4年 理科 ものの温度と体積

池は、底からこおらない ── いちばん重い水は0℃ではなく4℃

4年生の理科では、空気・水・金属をあたためたり冷やしたりして、体積がどう変わるかを調べます。そこで覚えることは、たった一行にまとまります。あたためるとふくらむ、冷やすと縮む。フラスコの口につけたゼリーの印が上がったり下がったりするのを見て、なるほどと思ったはずです。ところが、この一行をそのまま信じたままだと、冬の池の前で答えられない質問が出てきます。冷やすと縮むのなら、いちばん冷たい水がいちばん重くなって底にたまるはずで、池は底からこおらなければおかしい。でも、実際の池は上からこおります。しかも氷の下では魚が生きています。この記事は、その食いちがいを最後まで追いかけます。

教科書には、あたためる向きしか出てこない

「ものの温度と体積」の実験を思い出してください。試験管やフラスコに水を入れ、湯につけてあたため、氷の入った水につけて冷やします。あたためれば水面が上がり、冷やせば下がる。ここまでは、そのとおりのことが起きます。

しかし、この実験で冷やす相手は、せいぜい氷水です。温度でいえば0℃の手前までで終わります。そして、そこから先で何が起きるかは、4年生でも、5年生でも、6年生でも出てきません。

いっぽう「水のすがた」の単元では、水は0℃で氷になる、と習います。つまり教科書の中には、「冷やすと縮む」という話と、「0℃で氷になる」という話が、べつべつに置かれているのです。その間、たとえば5℃から0℃までの5度分で水がどうふるまうかは、どこにも書かれていません。空いているのは、ちょうどそこです。

そして、そこにこそ、水という物質のいちばん変わった性質がかくれています。

とちゅうで、向きが変わる

水を1cm³(1辺1cmのサイコロ1個分)だけ取り出して、温度ごとに重さをはかった表を見てみましょう。重いということは、同じ体積にぎゅっとつまっている、という意味です。

温度1cm³あたりの重さ前の行とくらべて
100℃の水約 0.958 g―
20℃の水約 0.9982 g重くなった
10℃の水約 0.9997 g重くなった
4℃の水約 1.0000 gいちばん重い
0℃の水約 0.9998 gかるくなった
0℃の氷約 0.917 gぐんとかるくなった

上から下へ読んでいくと、はじめは教科書どおりです。100℃から20℃、20℃から10℃と冷えるにつれて、1cm³の重さがふえていきます。冷えて縮んだぶん、同じ体積にたくさんつまったということです。

ところが4℃の行で、増えかたが止まります。そしてそこから下、0℃に向かうあいだに、重さはふえるのをやめて、逆にへりはじめます。冷やしているのに、ふくらんでいるのです。

 温度を下げていくと…  100℃ →→→→→→→→→ 4℃ →→→ 0℃     ちぢむ(重くなる)   ふくらむ(かるくなる)               ↑           ここで向きが変わる   いちばん重い水 = 4℃の水

ふつうの物は、冷やせば冷やすほど縮みます。鉄も、アルミニウムも、空気もそうです。とちゅうで向きが変わるのは、水のほうがおかしいのです。教科書の一行がまちがっているのではなく、水という物質が、その一行にだけは素直にしたがわない、ということです。

そして最後の行、0℃の氷を見てください。0.9998から0.917へ、ここで一気に落ちています。液体から固体になるとき、ふつうの物はぎゅっと縮んで重くなるのに、水は氷になるときに、大きくふくらむのです。

こおるとどれだけふくらむのか、計算する

表の数から、ふくらむ量を出してみましょう。0℃の水1cm³の重さが約1g、0℃の氷は1cm³で約0.917gでした。つまり、同じ1gの中身を氷にすると、体積は次のようになります。

 水 1 g の体積 = 1 cm³  氷 1 g の体積 = 1 ÷ 0.917 = 約 1.09 cm³    1.09 ÷ 1 = 1.09 → 約 9 % ふえる

1割ちかくふえる、と覚えておけば十分です。では、ペットボトルに水を500mL入れて、ふたをしめたまま冷とう庫に入れるとどうなるでしょうか。

 500 × 0.09 = 45   500 mL の水 → こおると 約 545 mL   入れ物は 500 mL のまま。   はみ出したい 45 mL が、内がわから容器をおす。

