差で比べるか、倍で比べるか。比べ方の第二の目を育てる単元です。
次の問題を考えてみてください。
2つの答えが考えられます。
どちらも正しい見方です。でも、感じ方はちがいます。
100円が300円になったら「3倍だ!」と驚きます。500円が700円なら「少し上がったな」程度でしょう。同じ200円でも、もとの大きさによって受ける印象がちがうのです。
この「倍で比べる」という見方が、4年生の新しい武器です。
「何倍か」を求めるには、わり算を使います。
ここでいちばん大事なのが、どちらが「もとにする量」かを見分けることです。
日本語の文では、「〜の」の前が基準になります。この読み取りができれば、式は自然に決まります。
同じ2本のテープでも、どちらを基準にするかで答えがちがいます。ここが混乱しやすいところです。
問題文を読んだら、まず「〜の」を探して丸で囲む習慣をつけましょう。
「青の何倍」→ 青が基準
「もとの値段の何倍」→ もとの値段が基準
基準の量がわる数になります。
迷ったら、図に線分(テープ図)をかいて確かめます。基準を1として、もう一方が何個分かを見るのです。
逆に、基準のほうが分からない問題もあります。
基準は青。青が分からないので、わり算で戻します。
この関係を整理すると、3つのパターンになります。
3つとも同じ関係を、角度を変えて見ているだけです。「もとにする量 × 何倍 = くらべる量」という1本の式から、すべて導けます。
この形は、5年生の割合で「くらべる量 = もとにする量 × 割合」として再登場します。4年生でここを固めておくと、5年生が楽になります。
4年生では、倍が整数とは限らないことも学びます。
「1.5倍」と言われてもピンとこないかもしれません。図で考えてみましょう。
1つ分と半分で1.5倍。「倍」は整数の個数だけでなく、半端も表せるのです。
さらに、1より小さい倍もあります。
「0.6倍」は、もとより小さくなるということです。「倍」という言葉から「増える」イメージを持ちがちですが、そうとは限りません。
ここは4年生にとって大きなハードルです。倍=増える、ではない。1より大きい倍なら増え、1より小さい倍なら減る。この理解が5年生の割合につながります。
「倍で比べる」見方は、生活のあちこちで使われています。
とくにニュースでは、「〜%増」「〜倍」という表現がよく出てきます。これは倍の見方そのものです。
そして、差と倍のどちらで語るかで印象が変わることにも注意が必要です。
数字を見たら、差と倍の両方で考えてみる。これができると、情報にだまされにくくなります。
倍の問題を確実に解くには、テープ図(線分図)が役立ちます。
図をかくと、かけ算かわり算かが一目で分かります。基準の長さが分かっていて、その何個分かを求めるならかけ算です。
逆のパターンも見てみましょう。
全体が分かっていて、その1つ分を求めるならわり算。図があれば、式で迷いません。
テープ図をかくときのコツは、基準になるほうを先にかくことです。そして、その長さを1つ分として、もう一方を並べます。
この図は5年生の割合、6年生の比でもずっと使います。4年生のうちにかき慣れておくと、あとの学年で大きな差になります。
「AはBの何倍」でB÷Aとしてしまう。
「〜の」の前が基準で、それがわる数です。問題文の「の」に印をつける習慣をつけましょう。
0.6倍を「増えた」と思ってしまう。
1を境に考えます。1より大きければ増え、1より小さければ減る。テープ図で長さを比べると視覚的に分かります。
「何倍」を聞かれてひき算をしてしまう。
「何倍」はわり算、「いくつ多い」はひき算。問われている言葉を確認してから式を作ります。
Q1 「AはBの何倍」の式はどうなりますか。
A A ÷ B。「の」の前のBが基準で、わる数になります。
Q2 24cmは6cmの何倍ですか。
A 24 ÷ 6 = 4倍です。
Q3 0.5倍とはどういう意味ですか。
A もとの半分。1より小さい倍なので、もとより小さくなります。
Q4 50円が100円になるのと、500円が600円になるの、どちらの値上がりが大きいですか。
A 差はどちらも変わりますが、倍で見ると2倍と1.2倍。倍で見れば前者が大きい変化です。
この単元は、5年生の「割合」の準備として位置づけられています。割合は小学校算数最大の難所ですが、その原因の多くは「もとにする量が分からない」ことにあります。4年生のうちに、基準を見分ける力を育てておくことが大切です。
「〜の何倍」の「の」に注目させる指導は、非常に効果的です。国語的な読み取りですが、算数の式を決める決定的な手がかりになります。
テープ図(線分図)をかく習慣も、ぜひつけさせてください。基準を1本の線で表し、比べる量がその何個分かを見る。図があれば、式を間違えにくくなります。
ニュースの「○倍」「○%増」は、生きた教材です。「もとはいくつだったの?」と一緒に考えてみてください。