4年 国語 物語の心情

物語の心情 ── 気持ちは「書いてない」ところに書いてある

上手な作家は「うれしい」とは書きません。別のもので気持ちを見せるのです。

気持ちは直接書かれない

物語を読んでいて、「主人公の気持ちを答えなさい」という問題が出ます。ところが本文を探しても、「うれしかった」とは書いていない。

これは作者がわざとそうしているのです。

【気持ちを直接書いた文】 太郎はうれしかった。 【気持ちを見せた文】 太郎は空を見上げて、大きく息をすった。 自転車のペダルが、いつもより軽かった。

どちらが心に残るでしょうか。ほとんどの人が、後のほうだと感じるはずです。

「うれしい」と書かれると、読者は説明されただけになります。でも行動を見せられると、読者は自分で「うれしいんだな」と気づきます。自分で気づいたことのほうが、強く心に残るのです。

だから作者は、気持ちを直接書かずに、別のもので表します。読者はそれを読み取る──これが物語を読むということです。

気持ちが表れる四つの場所

では、どこを見れば気持ちが分かるのでしょうか。大きく四つあります。

① 行動

「ドアをそっと閉めた」 → 気をつかっている 「ランドセルを放り出した」→ 何かに夢中 「何度も時計を見た」 → 待ちきれない 「うつむいたまま歩いた」 → 落ちこんでいる

行動は、気持ちがそのまま体に出たものです。動作を表す言葉に注目します。

② 会話

何を言ったかだけでなく、どう言ったかが大事です。

「うん。」 → 短い返事。元気がない? 「うん!」 → 元気がいい 「……うん。」→ ためらっている 「うん、まあ。」→ はっきりしない

同じ「うん」でも、点や記号のちがいで気持ちが変わります。会話文の前後の書き方も見逃せません。

③ 表情・体の様子

「顔が赤くなった」 → はずかしい・おこっている 「手がふるえていた」→ こわい・きんちょう 「口をきゅっと結んだ」→ 我慢している

体は、心より正直です。体の描写があったら要注意です。

④ 情景(まわりの様子)

これがいちばん難しく、いちばん面白いところです。

情景描写を読む

情景描写とは、まわりの風景や天気を描いた部分です。一見、気持ちとは関係なさそうに見えます。

でも、物語では景色が心を映す鏡になっています。

「雲が切れて、日がさしてきた」 → 気持ちが明るくなった 「雨がしとしとと降り続いていた」 → 悲しみ・重い気持ち 「風が冷たく感じられた」 → さびしさ・不安 「星がやけにきれいに見えた」 → 心が晴れた・希望

ここで大事なのは、同じ景色でも、心によって見え方が変わるということです。

うれしいとき見た夕日 → 「空がもえるようにきれいだった」 悲しいとき見た夕日 → 「日が沈むのを、ただ見ていた」 同じ夕日なのに、書き方がちがう

作者は、登場人物の心を通した景色を書いています。だから景色を読めば、心が分かるのです。

情景描写を見つけるコツ

物語の中で、急に景色の話が出てくるところがあります。
「そのとき、桜の花びらが一枚、ひらりと落ちた」
ストーリーの進行には関係ないのに、なぜ書いてあるのか。
意味があるから書いてあるのです。物語には無駄な文がありません。
景色の描写を見つけたら、線を引いて「これは何の気持ち?」と考えてみましょう。

気持ちの変化をたどる

物語の問題では、気持ちの変化がよく問われます。「はじめはどう思っていたか」「どこで変わったか」「最後はどうなったか」。

気持ちが変わるときには、きっかけが必ずあります。

はじめ … 転校生をこわいと思っていた ↓ きっかけ … 転校生が飼っている犬の話をした ↓ 変化 … 自分と同じだと気づいた ↓ おわり … 友だちになりたいと思った

