「先生が話した」を「先生がしゃべった」に書きかえると、なんだか失礼な感じがしませんか。「話す」と「しゃべる」は、意味はほとんど同じはずなのに、です。にた意味の言葉というのは、意味がぴったり重なっているのではなく、少しずつずれながら重なっています。そのずれこそが、言葉をえらぶときの手がかりになります。
意味がよくにている言葉のなかまを、にた意味の言葉(類義語)といいます。「本」と「書せき」、「今」と「ただ今」、「うれしい」と「よろこばしい」などがそうです。
ここで気をつけたいのは、にた意味だからといって、どこでも交かんできるわけではないということです。二つの円がぴったり重なっているのではなく、少しずれて重なっている——そう考えると分かりやすくなります。重なっている部分では、どちらを使ってもだいじょうぶ。はみ出している部分では、片方しか使えません。だから、辞典に近い意味だと書いてあっても、そのまま入れかえてよいとはかぎらないのです。
ずれ方には、いくつかの決まった型があります。自分の書いた文がなんとなく変だと感じたら、この4つのどれにあたるかをうたがってみてください。
| ずれ方 | 例 | ちがい |
|---|---|---|
| ていねいさ | 話す / しゃべる | 「しゃべる」は気楽な場面むき。目上の人には使いにくい |
| 強さ・大きさ | おどろく / びっくりぎょうてん | 右のほうがずっと大がかりな場面にしか合わない |
| 使えるあいて | 食べる / 食う / めし上がる | だれの動作かで、えらぶ言葉が変わる |
| 漢語か和語か | 買い物 / 購買(こうばい) | 漢語はかたく、お知らせや説明文に多い |
とくに大事なのは一番上の「ていねいさ」です。作文でこれをまちがえると、内容は正しいのに読んだ人の受ける感じが変わってしまいます。「校長先生がしゃべりました」ではなく「校長先生が話されました」と書くのは、意味を変えるためではなく、あいてへの気くばりを表すためです。
にた意味の言葉をえらぶときは、言葉だけを見くらべても決まりません。かならず、自分の文にもどして声に出してみます。
この手じゅんの良いところは、辞典を引かなくても、自分の耳で判断できることです。読んで「ん?」と引っかかったら、その言葉はその場所には合っていません。引っかかった感じを、まちがいのサインとしてだいじにしてください。
反対の意味の言葉(対義語)も、まとめて一つに見えますが、中身は二つに分かれます。ここを分けて考えると、「長いの反対は短い」と「あるの反対はない」が、なぜちがう感じの反対なのかが分かります。
②の型では、片方を打ち消すと自動的にもう片方になります。「出席しなかった」は「欠席した」と同じです。ところが①の型では、そうはなりません。「長くない」は「短い」とはかぎらず、ちょうどよい長さかもしれないのです。ここを取りちがえると、話し合いや説明文の読み取りでずれが起きます。
漢語の対義語には、頭に打ち消しの字をつけて作るものがあります。「不」「無」「未」「非」の4字です。それぞれ、打ち消し方の意味あいがちがいます。
| 字 | 意味あい | 例 |
|---|---|---|
| 不 | そうではない | 安心 → 不安、便利 → 不便 |
| 無 | それが ない | 関係 → 無関係、名前 → 無名 |
| 未 | まだ そうなっていない | 完成 → 未完成、経験 → 未経験 |
| 非 | そのなかまでは ない | 常識 → 非常識、公開 → 非公開 |
「未」だけは、時間の感覚をふくんでいるのがポイントです。「未完成」には「これから完成するかもしれない」という気持ちがふくまれますが、「不完成」という言い方はふつうしません。どの字がつくかは言葉ごとに決まっていて、自分でえらべません。まよったら、漢字辞典や国語辞典で確かめるのが確実です。
にた意味の言葉をたくさん知っていると、作文で同じ言葉のくり返しをさけられます。「楽しかった」ばかりが並ぶ作文が、「わくわくした」「むちゅうになった」「心がはずんだ」と書き分けられるようになります。
反対の言葉を知っていると、こんどは読むほうが強くなります。説明文の筆者は、言いたいことを目立たせるために、わざと反対の言葉を近くに置くからです。「便利になった。しかし、不便だったころにあったものが失われた」——この一組を見つけられれば、筆者がどちらを大事だと思っているかが見えてきます。反対の言葉は、文章の骨組みを見つける目じるしなのです。
国語辞典でにた意味の言葉が示されていても、それは近い意味の言葉を教えているだけで、いつでも交かんできるという意味ではありません。かならず自分の文にもどして読み直す一手間を入れてください。
「行かない」は「行く」の反対の言葉ではなく、「行く」を打ち消した形です。反対の言葉は、それじたいで別の意味を持った一つの言葉(行く ⇄ 帰る など)を指します。ここは、テストでよく問われます。
「明るい」の反対は、光の話なら「暗い」ですが、性格の話なら「暗い」のほかに「陰気」も当てはまります。言葉は、使われている場面ごとに反対が決まります。まず「どの意味で使われているか」を決めてから、反対をさがしてください。
Q1 「先生が 」に入れるとき、「しゃべった」がふさわしくないのはなぜ?
A 「しゃべる」は気楽な場面で使う言葉で、目上の人の動作には合わないから
Q2 「長い」と「出席」、とちゅうがあるのはどちら?
A 「長い」。長くも短くもない、というとちゅうがある
Q3 「完成」に打ち消しの字をつけて、「まだ終わっていない」を表すには?
A 未完成(「不」ではなく「未」を使う)
Q4 「食べない」は「食べる」の反対の言葉といえる?
A いえない。打ち消した形であって、別の一語ではないから
Q5 説明文の中で反対の言葉の組を見つけると、何が分かる?
A 筆者が何と何をくらべているか=文章の骨組みが見えてくる
この単元は語いを増やす学習に見えますが、本当のねらいは「同じことを言うのに、なぜこちらの言葉をえらぶのか」を意識させることにあります。にた意味の言葉を暗記させるより、お子さんが書いた作文の一語を指して「ここ、ほかの言い方だとどう変わる?」と一緒に置きかえてみるほうが、力になります。反対の言葉は、二つの型を分けて教えるのが有効です。「長くない=短い、とはかぎらない」と気づけると、算数の数直線や理科の比較実験の読み取りにもつながります。打ち消しの字(不・無・未・非)は自分でえらべないため、辞典で確かめる習慣とセットにしてください。「慣用句・ことわざ」「国語辞典の使い方」の記事とあわせて読むと、調べて確かめる流れが一本につながります。