これがペットボトルがふくらんだり、ときには割れたりする理由です。水道管が冬に破裂するのも、岩のすきまに入りこんだ水がこおって岩を割るのも、原因は全部この45mLと同じものです。水は、こおるときに場所をよけいに必要とする。それだけのことが、鉄の管をこわす力になります。

ここで気をつけたいのは、ふえたのは体積であって、重さではないということです。3年生の「ものと重さ」で調べたとおり、形やすがたが変わっても、重さは変わりません。500mLの水は、こおっても500g分のままです。ふえたのは、そのつめこまれ方だけです。

だから氷は浮く。しかも、浮きかたまで計算できる

1cm³あたり氷が0.917g、水が約1.0g。氷のほうがかるいのだから、氷は水に浮きます。ここまでは予想どおりでしょう。おもしろいのは、どれだけ顔を出すかまで、わり算1回で出せることです。

浮いているものは、自分と同じ重さ分の水をおしのけて、そのぶんだけ沈みます。だから沈んでいる割合は、氷の重さを水の重さでわった数になります。

 沈んでいる割合 = 0.917 ÷ 1.0 = 0.917   沈んでいる … 約 92 %   出ている  … 100 - 92 = 約 8 %   8 % は、だいたい 12 分の 1

つまり、水に浮かべた板のような氷は、厚さの約12分の1だけが水の上に出て、のこりは全部かくれています。池に張った氷の厚さが12cmなら、水面から出ているのは1cmほど。36cmなら3cmほどです。あとは目に見えない水の中にあります。

海に浮かぶ氷山で「氷山の一角」という言い方をするのも、これが理由です。海の水は塩がとけているぶん少し重く、1cm³で約1.025gあります。同じ計算をしてみましょう。

 0.917 ÷ 1.025 = 約 0.895   沈んでいる … 約 89 %   出ている  … 約 11 % → だいたい 10 分の 1

見えているのは全体の1割ほど。「見えている部分はほんの一部にすぎない」という意味であの言葉が使われるのは、たとえ話ではなく、ほんとうに9割がかくれているからです。

池の中では、重い水が自動的に下に並ぶ

ここまでの数を持って、冬の池にもどります。池の水をかき混ぜている人はいません。それでも水は勝手に動きます。重い水は下へ、かるい水は上へ。ただそれだけの規則で、池の中は順番に並びます。

秋から冬に向かうあいだ、冷たい空気にふれるのは水面です。冷えた水面の水は重くなり、沈んでいきます。入れかわりに下から少しあたたかい水が上がってきて、また冷やされて沈む。この入れかわりが、池全体が4℃になるまで続きます。

問題はそのあとです。水面がさらに冷えて3℃、2℃になったとき、その水は4℃の水より重いでしょうか、かるいでしょうか。表を見返してください。4℃より冷たい水は、かるいのです。

 【水面が 4℃ より上のとき】   冷えた水 = 重い → 沈む → 入れかわる             (池全体が 4℃ になるまで)  【水面が 4℃ より下になったあと】   冷えた水 = かるい → 沈まない → 水面に残る             (そこだけが 0℃ まで冷える)

かるい水は沈めないので、いちばん冷たい水は水面にとどまったままになります。冷やされる場所と、いちばん冷たい水がある場所が、同じところに固定されるわけです。だから0℃に達するのも水面がいちばん早く、こおりはじめるのは、いつも上からになります。

そして、できた氷はかるいので浮いたままです。浮いた氷は池のふたになり、風が水面をかき混ぜることも、冷たい空気が水に直接ふれることもなくなります。上に雪がつもれば、ふたはさらに厚くなります。こうして氷の下の水は、それ以上急には冷やされなくなり、池の底のほうは4℃前後のまま冬をこします。魚が生きていられるのは、この4℃の水のおかげです。

