4年 理科 実験用ガスこんろの使い方

実験用ガスこんろの使い方 ── 危ないのは、ついている間ではない

4年の理科は、多くの子にとって自分の手で火をつける最初の学年です。水を熱してふっとうさせる、金ぞくのぼうをあたためて熱の伝わり方を調べる。そのどちらにも火が要ります。ここで使う器具が実験用ガスこんろです。手順を丸暗記するより先に、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。理科室でのやけどは、ほのおが赤々と上がっている最中よりも、火をつける前の準備と、火を消したあとの数分に起きやすい、ということです。ほのおは見えるので、だれもが用心します。見えない熱だけが、油断のすきに残ります。

なぜアルコールランプではなく、こんろなのか

少し前の理科室では、加熱といえばアルコールランプでした。いまは実験用ガスこんろに置きかわった学校がほとんどです。理由は、こんろの方が火として弱いからではなく、あつかう場面であぶない分かれ道の数が少ないからです。

くらべるところアルコールランプ実験用ガスこんろ
火のつけ方マッチでしんに近づけるつまみを回すだけ
火の消し方ふたをかぶせるつまみをもどすだけ
たおれたとき中の燃える液が流れ出る液は出ない(自動で止まる型が多い)
火力の調節ほとんどできないつまみで大小を変えられる

表の三行目が、置きかわった最大の理由です。アルコールランプは、たおれた瞬間に燃える液そのものが机の上に広がります。実験用ガスこんろの燃料はカセットボンベの中に閉じこめられていて、たおれても液が机を流れることはありません。マッチを使わなくてよいぶん、火をつける動作も一つ減ります。手順が少ない器具ほど、まちがえる場所も少ない。器具が新しくなるときは、たいていこの考え方が働いています。

先に、つくりを見ておく

使う前に、どこに何があるかを目で確かめます。名前を知らない部品は、先生の指示を聞いてもどこのことか分からないからです。

【実験用ガスこんろを横から見たところ】           ビーカー         [     ]    ━━━━━━━━━━━━━━━ ← 金あみ(ごとく)        *****     ← ほのおが出るところ  ┌─────────────────────┐  │  本体        ◎ │ ← つまみ(消 ⇄ 点火)  └──────┬──────────────┘        └─[カセットボンベ]

大事なのは、上にのっている金あみ(ごとくとも言います)です。ビーカーや蒸発皿は、この金あみの上にのせます。金あみは火のすぐ上にありますから、実験が終わるころには、ほのおと同じくらい用心しなければならない場所になっています。この記事の題名にした「危ないのは、ついている間ではない」は、ほとんどがこの金あみの話です。

ボンベは、向きが決まっている

カセットボンベは、どちら向きでも入るように見えて、正しい向きが一つだけあります。ボンベの上のふちには小さな切りかけ(くぼみ)があり、本体側の出っぱりと合う位置でしか奥まで入りません。

合わせて押しこむと、カチッと手ごたえがあります。この音がしないうちは、まだ取りつけが終わっていません。ななめのまま無理に押しこむと、ガスのもれる道ができます。うまく入らないときは、力を強くするのではなく、いったん抜いて向きを見直します。入らないものは、たいてい向きがちがうだけです。

取りつけたら、すぐには火をつけません。鼻を近づけるのではなく、ふつうに立った高さで、ガスのにおいがしないかを確かめます。においがしたら、つまみに手をふれずに先生を呼びます。

つける前の四つの確認

ここが、この記事でいちばん覚えてほしいところです。四つとも、火をつけてからでは直せません。

① 水平で、ぬれていない台の上か ② こんろの近くに、紙・プリント・ノート・ふきんがないか ③ そで口と、長いかみの毛はまとめてあるか ④ あたためるものは金あみの上に、まん中にのっているか

①の「ぬれていない」は見落としがちです。水がついた台はすべりやすく、熱いビーカーをのせたこんろが少し動くだけで大ごとになります。②は、実験中にプリントを見ようとして、こんろの向こう側から手をのばす姿につながります。燃えるものを近くに置かないのは、燃え移りを防ぐためであると同時に、火の上を手が横切る理由をなくすためでもあります。

④のまん中にも理由があります。金あみのはしにビーカーを置くと、あたためられるのが底の片側だけになり、実験の結果がずれるうえ、重さのつりあいがくずれてかたむきます。

ほのおの色は、教えてくれている

つまみを「点火」の位置まで回すと、小さな音とともに火がつきます。ついたら、まず色を見てください。

ほのおの色意味どうするか
青いほのおよく燃えている(正常)そのまま使う
赤い・黄色いほのお空気が足りず、燃え残りが出ている火を消して先生に伝える
音を立てて上がる火力が強すぎるつまみを少しもどす

赤いほのおは、雰囲気のある色だと思われがちですが、理科室では調子が悪いという合図です。ガスが空気と十分に混ざらずに燃えている状態で、これを不完全燃焼といいます。燃え残りがすすになり、ビーカーの底を黒くよごします。よごれた底は熱の伝わり方まで変えるので、実験の結果もあやしくなります。