この流れをつかむには、物語を場面に区切るとよいです。時・場所・登場人物のどれかが変われば、場面が変わります。

そして、場面ごとに「主人公はどんな気持ちか」を書き出してみます。並べてみると、変化がはっきり見えてきます。

とくに注目すべきは、変化のきっかけとなった出来事です。テストでは「なぜ気持ちが変わったのですか」と問われます。答えは必ず本文の中にあります。

根拠を示す

気持ちを読み取ったら、なぜそう思ったのかを言えることが大切です。

×「なんとなくうれしそうだから」 ○「『足取りが軽かった』と書いてあるから」

物語の読み取りは、想像ではなく根拠に基づく推理です。本文のどこを手がかりにしたのかを、必ず示せるようにします。

テストの答え方も同じです。

問い:このときの太郎の気持ちを書きなさい。 答え:ずっと待っていた手紙がやっと届いて、 とてもうれしい気持ち。 → 「何があって」「どんな気持ちか」の 両方を書くと得点になりやすい

気持ちを表す言葉だけでなく、その理由となる出来事もセットで書く。これが4年生以降の答え方です。

また、気持ちを表す言葉のレパートリーも増やしておきましょう。「うれしい・悲しい・楽しい」だけでは足りません。「ほっとした」「くやしい」「ほこらしい」「もどかしい」「せつない」──言葉を知っているほど、細かく読み取れます。

いくつもの気持ちが同時にある

4年生からは、もう一段むずかしい読み取りが求められます。気持ちは一つとは限らないということです。

卒業する日の教室 「うれしい」だけ? 「悲しい」だけ? → 両方ある 友だちと別れるのはさびしい。 でも、新しい学校が楽しみでもある。 そのどちらもが、同時に心の中にある。

こういう気持ちを、そのまま一語で表すことはできません。だから作者は、矛盾する行動を書いて表します。

「笑いながら、目に涙がたまっていた」 「手をふりながら、足は前に進まなかった」

笑うことと泣くこと。手をふることと進めないこと。反対の動きが同時に書かれていたら、複雑な気持ちのサインです。

こういう場面では、「うれしい気持ち」とだけ答えると不十分になります。「別れはさびしいが、新しい生活への期待もある気持ち」というように、両方を書く必要があります。

人の心は単純ではありません。物語は、その複雑さを描くものです。単純な言葉に押しこめようとしないことが、深い読み取りへの入り口になります。

つまずきやすいところ

その1 自分だったらどう思うかで答える

本文と関係なく想像で書く。
答えるのは登場人物の気持ちです。自分の感想ではありません。本文に根拠を探します。

その2 情景描写を読み飛ばす

景色の話を「関係ない」と思って飛ばす。
物語に無駄な文はありません。景色が出てきたら、心を映していないか考えます。

その3 気持ちの言葉が少ない

いつも「うれしい」「悲しい」で終わる。
気持ちを表す言葉を集めておくとよいです。読んだ本から拾って、ノートに書きためると語彙が増えます。

やってみよう

Q1 なぜ作者は「うれしい」と直接書かないのですか。

A 読者が自分で気づいたほうが心に残るからです。だから行動や景色で表します。

Q2 気持ちが表れる場所を四つ言いましょう。

A 行動・会話・表情や体の様子・情景です。

Q3 「雨がしとしと降っていた」は、どんな気持ちを表していそうですか。

A 悲しみや重い気持ちです。ただし前後の場面によって変わるので、必ず文脈を確かめます。

Q4 今読んでいる本から、気持ちを表す言葉を5つ集めてみましょう。

A 「ほっとした」「もどかしい」など。知っている言葉が増えるほど、細かく読み取れます。

まとめ

おうちの方へ

物語の読み取りは、感性の問題だと思われがちですが、実際には技術です。どこを見れば気持ちが分かるかを知っていれば、誰でも読めるようになります。
お子さんが「なんとなく」で答えるときは、「どこにそう書いてあった?」と聞いてあげてください。根拠を探す習慣が、読解力の土台になります。
情景描写は、多くの子が読み飛ばします。「この景色、なんで書いてあると思う?」という問いかけが効果的です。
気持ちを表す言葉の語彙は、読書量に比例します。たくさん読むほど細かく読み取れるようになるので、好きなジャンルから読書量を増やしていくのが結局は近道です。