4年生の理科で星の勉強が始まると、多くの学校で星座早見が配られます。ところが、回し方や外での向け方をていねいに教わる時間はほとんどありません。結果として、円い紙が2枚重なった道具のまま、引き出しの奥で眠っていることがとても多いのです。
星座早見を、星の名前がのっている図かんのようなものだと思っている子がいます。それだと、開いてもどう使えばよいのか分かりません。星の名前を知りたいだけなら、本のほうがくわしく書いてあるからです。
星座早見がほかの本とちがうのは、「今夜、自分の家の上に、どの星がどこに見えるか」だけを取り出して見せてくれる点です。空にある星は一年を通してたくさんありますが、今この時間に見えているのはその一部だけ。しかも、時間がたてば位置が変わります。
この「今だけ・ここだけ」を切り出す仕事をしているのが、上の円い紙にあいたまどです。まどの形は、地面に立って空を見上げたときに見える範囲そのものを表しています。まどの外にかくれている星は、今は地平線の下にあって見えない星ということです。
つまり星座早見は、調べるための本ではなく、その日その時刻の空を紙の上に作り出す道具です。ここが分かると、なぜ日づけと時こくを合わせる必要があるのかも自然に分かります。
使い方の中心は、たった1つの操作です。下の円のふちにある日づけの目もりと、上の円のふちにある時こくの目もりを重ねる。これだけで、その瞬間の空が完成します。
初めて使うときは、日づけと時こくのどちらの目もりがどちらの円にあるかを確かめるところから始めてください。作った会社によって配置が少しちがうことがありますが、片方が日づけ・片方が時こくという点は共通です。
合わせたら、そのまま持ち上げて空とくらべます。回した後にうっかりずらしてしまうと、まったくちがう時刻の空を見ていることになるので、外に出るときはふちを軽くおさえて持ちます。
もう1つ覚えておくと便利なのが、回す向きと時間の進み方です。目もりを1時間分進めると、まどの中の星は少しだけ動きます。同じ星を1時間ごとに追いかけたいときは、実際に外で待たなくても、手元で回して「1時間後にはこのあたりに来る」と予想できます。これは星座早見のいちばん面白い使い方で、星は動くけれどならび方は変わらない、という決まりを手を動かして確かめられます。
星座早見を見て、いちばん多くの子が引っかかるのがここです。ふちに書いてある方位が、北を上にすると、東が左・西が右になっています。社会科で使う地図とは東西が反対です。
まちがいではありません。理由は、見ている向きがちがうからです。
| 地図 | 星座早見 | |
|---|---|---|
| 何を写したものか | 地面 | 空 |
| どこから見ているか | 空の上から見下ろす | 地面から見上げる |
| 北を上にしたとき | 東は右 | 東は左 |
紙に書いた地図を頭の上にかざして、下から見上げてみてください。左右が入れかわります。星座早見は最初からその「見上げた形」で印刷してあるので、そのまま頭の上にかざせば空と重なるようになっているのです。
ですから、星座早見は机の上に置いて見るものではありません。持ち上げて、頭の上にかざして使うのが正しい姿です。ここを知らずに机で見ていると、東西が反対のまま覚えてしまい、南の空にあるはずの星座が見つからない、ということが起こります。
目もりを合わせたら、実際に外で使います。順番を決めておくと、暗いところでもまよいません。
②の方位を決める作業がぬけると、あとの手順がすべて空回りします。自分がどちらを向いているか分からないままでは、まどのどこと空のどこを見くらべればよいのかが決まらないからです。
方位を知る方法はいくつかあります。方位磁針を使うのがいちばん確実ですが、なければ家や学校のどちら側に何があるかを昼のうちに調べておくだけでも足ります。ベランダは南向き、校門は東、といった手がかりが1つあれば、そこを基準にできます。
③は少し不思議に感じるところです。南の空を見るなら、早見の「南」の文字を自分の手前(下)にして持ちます。文字を上にしたくなりますが、そうすると空と向きが合いません。見たい方位を自分の側に向けると覚えてください。
