「茨」「媛」「潟」「阜」。これらの字を、県名以外で使ったことがありますか。4年生の漢字には、そういう字がまとめて入ってきます。
3年生までに習ってきた漢字は、たいていいろいろな言葉に出てくる字でした。「遊」なら、遊ぶ・遊園地・遊具・回遊と、次々に使い道があります。使い道が多いから、生活の中でくり返し目に入り、自然に覚えていきました。
ところが4年生で習う県名の漢字は、そうではありません。
くり返し出会うチャンスがありません。だから「授業で1回書いて、テストで思い出せない」ということが起きます。ここが県名の漢字のむずかしさで、字そのものが難しいのではなく、出会う回数が足りないのです。
やることは、はっきりしています。出会う回数が足りないなら、自分で回数を作る。そして、ばらばらに覚えるのではなく地図という一枚の紙にまとめて置く。この二つだけです。
47都道府県の名前に使われる漢字のうち、大部分は3年生までに習っています。北・海・道・青・岩・山・東・京・大・分──こういう字は、もう書けるはずです。
新しく覚えることになるのは、次のあたりです。学校や教科書によって多少ちがいますが、だいたい20字ほどにおさまります。
| 字 | 県名 | ここが引っかかる |
|---|---|---|
| 茨 | 茨城 | くさかんむり。「いばら」というとげのある草 |
| 栃 | 栃木 | きへん。右がわを「万」と書いてしまいがち |
| 埼 | 埼玉 | 土へん。「崎」と取りちがえる |
| 潟 | 新潟 | 15画。右上の形がくずれやすい |
| 岐・阜 | 岐阜 | 2字ともここでしか使わない |
| 井 | 福井 | 4画。書き順を「たて」から始めない |
| 阪 | 大阪 | 「坂」ではない。こざとへん |
| 奈 | 奈良・神奈川 | 読みは「ナ」だけ。訓読みがない |
| 滋 | 滋賀 | さんずい。右がわの点の数に注意 |
| 梨 | 山梨 | くだものの「なし」と同じ字 |
| 媛 | 愛媛 | おんなへん。「暖」「援」と右がわが同じ |
| 香 | 香川 | 「かおり」の字 |
| 佐 | 佐賀 | にんべん+左 |
| 崎 | 長崎・宮崎 | 山へん。2県で使う |
| 熊 | 熊本 | 14画。下は「灬(れっか)」 |
| 鹿 | 鹿児島 | 「かごしま」と読む。字は「しか」 |
| 縄 | 沖縄 | いとへん。「なわ」の字 |
| 沖 | 沖縄 | さんずい+中 |
| 岡 | 静岡・福岡・岡山 | 3県で使う。使い回しがきく |
| 賀 | 佐賀・滋賀 | 2県で使う |
この表で大事なのは、右の列の「引っかかるところ」です。20字を平等に20回ずつ練習する必要はありません。引っかかるところが分かっている字だけ、多めに書けばいいのです。
また、岡・賀・崎のように複数の県で使い回せる字があります。こういう字は1回覚えると2つも3つも県が書けるようになるので、先にかたづけると得です。
県名の漢字でまちがえるのは、たいてい次の3組です。どれもへんがちがうだけで、右がわは同じか、よく似ています。
右がわの形は同じです。ちがうのは左だけ。ここに理由をつけると忘れません。「崎」は山や岬など、出っぱった土地を表す字です。長崎も宮崎も海に面していて、地形の名前として自然です。いっぽう埼玉は海のない内陸の県で、山へんではなく土へんを使います。
「海に面している2県が山へん、海のない1県が土へん」──ややこしい言い方ですが、一度覚えると取りちがえなくなります。
ふだん書く「坂」は土へんです。しかし大阪だけはこざとへんを使います。こざとへんは「土を盛った高いところ」を表す部首で、階・院・防などにも入っています。
覚え方は単純で、「大阪はふつうの坂じゃない」と口に出しながら書くこと。書くときに一度でも迷ったら、正しく直したうえでもう3回書きます。
右がわが共通です。岐阜の「岐」は山へん。ここでもへんが意味を持っていることに気づけます。手でやるから「技」、木の一部だから「枝」、山が分かれるところだから「岐」。
4年生で習った「部首は意味の設計図」という考え方が、そのまま県名にも通用します。まぎらわしい字ほど、へんの意味から入るほうが速いのです。