もし水が、ふつうの物質だったら

ここで、水が鉄やアルミニウムと同じように「冷えれば冷えるほど重くなる」物質だったと仮定して、同じ冬をもう一度たどってみます。

くらべるところほんとうの水もし、ふつうの物質だったら
いちばん重い水4℃0℃
いちばん冷たい水のいる場所水面池の底
こおりはじめる場所水面池の底
できた氷浮いてふたになる沈んで底にたまる
冬の終わりの池氷の下に水がある底から上まで全部氷
魚こせるこせない

右の列では、沈んだ氷の上にまた水が来て、それも冷やされてこおって沈み、と積み上がっていきます。ふたができないので、冷たい空気はいつまでも水面にふれ続けます。水面がふたをされないかぎり、池は下から順に、上まで全部こおります。

しかも、いったん底まで氷になってしまうと、春が来ても簡単にはとけません。日光があたるのは水面だけで、底の氷にはとどかないからです。深い湖なら、夏になってもとけ残るでしょう。

表の左の列と右の列を分けているのは、ただ一つ、いちばん重いのが4℃か0℃かという、たった4度のちがいです。その4度が、氷の下で冬をこす魚がいるかどうかを決めています。

コップの氷がとけても、水はあふれない

最後にもう一つ、計算でたしかめられることがあります。コップの水に氷を浮かべ、ふちぎりぎりまで水を足しておきます。氷がとけたら、水はあふれるでしょうか。

氷100gで考えてみます。氷は1cm³で0.917gですから、100gの氷の体積はこうなります。

 100 ÷ 0.917 = 約 109 cm³   浮くために沈めている部分    = おしのけた水の重さが 100 g になる体積    = 100 cm³(水は 1 cm³ で 1 g)   水の上に出ている部分 = 109 - 100 = 9 cm³

この氷がすっかりとけると、100gの水になります。水100gの体積は100cm³です。いっぽう、氷が沈んでいたときにどけていた水の場所も、ちょうど100cm³でした。

 とけてできた水     … 100 cm³  氷がどけていた水の場所 … 100 cm³   ぴったり同じ → 水面は動かない

できた水は、氷が自分のためにあけていた場所に、そのままおさまります。だから浮いている氷がとけても、水面は上がりません。水の上に出ていた9cm³は、もともと水面より上にあったぶんなので、下の水かさには関係がないのです。

ただし、これは浮いている氷の話です。コップのふちに乗せた氷や、陸の上の雪がとけて流れこんだ場合は、はじめから水の場所をどけていなかったのですから、そのぶん水かさはふえます。海の氷が話題になるときに、浮いている氷と陸の上の氷を分けて考えるのは、この差があるからです。

家でたしかめる

ひとつめ。製氷皿の水を、平らにすりきりまで入れてこおらせる。 できた氷は、皿のふちより少し盛り上がっているはずです。ふえた9%が上へ逃げた形です。同じ製氷皿でも、水を入れた高さを変えて2つ作れば、盛り上がりの高さもちがうことが分かります。

ふたつめ。氷を水に浮かべて、水面に印をつける。 コップの外がわに、水面の高さでテープをはっておきます。氷が全部とけたあと、水面がテープと同じかどうかを見てください。前の節の計算が正しければ、動かないはずです。結果を先に予想して紙に書いてから見るのが、いちばん身になります。

みっつめ。氷を浮かべて、出ている高さをはかる。 四角い氷なら、定規で全体の厚さと、水の上に出ている高さをはかってわり算します。12分の1に近い数になれば、表の0.917という数を自分で確かめたことになります。氷が丸かったり、あわが入っていたりすると数はずれますが、ずれかたを説明できることのほうが、ぴったり合うことより大事です。

やってはいけないことも書いておきます。ふたをしめたペットボトルや、ガラスびんをこおらせないこと。ふえた体積の行き場がないと、容器が割れます。炭酸の入った飲み物はとくに危険です。どうしてもこおらせたいときは、ふたを取るか、中身を8割くらいにしておきます。

まとめ

つながっている記事

ものの温度と体積… あたためると体積がふえる、をフラスコでたしかめる実験。
もののうきしずみ… 何が浮いて何が沈むかを決めているもの。
ものと重さ… すがたや形が変わっても、重さは変わらないこと。
水のすがた… 氷・水・水蒸気が同じものであること。