同じ「あたためる」でも、ものによって伝わり方がちがう。この知識は暮らしに直結します。
金属の棒の片方の端を熱すると、熱はどう伝わるでしょうか。
調べるには、示温インク(サーモテープ)を使います。温度が上がると色が変わるインクです。ろうを塗って、とけ方を見る方法もあります。
金属の板でも同じです。
このあたたまり方を伝導(でんどう)といいます。
大事なのは、金属そのものは動いていないということです。動いているのは熱だけ。となり合った部分へ、次々と熱が受けわたされていくのです。
そして、上下は関係ありません。棒を斜めにしても、熱源から近い順にあたたまります。上のほうから先にあたたまる、ということはないのです。
水は、まったくちがう伝わり方をします。
ビーカーの水に示温インクを入れ、下から熱してみます。
下から熱しているのに、先にあたたまるのは上のほうです。これは金属と正反対の結果です。
なぜでしょうか。あたためられた水は軽くなって上へ動くからです。
このあたたまり方を対流(たいりゅう)といいます。
金属との決定的なちがいは、もの自体が動くことです。伝導は熱だけが移動しますが、対流は水そのものが動いて熱を運びます。
ちなみに、ビーカーの上のほうを熱すると、下はなかなかあたたまりません。あたたまった水は上にとどまり、下へ動かないからです。だから、やかんは下から熱するのです。
空気は、水と同じ対流であたたまります。
だから、部屋の上のほうが暖かく、足元が寒いのです。冬に「頭は暑いのに足が冷える」のは、このためです。
この性質を知っていると、暖房器具の置き方が分かります。
| 器具 | 置く場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 暖房(ストーブ) | 低い位置・床 | あたたかい空気が上へ広がる |
| 冷房(エアコン) | 高い位置 | 冷たい空気が下へ降りる |
| エアコンの風向き(暖房時) | 下向き | 足元まで届かせる |
| エアコンの風向き(冷房時) | 上向き | 自然に降りてくる |
エアコンが部屋の高いところに付いているのは、冷房のことを考えた配置です。冷たい空気は自然に下へ降りるので、上から出すのが効率的なのです。
暖房として使うときは、風向きを下に向けます。そうしないと、暖かい空気が天井にたまってしまいます。サーキュレーターで空気をかき混ぜると、部屋全体が均一にあたたまります。
ここまでの内容を整理しましょう。
| 金属 | 水 | 空気 | |
|---|---|---|---|
| あたたまり方 | 伝導 | 対流 | 対流 |
| もの自体は | 動かない | 動く | 動く |
| 順番 | 熱源に近い順 | 上から | 上から |
| 速さ | 速い | おそい | とてもおそい |
固体は伝導、液体と気体は対流。この分け方で覚えるとすっきりします。
なぜ固体は伝導なのでしょうか。固体は形が決まっていて動けないからです。粒がその場に固定されているので、熱だけが受けわたされます。
液体と気体は、粒が自由に動けます。だから、あたたまった粒そのものが移動できるのです。
同じ金属でも、種類によって熱の伝わりやすさがちがいます。
銅 > アルミニウム > 鉄 > ステンレス
調理器具に銅やアルミが使われるのは、熱がよく伝わるからです。
逆に、なべの取っ手は木やプラスチックでできています。これらは熱を伝えにくいので、手が熱くならないのです。
熱を伝えにくいものを断熱材といい、保温ポットや家の壁に使われています。
あたたまり方の知識は、日常のあちこちで使えます。
面白いのは、空気は熱を伝えにくいということです。対流が起きなければ、空気はとてもよい断熱材になります。
ダウンジャケットも、羽毛そのものではなく羽毛の間に閉じこめられた空気があたたかさの正体です。動かない空気の層が、熱を逃がさないのです。
逆に、風が吹くと寒く感じるのも同じ理由です。せっかく体のまわりにできたあたたかい空気の層が、風で吹き飛ばされてしまうからです。気温が同じでも、風があるほうが寒い。これを体感温度といいます。
マフラーや手袋も、布そのものが熱を出すわけではありません。体から出る熱を逃がさないためのものです。あたたかい服とは、熱を作る服ではなく、熱を閉じこめる服なのです。
水と混同してしまう。
金属は熱源に近い順です。上下は関係ありません。金属自体が動かないからです。
下から熱しているから下が先だと考える。
あたたまった水は上へ動くので、上のほうが先にあたたまります。実験で確かめると納得できます。
言葉だけ覚えて使い分けられない。
もの自体が動くかどうかで区別します。動かない=伝導、動く=対流です。
Q1 金属はどの順にあたたまりますか。
A 熱した所から近い順です。上下は関係ありません。これを伝導といいます。
Q2 水を下から熱すると、どこが先にあたたまりますか。
A 上のほうです。あたためられた水が上へ動くためです。これを対流といいます。
Q3 なぜエアコンは部屋の高い位置にあるのですか。
A 冷たい空気は下へ降りるので、上から出すのが効率的だからです。
Q4 セーターがあたたかいのはなぜですか。
A 繊維の間に動かない空気があり、熱を逃がしにくいからです。
この単元は、実験結果が予想と食いちがう場面が多く、理科の面白さを実感しやすい内容です。とくに「下から熱しているのに上が先にあたたまる」という結果は、多くの子がおどろきます。
示温インクを使った実験は、色の変化が目に見えるので印象に残ります。学校の実験を家で話題にすると、理解が定着します。
家庭では、暖房・冷房の使い方を通して実感できます。「なぜエアコンは上にあるの?」「足元が寒いのはなぜ?」といった問いかけが、学んだ知識と結びつきます。
また、なべの取っ手が木やプラスチックである理由、重ね着があたたかい理由なども、この単元の応用です。身のまわりの「なぜ」を一緒に考えてみてください。