地図帳は4年生のはじめに配られます。ところが「使い方」を教わる時間はほとんどありません。その結果、机の中に入れたまま、開くのは先生が「〇〇ページを見て」と言ったときだけ、という子がとても多いのです。
教科書は前から順に読む本です。物語も説明文も、そういう作りになっています。だから多くの子は、地図帳も同じように「開いてながめる本」だと思っています。
でも地図帳は、国語辞典に近い作りをしています。知りたい言葉があって、それを引くための本です。前から順に読む人はいませんし、全部のページを見る必要もありません。
ここを取りちがえていると、いつまでたっても地図帳が使えるようになりません。「どこにあるんだろう」と思ったときに、ページをぱらぱらめくって目でさがしてしまうからです。日本の地図だけで何十ページもあるので、目でさがす方法では見つからないか、見つかっても時間がかかりすぎます。
逆に、引き方さえ分かってしまえば、聞いたことのない地名でも数十秒で場所を出せます。この記事では、その引き方を順番に説明します。
地図帳のいちばん後ろにはさくいんがあります。地名が五十音順にならんでいて、こんな形で書かれています。
ここで多くの子がつまずきます。「81」がページ番号なのは分かるのですが、そのあとの「B4」の意味が分からず、81ページを開いてから、また目でさがしてしまうのです。
B4は、そのページの中のどこかを指す住所です。地図帳のページのふちを見てください。上か下のふちに A B C D … というアルファベット、右か左のふちに 1 2 3 4 … という数字が書いてあります。
アルファベットは横の位置、数字はたての位置を表します。つまりB4なら、Bの列と4の行が交わったところ。指を2本使って、上のふちのBに1本、横のふちの4に1本置き、まっすぐ動かしてぶつかったところがその場所です。
| さくいんの表示 | 意味 | すること |
|---|---|---|
| 81 | ページ番号 | そのページを開く |
| B | 横の位置(上下のふちの文字) | Bの列に指を置く |
| 4 | たての位置(左右のふちの数字) | 4の行に指を置く |
この方法だと、さがす範囲がページ全体の何十分の一かになります。目でさがすのとは、かかる時間がまるでちがいます。
なお、同じ地名が2か所以上に出てくることがあります。日本地図のページと、その地方をくわしく見せたページの両方にのっているためです。くわしく知りたいときは数字の大きいほう(あとのページ)を見ると、たいてい大きく描かれています。
目的のページが開けたら、いきなり地名をさがし始めないでください。地図には作った人が決めた約束ごとがあり、それを先に読まないと、地図から読み取ったことがまちがいになります。確かめるのは次の3つです。
地図はふつう上が北です。ページのすみに方位記号(矢印に「北」や「N」がついた印)がのっています。上が北なら、下が南、右が東、左が西です。
「川はどちらへ流れているか」「その町は県のどのあたりか」を答えるときは、この方位を使います。ふだんの生活で使う「右上のほう」という言い方は、社会科の答えとしては通じません。北東のように方位で言いかえる練習をしておきます。
縮尺は、実際の長さを何分の1にちぢめてあるかを表します。ページのすみに、ものさしのような線と「0 10 20km」といった数字がついたスケールバーがあります。
ここを見ずに地図を見ると、大きなまちがいが起きます。となりのページに変わったとたん縮尺も変わるので、同じ1cmでも意味がちがうからです。
「地図の上で近いから、実際も近い」とは言えません。きょりを聞かれたら、必ずスケールバーで確かめます。
凡例は、この地図で使っている記号の意味を書いた表です。「くだものの絵=果じゅ園」「工場の記号=工業のさかんな場所」というように、地図によって使う記号が変わります。
とくに産業のページでは、記号を読みまちがえると答えがまるごとひっくり返ります。地図記号は、地図の中ではなく凡例で意味を確かめてから読むのが正しい順番です。
地図帳には何種類ものページがあります。知りたいことによって、開くべきページがちがいます。ここを知らないと、地形のページで産業をさがすような、見つからない探し方をしてしまいます。
| 知りたいこと | 開くページ | 手がかりになるもの |
|---|---|---|
