テストが返ってきたとき、いちばん大事な情報が書いてあるのは点数のところではありません。×のついた問題のところです。ところが多くの人は、点数を三秒見て、そのままランドセルにしまいます。
テストの本当の役目は、点数をつけることではありません。自分が今どこまで分かっていて、どこから分かっていないかを教えてくれることです。
ふだんの勉強では、これがなかなか分かりません。教科書を読んでいるときは、たいてい「分かった気」がしています。ドリルも、そのページの単元をやっている最中なので「今はわり算の時間だ」と分かった状態で解いています。
ところがテストは、単元の名前を教えてくれないままいろいろな問題を並べてきます。だから、本当に分かっているかどうかが、そこではじめて表に出ます。テストは、自分の学力をうつす鏡なのです。
その鏡を三秒で片づけてしまうのは、もったいない話です。まちがえた問題は、あなたが次に伸びる場所を、わざわざ赤くしるしをつけて教えてくれています。
テスト直しにかかる時間は、ふつう10分から15分です。テストを受けるのに45分かかったことを考えれば、とても短い追加です。そして、この10分がいちばん点数を上げます。
ここがこの記事のいちばん大事なところです。×は、全部同じ×ではありません。三つの種類があり、直し方がまったくちがいます。
| 種類 | どんなまちがいか | 直し方 |
|---|---|---|
| A わかっていない | やり方そのものを知らない・思い出せない | 教科書にもどって、もう一度習う |
| B 読みちがえた | やり方は知っているが、問題文の意味を取りちがえた | 問題文の読み方を練習する |
| C うっかり | やり方も意味も合っていたのに、書きまちがえた | くり返さないしくみを作る |
これを分けずに「全部もう一回解いてみなさい」とやると、うまくいきません。Aの問題をもう一度解いても、やり方を知らないのだから、また同じところで止まるだけです。逆にCの問題をもう一度解くと、今度は正解してしまうので「まぐれだった、もう大丈夫」で終わってしまいます。
だから、直す前に分けるのです。順番はこうです。
×のついた問題を見て、こう聞きます。
「今、答えを見ないで、この問題をもう一度やれる?」
ここで「やり方が思い出せない」ならAです。「あ、そういうことか、分かった」ならBです。「あ、6と書くところを5と書いてる」ならCです。
この質問は三秒で終わります。長く考えこむ必要はありません。迷ったらAにしておくと安全です。
いちばん多い失敗が、本当はAなのに「うっかりだった」で片づけてしまうことです。「計算ミス」という言葉は便利すぎて、あらゆるまちがいを飲みこんでしまいます。
たとえば 324÷6 のひっ算で答えが合わなかったとき。「うっかり」に見えても、実は商を立てる位置が分かっていなかった、ということがよくあります。位置の決め方はわり算のひっ算で確かめられます。
見分け方は簡単です。同じまちがいが二回以上出ていたら、それはうっかりではありません。前のテストの直しを取ってあるなら、並べてみるとすぐ分かります。
いちばんやってはいけないのが、赤ペンで正しい答えを写して終わることです。テスト直しのノートはきれいになりますが、次に同じ問題が出たら、また×になります。写す作業は、手は動いていても、頭は動いていないからです。
Aの直し方はこうです。
ポイントは4番です。教科書を見ながら解けても、直したことにはなりません。とじてから解けて、はじめて自分のものになります。
そして、直せたら余白に一言だけ書きます。「わる数より小さいときは商に0を立てる」のように、自分の言葉で書くのが大事です。教科書の文をそのまま写すと、書いた本人にも意味が分からない一行になります。
Bは、計算はできているのに答えが合わないタイプです。文章題で多く出ます。
「1本80円のジュースを7本買って、1000円出しました。おつりはいくらですか。」
80×7=560 と正しく計算したのに、答えを560円と書いてしまう。──これがBです。かけ算は合っています。最後の一文を読んでいないだけです。
直し方は、解き直しではなく読み直しです。問題文の「聞かれていること」に線を引きます。この場合は「おつりはいくらですか」に線を引けば、1000−560 が残っていることに自分で気づけます。
Bが多い人は、計算の練習をしても減りません。減らすのは、次の三つの習慣です。