県名には、その県だけの特別な読みが混じっています。書けるようになっても読みで落とすことがあるので、分けて覚えます。
| 県名 | 読み | 注意 |
|---|---|---|
| 鹿児島 | かごしま | 鹿を「か」と読む |
| 茨城 | いばらき | 「いばらぎ」ではない |
| 大阪 | おおさか | 阪を「さか」と読むのはここだけ |
| 神奈川 | かながわ | 神を「か」と読む |
| 愛媛 | えひめ | 媛は「ひめ」。「あいひめ」ではない |
| 宮城 | みやぎ | 茨城は「き」、宮城は「ぎ」で逆 |
とくに茨城(いばらき)と宮城(みやぎ)は、同じ「城」なのに濁るか濁らないかが逆です。ここは理屈がないので、声に出して2つ並べて覚えてしまうのが早道です。
いちばん効率のいい練習は、漢字ドリルではなく白地図です。理由は三つあります。
やり方は次のとおりです。
ポイントは2回目です。書けなかった県に○をつけて、そこだけを練習する。47県すべてを平等に練習するのは時間のむだで、たいてい書けない県は10個以下にしぼられます。
この「できないところだけ取り出して、そこを重点的にやる」という進め方は、漢字にかぎらずどの教科でも使えます。4年生のうちに身につけておくと、5年生以降がずいぶんらくになります。
新潟の「潟」は15画あり、県名の漢字でいちばん画数が多い部類です。一気に覚えようとせず、部品に分けます。
「潟」は、海と切りはなされてできた湖のような地形のことです。新潟という地名そのものが、その地形から来ています。意味を知ってから書くと、部品の並びも頭に残ります。
47のうち、県は43個。ほかは東京都・北海道・大阪府・京都府の4つだけです。この4つには「県」をつけません。テストで「北海道県」と書いてしまう子はけっこういます。
逆に、都道府県名を答える問題で「愛知」とだけ書いて「県」を落とすのもよくあるミスです。4つだけ特別、あとは全部「県」と決めてしまえば迷いません。
県名と県庁所在地がちがう県では、そちらの漢字も必要になります(宇都宮・水戸・金沢・津・松江・那覇など)。ただしこれは社会科の範囲で、国語の漢字テストに出るのは県名のほうです。混ぜて覚えようとすると量が倍になるので、まず県名を確実にしてから足していきます。
Q1 「さいたま」と「ながさき」、へんがどうちがいますか。
A 埼玉は土へん、長崎は山へん。「崎」は山や岬など出っぱった土地を表す字で、海に面した長崎・宮崎に使われます。
Q2 「大阪」の「阪」は、ふつうの「坂」と何がちがいますか。
A 部首がちがいます。ふつうの坂は土へん、大阪はこざとへんです。こざとへんは高くなった土地を表し、階・院などにも使われます。
Q3 茨城と宮城、「城」の読みはどうなりますか。
A 茨城は「いばらき」、宮城は「みやぎ」。同じ字なのに濁るかどうかが逆なので、2つ並べて声に出して覚えます。
Q4 「県」をつけない都道府県は、いくつありますか。
A 4つ。東京都・北海道・大阪府・京都府です。残りの43は全部「県」です。
Q5 47県を練習するとき、2回目に何をしますか。
A 何も見ずに書いて、書けなかった県に○をつけます。3回目はその○の県だけを練習します。全部を平等にやり直しません。
県名の漢字は、覚えても使う場面がないまま忘れていく典型です。学校のテストが終わると、半年で半分は消えます。
効くのは、生活の中で県名に出会う回数を増やすことです。天気予報の地図、野菜の産地表示、旅行のパンフレット、スポーツの中継──県名は日常のあちこちに漢字で書かれています。「これ何県?」と一言たずねるだけで、練習1回ぶんになります。
とくに食品の産地表示はおすすめです。買い物のたびに目に入るうえ、「北海道のじゃがいも」「愛媛のみかん」のように、県と物がセットで頭に入ります。社会科の農業・水産業の学習にもそのままつながります。
白地図は無料で配布しているサイトが多く、印刷して何度でも使えます。冷蔵庫に1枚貼っておき、思い出したときに1県ずつ埋めていくくらいでも十分です。
なお、書き取りの回数を増やすより、書けなかった県だけを選び出すほうが結果は出ます。全部を10回ずつ書かせるのは、時間のわりに残りません。