| その町がどこにあるか | その地方のページ | さくいん → ページと記号 |
| 山・川・平野の名前 | 地形のページ | 色(緑=低い/茶=高い) |
| 何を作っている土地か | 産業のページ | 凡例の記号 |
| 人がどこに多いか | 人口のページ | 点や色のこさ |
| ほかの国との位置関係 | 世界のページ | 方位と大陸の形 |
地形のページの色は、多くの地図帳で共通です。緑がひくい土地、黄色から茶色になるほど高い土地を表します。緑の広がっているところが平野で、そこに人が集まり、田や畑が広がります。色を見るだけで、その県の性格がだいたい分かります。
土地の高さをさらにくわしく読みたくなったら、等高線という線の読み方があります。それは「地形図の読み方」であつかっているので、地図帳の色で足りなくなったときに進んでください。
使い方が分かっても、引く回数が少なければ身につきません。おすすめは、1日に1つだけ地名を引くことです。1つでいいので、毎日やります。
④の印が大事です。書きこみをためらう人がいますが、地図帳は書きこんでいいノートです。引いた地名に印がたまっていくと、自分がどれだけ引いたかが目に見えます。同じ地名を2回引いたときも、印があれば「前に調べた」と気づけます。
この習慣を続けると、5年生で日本の産業を学ぶときにはっきり差が出ます。地名が出てくるたびに位置が思い浮かぶ子と、字面だけ覚える子とでは、覚える量そのものが変わってくるからです。
いちばん多いつまずきです。見つからないまま時間が過ぎ、「地図帳はきらい」になってしまいます。地名をさがすときは、必ず後ろのさくいんから始めると決めてしまうのが確実です。ページをめくって目でさがしていいのは、場所がだいたい分かっているときだけです。
「AとBはどちらが遠いか」という問題で、ちがうページの地図を見くらべて答えてしまう例です。ページが変われば縮尺も変わるので、見た目のはなれ方はくらべられません。同じページの中でくらべるか、スケールバーでkmに直してからくらべます。
緑を「森」、青を「海」と決めつけて読んでしまう例です。地形のページの緑は低い土地であって森ではありませんし、産業のページの色は全然ちがう意味かもしれません。色の意味は毎回、凡例で確かめるものだと考えてください。
Q1 さくいんに「52 C3」と書いてありました。何をすればよいですか。
A 52ページを開き、ふちのCの列と3の行に指を1本ずつ置いて、まっすぐ動かして交わったところを見ます。ページを開いてから目でさがす必要はありません。
Q2 地図を開いたとき、地名をさがす前に確かめる3つは何ですか。
A 方位、縮尺、凡例です。この3つが地図の約束ごとで、確かめずに読むと読み取った内容がまちがいになります。
Q3 スケールバーで1cmが20kmのページで、2つの町が4cmはなれています。実際は何kmですか。
A 20×4=80なので、およそ80kmです。地図の上のcmを、スケールバーの数字でかけ算すれば実際のきょりになります。
Q4 同じ地名がさくいんに2か所のっているのはなぜですか。
A 日本ぜんたいのページと、その地方をくわしく見せたページの両方にのっているからです。くわしく見たいときは、あとのほうのページを開きます。
Q5 地形のページで、緑色に広がっている場所はどんな土地ですか。
A 高さのひくい土地、つまり平野です。森という意味ではありません。平野には人が集まり、田や畑が広がっていることが多くなります。
地図帳は、学校で使い方をていねいに教える時間がとりにくい教材です。配られてはいるものの、引き方を知らないまま6年生になる子は珍しくありません。ここは家庭で補うと効果が大きい部分です。
やっていただきたいのは1つだけで、会話に出た地名を「地図帳で引いてみて」と言うことです。旅行先、テレビに出た町、野菜の産地の表示。内容の説明はいりません。引いて場所を見せてもらうところまでで十分です。
そのとき、書きこみを止めないであげてください。印や色が増えた地図帳は、使いこまれた分だけ本人の記録になります。きれいなまま6年間終わる地図帳より、ずっと価値があります。
もう1つ、引くのが早い子と遅い子の差は、さくいんを使うかどうかだけで決まります。もし目でさがしている様子なら、いちど後ろのさくいんを一緒に開いて、ページ番号と記号の読み方を確かめてみてください。10分で身につき、その後6年間使えます。