④で見くらべるときは、いきなり細かい星をさがさないことです。まず明るい星だけを見ます。早見の上でも星は大きさで明るさを描き分けてあるので、大きい丸から順に空とつき合わせると、形が一気に見えてきます。
空には星がたくさんあるので、何の目じるしもなく見上げると、どれがどれだか分からなくなります。そこで、その季節にいちばん見つけやすい星を1つだけ決めて、そこを出発点にします。
| 季節 | 目じるしにする形 | さがす方位 |
|---|---|---|
| 春 | ひしゃくの形にならんだ7つの星 | 北の空の高いところ |
| 夏 | とても明るい3つの星がつくる大きな三角 | 頭の真上から南寄り |
| 秋 | 四角形にならんだ4つの星 | 南から東の空 |
| 冬 | まっすぐ3つならんだ星と、その両側の明るい星 | 南の空 |
この目じるしが1つ見つかれば、早見の上でその形をさがし、そこから指を動かしていくことで、まわりの星座までたどれます。1つ見つけてから広げるのが、星さがしのこつです。
北の空については、もう1つ知っておくと便利なことがあります。北の方角にあってほとんど動かない星を先に見つけておくと、ほかの星がその星を中心に回っているように見えることが分かります。時刻を変えて2回観察すると、この動きがはっきりします。
いちばん多いつまずきです。置いて見ると東西が反対のまま頭に入ってしまい、外で合わなくなります。星座早見はかざして使う道具だと、最初に体で覚えてしまうのが確実です。持ち上げるくせがつけば、東西の話は考えなくても自然に正しくなります。
回さずにそのまま持ち出すと、まどの中は前に使ったときのままの空です。当然、目の前の空とは合いません。星座早見が合わないと言う子の多くは、この合わせ忘れです。外に出る前に必ず回す、と手順に組みこんでおきます。
暗い星までさがそうとすると、街の明かりがある場所ではほとんど見えず、あきらめてしまいます。見えるのは明るい星だけ、と最初から思っておくほうがうまくいきます。早見の上の大きい丸だけを相手にすると決めれば、街中でも十分に星座がたどれます。
Q1 星座早見のまどの中に見えている星は、どんな星ですか。
A その日その時刻に、自分のいる場所の空に出ている星です。まどの外の星は、まだのぼっていないか、もうしずんでいて見えません。
Q2 9月2日の20時の空を見たいとき、目もりはどう合わせますか。
A 9月2日の日づけの目もりと、20時の時こくの目もりが重なるように円を回します。合わせたらずれないように、ふちを軽くおさえて持ち運びます。
Q3 星座早見では、なぜ東が左になっているのですか。
A 地面から空を見上げた形で描いてあるからです。地図は上から地面を見下ろした形なので、東西が反対になります。頭の上にかざせば、空とぴったり重なります。
Q4 南の空を観察するとき、早見はどう持ちますか。
A 「南」と書いてある側を自分の手前(下)にして、頭の上にかざします。見たい方位を自分の側に向けるのが決まりです。
Q5 同じ星を1時間後にどこで見られるかを知りたいとき、どうすればよいですか。
A 時こくの目もりを1時間分だけ進めて、まどの中で星がどこへ動いたかを見ます。外で待たなくても、手元で星の動きを先に確かめられます。
星の学習は、教室の中だけでは完成しません。実際に空を見上げた経験がないまま図だけを覚えると、テストは解けても、星が動くという感覚が身につかないまま終わってしまいます。ここは家庭の出番が大きいところです。
とはいえ、特別な準備はいりません。晴れた日の夜に5分だけ、いっしょに外に出る。それで十分です。星座をいくつも覚える必要はなく、明るい星を1つ見つけて「あれが今日の星」と言えたら、その日は成功です。
おすすめは、同じ星を1時間あけて2回見ることです。位置が変わっていることに子ども自身が気づくと、教科書の説明が一気に自分のものになります。星座早見の時こくの目もりを回して、動く先を予想してから見に行くと、さらに印象に残ります。
夜の観察は、必ず大人の方がいっしょに出てください。場所は明るい道ぞいや自宅のベランダで構いません。街の中でも、明るい星はきちんと見えます。うちの近くでは見えないとあきらめる前に、いちど早見をかざしてみていただければと思います。