「頭が下がる」と聞いて、本当に頭を下げるわけではありません。いくつかの言葉が組み合わさって、別の意味を表すことがあります。むかしの人が使ってきた、短い言葉にこもった知恵——慣用句やことわざを、見ていきましょう。
慣用句とは、2つ以上の言葉が組み合わさって、もとの意味とはちがう、決まった意味を表す言い方です。
たとえば「頭が下がる」は、本当に頭を下げることではなく、「感心する・そんけいする」という意味になります。「手をやく」は、火で手をやけどすることではなく、「あつかいにこまる」という意味です。このように、慣用句は、言葉一つ一つの意味をたし合わせても、正しい意味にはたどりつきません。全体で一つの決まった意味になる、というのがポイントです。だから、慣用句は「この形でこの意味」と、まるごと覚える必要があります。会話や文章の中でよく使われるので、知っていると、言葉の意味がぐっと分かるようになります。
慣用句には、体の部分を使ったものがたくさんあります。よく使うものを見てみましょう。
| 慣用句 | 意味 |
|---|---|
| 頭が下がる | 感心する・そんけいする |
| 耳をかたむける | 注意してよく聞く |
| 目が高い | よいものを見分ける力がある |
| 手を借りる | 手つだってもらう |
| 足を運ぶ | わざわざ出かける |
頭・耳・目・手・足など、体の部分を使った慣用句は、とてもたくさんあります。「耳をかたむける」は、注意してよく聞くこと。「目が高い」は、よいものを見分ける力があること。どれも、体の部分の動きから、そのイメージにつながる意味が生まれています。体の部分が出てくる言い方を見つけたら、「これは慣用句かな?」と考えてみると、意味を取りちがえずにすみます。まずは、身近でよく使うものから覚えていきましょう。
ことわざとは、むかしの人の知恵や教えを、短く、おぼえやすい形にまとめた言葉です。
| ことわざ | 意味 |
|---|---|
| ちりも積もれば山となる | 小さなことも積み重なれば大きくなる |
| 石の上にも三年 | しんぼう強く続ければ実を結ぶ |
| 急がば回れ | 急ぐときこそ安全な方法を選ぶ |
ことわざは、生活の中で役立つ教えや、ものごとの真理を、みじかい言葉で言い表しています。「ちりも積もれば山となる」は、小さな努力も、続ければ大きな成果になる、という教えです。「急がば回れ」は、急ぐときほど、あわてず安全な方法を選んだほうがよい、という知恵です。むかしから多くの人に語りつがれてきたので、生活のいろいろな場面で使えます。ことわざを知っていると、自分の考えを、短くせっとく力のある言葉で伝えられます。
故事成語とは、むかしの中国の話(故事)が由来になっている言葉です。
たとえば「矛盾(むじゅん)」は、どんな盾もつらぬく矛と、どんな矛も防ぐ盾を売っていた商人の話から生まれました。両方が本当なら、話のつじつまが合いません。そこから、「話のつじつまが合わないこと」を矛盾というようになりました。「五十歩百歩」は、戦いで五十歩にげた者が、百歩にげた者を笑ったという話から、「少しのちがいはあっても、たいしたちがいはないこと」を表します。故事成語は、もとになった話を知ると、意味がすっと頭に入ります。物語とセットで覚えると、忘れにくくなります。
ほかにも、「蛍雪の功(けいせつのこう)」は、まずしくて明かりの油が買えず、蛍の光や雪明かりで勉強して成功した人の話から、「苦労して学問にはげむこと」を表します。「四面楚歌(しめんそか)」は、まわりを敵に囲まれて、味方がだれもいないようすを表します。どれも、短い言葉の後ろに、長い物語がかくれています。故事成語を一つ知ることは、むかしの人の物語を一つ知ることでもあるのです。
ことわざの中には、にた意味どうし、反対の意味どうしのものがあります。ならべて見ると、おもしろい発見があります。
たとえば「急がば回れ」とにた意味のことわざに、「せいては事をしそんじる(あわてると失敗する)」があります。どちらも、「急ぐときこそ落ち着いて」という教えです。反対に、意味が対になっていることわざもあります。「さるも木から落ちる(名人でも失敗することがある)」は、どんなにじょうずな人でもミスをする、という教えですが、これと「弘法にも筆のあやまり」は、じつはほとんど同じ意味です。同じ教えを、ちがう言い方で表しているのです。にた意味・反対の意味を知ると、ことわざのつながりが見えて、覚えやすくなります。一つ覚えたら、「にた意味のことわざはあるかな?」とさがしてみると、言葉の世界がどんどん広がっていきます。
慣用句やことわざは、便利ですが、使い方をまちがえると、意味が正しく伝わりません。
まず、意味を正しく覚えることが大切です。「情けは人のためならず」は、「人に情けをかけると、めぐりめぐって自分のためになる」という意味ですが、「情けをかけるのは、その人のためにならない」と、反対の意味にかんちがいされることがあります。また、慣用句は決まった形で使うので、言葉を勝手に入れかえると、通じなくなります。使う前に、意味と形をたしかめるくせをつけましょう。国語辞典やことわざ辞典で調べると、正しい意味や、使い方の例がのっています。正しく使えると、あなたの言葉に深みが出て、伝える力が高まります。
慣用句は、言葉をたし合わせた意味にはなりません。
「頭が下がる」は感心する、という決まった意味です。
「情けは人のためならず」は、人のためになるという意味です。
正しい意味を、辞典で確かめておきましょう。
慣用句やことわざは、決まった形で使います。
言葉を変えると、通じなくなることがあります。
Q1 「頭が下がる」の意味は?
A 感心する・そんけいする
Q2 「小さなことも積み重なれば大きくなる」を表すことわざは?
A ちりも積もれば山となる
Q3 むかしの中国の話が由来の言葉を何という?
A 故事成語
Q4 「話のつじつまが合わないこと」を表す故事成語は?
A 矛盾
慣用句・ことわざ・故事成語は、言葉の意味を「まるごと」つかむ力と、日本語の豊かさにふれる楽しさを育てる単元です。ポイントは、言葉一つ一つの意味の合計ではなく、全体で決まった意味になる、と理解することです。ご家庭では、会話の中で使ってみせたり、「この言い方、どんな意味だと思う?」とクイズにしたりすると、楽しみながら身につきます。故事成語は、由来の物語とセットで覚えると記憶に残りやすいので、絵本や子ども向けの読み物もおすすめです。意味を反対に覚えてしまう例(情けは人のためならず、など)もあるので、辞典で確かめる習慣をつけると安心です。「漢字の組み立て」「国語辞典の使い方」の記事とあわせて読むと、言葉を調べ、正しく使う力がいっそう育ちます。