 40Wの扇風機を3時間まわしました。使った電気の量は何Whでしょう。

A 120Whです。40×3=120。Wと時間をそのままかけるだけで出ます。Whの「h」は時間のことなので、かける数の単位が時間になっているかどうかだけ気をつけてください。

Q2 1200Wのドライヤーを5分使いました。何Whでしょう。Q1の扇風機と、どちらが多いでしょう。

A 100Whで、扇風機(120Wh)のほうが多くなります。5分は 5÷60=12分の1時間なので、1200÷12=100。強さはドライヤーが30倍ですが、時間が36分の1です。5分だけなら、扇風機を3時間まわすより少なくてすむ、ということになります。

Q3 8WのLED電球を毎日5時間、30日つけました。何kWhでしょう。1kWh=30円とすると何円ぶんでしょう。

A 1.2kWh・36円です。8×5=40Wh が1日ぶん。40×30=1200Wh が1か月ぶん。1200Wh は 1200÷1000 で 1.2kWh。1.2×30=36円。Wh から kWh に直すところで1000でわるのを忘れるのが、いちばん多いまちがいです。

Q4 同じ使い方を、むかしの54Wの白熱電球でしたらどうなるでしょう。LEDとの差は何kWh、何円でしょう。

A 8.1kWh・243円になり、差は6.9kWh・207円です。54×5=270Wh、270×30=8100Wh=8.1kWh、8.1×30=243円。電球1つを取りかえるだけで、月に200円ちかく変わります。家じゅうに10個あれば、その10倍が毎月です。LEDが広まった理由は、まぶしさでも色でもなく、この引き算のほうでした。

Q5 「うちはエアコンを使わないから安いはず」と思っていたのに、冬の電気代が高くなりました。調べると、300Wのこたつを1日5時間、30日つけていました。何kWhでしょう。この記事に出た電子レンジの1か月ぶんの、何倍でしょう。

A 45kWhで、電子レンジ(5kWh)の9倍です。300×5=1500Wh、1500×30=45000Wh=45kWh。30円なら1350円になります。エアコンをがまんしても、その代わりに弱い暖房を長い時間つけていたら、合計は減らないことがあります。へらすかどうかを決めるときに見るのは、強さではなく、強さと時間をかけたあとの数です。

Q6 自分の家の検針票をさがして、先月の「ご使用量」が何kWhだったかを書き出してみましょう。そして、家の中でいちばん長い時間ついている機械はどれか、Wのシールをさがして調べてみましょう。

A これは家ごとに答えがちがうので、正解は用意できません。ひとつだけ目安を書いておくと、ふつうの家庭で1か月250kWh前後です。自分の家の数がこれより大きいか小さいか、そのうえで「いちばん長くついている機械」の W に24時間や10時間をかけたものが、その合計のどれくらいを占めているかを見てください。W のシールをさがしに家の中を歩きまわった時間が、この記事でいちばん学びになる部分です。数字は変わりますが、さがし方は変わりません。

Q1とQ2は、かけ算をするときに時間の単位をそろえる練習でした。Q3とQ4は、同じ使い方でも機械がちがえば量がちがうこと。Q5は「強い機械ほど電気を食う」という思いこみが、実際の数字でくずれるところ。Q6は、目安ではなく自分の家の本当の数です。6問とも、やっていることは W と時間をかけて、1000でわる、それだけです。

まとめ

おうちの方へ

4年生の社会「くらしを支える電気」は、発電所から家庭までの経路と、節電の心がけまでを扱います。ただ、使用量の数え方そのものは学習内容に含まれていません。W と Wh の区別は中学の理科(電力と電力量)で出てきますが、検針票と家電のシールは今日から目に入っているものです。
ご家庭で効くのは、検針票を1枚、子どもに渡してしまうことです。「ご使用量○○kWh」という行を指でさして、「この数は、何をどれだけの時間使ったかの合計なんだよ」と言うだけで、記事のいちばんの芯は伝わります。あとは家電の裏のシールをさがす遊びにすれば、かけ算の練習がそのまま家の見取り図になります。
金額の計算については、1kWhあたりの単価を記事では30円として扱いました。これは計算を追いやすくするための仮の数で、実際の単価は地域・契約・時間帯によって変わります。請求書の総額と一致しないのは当然なので、「合わないのはなぜか」を親子で追いかける材料としてお使いください。基本料金や燃料費調整額の行を見つけられれば、それ自体が社会科の学習になります。
なお、この記事では電力(W)がどうやって決まるのか、つまり電圧と電流のかけ算には踏みこんでいません。そこは中学理科の範囲で、ここで持ち出すとかけ算が二重になって、かえって混乱します。今回は「シールに書いてある数を、そのまま使う」ところまでにとどめました。