もうひとつ、火力についてです。早くふっとうさせたくて、つまみをいっぱいまで回したくなります。けれども強すぎるほのおは、ビーカーの横まで回りこんで、あたためたい底から外れます。ほのおの先が、ビーカーの底に軽くふれるくらいがいちばんむだのない大きさです。大きい火=速い、ではありません。

ふっとう石を入れる ── 急に飛び出すのを防ぐ

水を熱する実験では、水を入れたあと、白くて小さな石のつぶを2、3個入れます。これをふっとう石といいます。入れるのは、実験をきれいに見せるためではなく、けがを防ぐためです。

あわは、何もないところからは生まれません。ビーカーの底の小さなきずや、石の表面のでこぼこを足場にしてふくらみ始めます。とてもなめらかで足場のない入れものに入った水を熱し続けると、100℃をこえてもあわが出ないまま熱がたまり、あるときいきなり熱い水がふき上がることがあります。これを突沸(とっぷつ)といいます。

【ふっとう石を入れると、何が変わるか】  入れない … 熱がたまる → → → ドンッ(いきなり飛び出す)  入れる  … 小さなあわ・小さなあわ・小さなあわ(ずっと静か)

ふっとう石は、あわの出る場所をあらかじめたくさん用意しておく道具です。小さく出し続けてやれば、大きくためこむことがありません。なお、一度使ったものは中のすきまが水でうまっていて、二度目は効きません。使い回さず、毎回新しいものを入れる。そして、必ず水を入れたあと・火をつける前に入れます。熱くなってから落としこむと、その瞬間に一気にあわが出て、あぶないからです。

消したあとが本番

実験が終わったら、つまみを「消」の位置まで回します。ほのおが消えたのを目で確かめます。ここからが、この記事の題名の意味するところです。

ほのおは消えても、金あみ・ビーカー・蒸発皿・三角フラスコは熱いままです。金あみは黒いので、熱くても見た目が変わりません。赤くなっていないから大丈夫だろう、と手をのばした子がやけどをします。火が消えた=安全になった、ではなく、火が消えた=熱がどこにあるか見えなくなった、と考えてください。

熱いものは、そのまま置いて冷まします。急ぐからといって水をかけてはいけません。熱いガラスに水がかかると、外側だけが急に縮み、ひびが入って割れます。持ち上げるときは、必ず実験用の厚い手ぶくろやクランプを使い、素手ではさわりません。ぬれた手ぶくろも使えません。水は熱をよく伝えるので、かえって熱く感じます。

ボンベを外すのも、本体が冷めてからです。かたづける順番は、消す → 冷ます → ボンベを外す → しまう、になります。

それでもやけどをしたら

やってしまったときの手当ては、先に知っているかどうかで結果が変わります。

① すぐに水道の水を、弱く出して当て続ける(10分以上) ② こすらない・つぶさない・水ぶくれを破らない ③ あぶらやクリームをぬらない ④ 小さく見えても、必ず先生に言う

①でいちばん多いまちがいは、冷やす時間の短さです。痛みが引くとやめてしまいますが、皮ふの中の熱はまだ残っています。②と③は、昔から言い伝えのある方法がかえって治りをおくらせるという話で、あぶらは熱を閉じこめてしまいます。④は、あとになって痛みが強くなることがあるためです。だまっていること自体が、いちばん危ない対応だと覚えておいてください。

つまずきやすいところ

つまみを回しても火がつかない。ボンベが奥まで入っていないか、ガスが残り少ないかのどちらかがほとんどです。何度も続けて回すのはやめます。つかないままガスだけが出続けている状態がいちばん危険だからです。一度つまみを「消」にもどし、手を止めて先生を呼びます。

ふきこぼれた。火が強すぎます。あわてて息をふきかけず、まずつまみをもどして弱めます。こぼれた水は、こんろが冷めてからふきます。

温度計がうまく読めない。温度計の球の部分がビーカーの底についていると、水ではなくガラスの温度をはかっていることになります。液の中ほどに浮かせるように持ち、目もりは真横から読みます。読み方は温度計の使い方(3年)と同じです。

いつまでたっても100℃をこえない。それは失敗ではありません。水はふっとうしている間、熱を加えても温度が上がらず、すがたを変えることに使われます。くわしくは水のすがた(4年)であつかっています。

やってみよう

まとめ

おうちの方へ

4年の理科で、お子さんは学校で初めて自分の手で火をあつかいます。ご家庭で「危ないから気をつけて」とだけ伝えると、子どもはほのおに気をつけます。ところが実際にやけどが起きるのは、火の消えたあとの金あみや、熱いビーカーにふれたときがほとんどです。実験の話が出たら、「何℃になった?」の前に「かたづけのとき、何が熱かった?」と聞いてみてください。見えない熱を言葉にできる子は、次の実験で自分から手ぶくろを取りにいきます。なお、この器具は学校用でご家庭にはありませんが、台所のこんろでも、消したあとの五徳となべの取っ手が熱いという点はまったく同じです。お手伝いの場面が、そのまま練習になります。