単位を書く習慣は、それ自体がまちがい発見の道具になります。「7人」と答えるべきところに「56円」と書いてあれば、単位を書いた時点で自分でおかしいと気づけるからです。
Cは「気をつける」では減りません。気をつけようと思ってできるなら、最初からできています。減らすには、気をつけなくても防げるしくみを作ります。
| よくあるC | しくみ |
|---|---|
| くり上がりを足し忘れる | くり上がりの1を、必ず上に小さく書く |
| 位がずれる | ひっ算はマス目のあるノートに書く |
| 答えを写しまちがえる | 答えを書いたら、問題の数字と見くらべる |
| +と×を見まちがえる | 式を書く前に、記号に○をつける |
| 最後の1問が空らん | 最初に問題数をかぞえておく |
もう一つ強力なのが、答えがだいたい合っているかを見る方法です。298×4 の答えが 1192 になったとき、300×4=1200 に近いので合っていそうだと分かります。もし 292 のような答えが出ていたら、その場でおかしいと気づけます。この見当のつけ方はおよその数でくわしく扱っています。
計算の順序を思いちがえて起きるまちがいも、Cに見えてAであることが多い代表例です。計算のきまりを一度確かめておくと、かっこと×÷の順番でつまずかなくなります。
テスト直しが終わったら、テストの余白か直しノートのすみに、一行だけ書いておきます。
ここに書くのは、いちばん多かった種類についての一行です。三つも四つも書くと、次のテストのとき全部わすれます。一行だから守れます。
そして次のテストが返ってきたら、まずその一行を読み返してから直しを始めます。これをくり返すと、自分がどの種類のまちがいをしやすい人なのかが、はっきり見えてきます。Aが多い人とCが多い人では、これからやるべき勉強がまったくちがいます。
いちばん多いのがこれです。点数がよくないときほど見たくないので、しまいたくなります。でも、点数が低いテストほど、直したときに上がる幅が大きいのです。見るのは点数ではなく×の場所、と決めてしまうと少し楽になります。
写す作業は5分で終わりますが、5分ぶんの効果しかありません。答えをかくしてから解き直すと10分かかりますが、次のテストで同じ問題が出たときに解けます。
×が15個あると、直しそのものがいやになります。まずA・B・Cに分けて、Aだけを直すと決めればよいのです。BとCは書き足すだけなので、そんなに時間はかかりません。全部やろうとして何もやらないより、ずっとよい結果になります。
Q1 「1こ35円のあめを8こ買います。代金はいくらですか」に、280 とだけ書いて×でした。これはA・B・Cのどれですか。
A Cに近いBです。35×8=280 の計算は合っているので、やり方は分かっています。落としたのは単位の「円」です。答えに単位を書く習慣をつければ防げます。
Q2 わり算のひっ算で、答えが3けたになるはずのところが2けたになっていました。前のテストでも同じことが起きています。これはどれですか。
A Aです。二回続いているので、うっかりではありません。商を立てる位置の決め方を、教科書にもどって習い直す必要があります。
Q3 テスト直しで、まず最初にすることは何ですか。
A 解き直すことではなく、×にA・B・Cの記号を書いて分けることです。分けないと、直し方が決まりません。
Q4 ×が15個ありました。時間は10分しかありません。どれから直しますか。
A Aの問題からです。Aは放っておくと次も必ずまちがえます。BとCは、線を引く・一言書くだけなので後まわしでも間に合います。
テストが返ってきた日に、最初に出る言葉が「何点だった?」だと、子どもは点数のほうを見る習慣がつきます。「どこをまちがえた?」に変えるだけで、見る場所が変わります。
そのうえで、まちがいをA・B・Cに分ける作業は、はじめのうちは横で一緒にやってあげてください。分類そのものが、実は大人でも少し難しい判断だからです。とくに「うっかり」で片づけられているものの中に、本当は理解の穴が混ざっていないかは、大人のほうが見つけやすいところです。
直しの量は欲張らないでください。×が多い日に全部直させようとすると、テスト直しそのものが罰になり、次からテストを見せなくなります。Aを一つ直せたら十分、くらいで構いません。
この「分けてから直す」考え方は、算数にかぎった技ではありません。漢字テストでも、中学以降の勉強でも、仕事の失敗でも同じです。原因のちがうものを一緒くたに反省しても改善しない、というのは、そのまま大人に通じる話です。