4年 国語 方言と共通語

方言と共通語 ── どちらが正しいのではなく、場面で使い分ける

方言はまちがった言葉ではありません。むしろ、その土地が育ててきた宝物です。

二つの言葉

日本語には、大きく分けて二つの姿があります。

方言 … その地域で使われている言葉 家族や近所の人と話すときに使う 共通語 … 日本中どこでも通じる言葉 放送・教科書・全国の人との会話で使う

たとえば「捨てる」を表す言葉を見てみましょう。

北海道 … 「なげる」 東北 … 「ぶんなげる」 関西 … 「ほかす」「ほる」 名古屋 … 「ほかる」 九州 … 「なげる」「うっちゃる」

同じ意味なのに、これだけちがいます。

ここで大事なのは、どれかが正しくて、他がまちがっているのではないということです。それぞれの地域で、長い時間をかけて育ってきた言葉なのです。

なぜ方言が生まれたのか

昔は、人がかんたんに移動できませんでした。山や川を越えるのは大変で、隣の地域とも交流が少なかったのです。

だから、それぞれの土地で言葉が独自に変化していきました。

面白いのは、古い言葉が地方に残っていることがある点です。

京都が日本の中心だったころ、 新しい言葉は京都から広がった。 → 中心から遠いところほど、 古い言葉が残っている 例:「かたつむり」を 「なめくじ」「つぶり」「でんでんむし」 と呼ぶ地域があり、 その分布が同心円になっている

つまり、方言は言葉の歴史の記録でもあるのです。方言を調べると、昔の日本語の姿が見えてきます。

方言のちがいは、言葉だけではありません。アクセント(音の高低)も地域で変わります。

「はし」 東京 … 「箸」は高→低、「橋」は低→高 京都 … 逆になる 同じ言葉でも、上げ下げがちがう

共通語はなぜ必要か

方言がすばらしいなら、共通語はいらないのでしょうか。そうではありません。

今は、人が日本中を移動します。テレビもインターネットも全国に届きます。地域を越えて通じる言葉がないと、困る場面が出てきます。

【共通語が必要な場面】 ・ニュースや天気予報 ・全国の人が集まる会議 ・教科書や新聞 ・災害時の避難の呼びかけ ・知らない土地で道をたずねるとき

とくに災害のときの情報は、全員に正確に伝わらなければなりません。ここで方言だけを使ったら、命に関わることもあります。

だから、共通語は「みんなで決めた共通のものさし」のようなものです。方言より偉いのではなく、役割がちがうのです。

場面に応じて使い分ける

4年生で学ぶいちばん大事なことは、使い分ける力です。

場面ふさわしい言葉
家族との会話方言でよい
地域の友だちと方言でよい
全校集会での発表共通語
他県の人との会話共通語
作文・レポート共通語

これは、服を場面で着替えるのと同じです。運動するときは体操服、式のときは制服。どちらが偉いということはなく、場面に合わせているだけです。

言葉も同じ。相手と場面を考えて選ぶ。それが言葉を使いこなすということです。

方言のよいところ

共通語はどこでも通じますが、方言にしか表せない気持ちもあります。
「なおす」(片づける・西日本)、「えらい」(疲れた・中部)、「なんくるないさ」(なんとかなる・沖縄)。
共通語に直すと、少しちがう感じになってしまう言葉があるのです。
方言は、その土地の文化や考え方をふくんでいます。方言を大切にすることは、自分の育った土地を大切にすることでもあります。

方言を調べてみる

自分の住む地域の方言を調べると、いろいろな発見があります。

【調べ方】 ① おじいさん・おばあさんに聞く → いちばん方言をよく知っている ② 家族に「昔なんて言ってた?」と聞く ③ 地域の資料館や図書館で調べる ④ 他の地域の友だちと比べる

とくにお年寄りに聞くのがおすすめです。若い世代ほど共通語に近づいているため、昔ながらの方言を知っているのは年上の世代なのです。

実は今、方言は少しずつ消えつつあります。テレビやインターネットの影響で、若い人が方言を使わなくなっているからです。

言葉が消えるということは、その土地の文化の一部が消えるということでもあります。だから今、方言を記録して残そうという取り組みが各地で行われています。

調べたことを発表するとき、方言そのものは方言のまま伝えます。でも説明は共通語で書く。ここでも使い分けが必要になります。

物語の中の方言

物語や小説を読んでいると、登場人物が方言で話す場面があります。

これには理由があります。方言で話させると、その人がどこの人か、どんな暮らしをしてきたかが一瞬で伝わるのです。

「そうですね」 → どこの人か分からない 「そうやなあ」 → 関西の人だと分かる 「んだんだ」 → 東北の人だと分かる

説明を書かずに人物像を伝えられる。これは書き手にとって便利な方法です。

さらに、方言には温かみや親しみが感じられることもあります。おじいさんやおばあさんが方言で語ると、その言葉に長い人生がにじみます。

ただし、地の文(会話以外の部分)は共通語で書かれるのがふつうです。会話だけ方言、説明は共通語。この使い分けにも意味があります。誰にでも読めるようにしつつ、人物の個性は残しているのです。

物語を読むとき、登場人物の言葉づかいに注目してみてください。言葉そのものが、その人を語っていることに気づけます。

つまずきやすいところ

その1 方言を「まちがい」だと思う

方言を使うことをはずかしがる。
方言は、その土地で長い時間をかけて育った正当な日本語です。おとっているわけではなく、場面に応じて使えばよいだけです。

その2 自分の言葉が方言だと気づかない

共通語だと思って使っていたら、他県で通じなかった。
これはよくあることです。他の地域の人と話すと気づけます。気づいたら、共通語の言い方も覚えておきます。

その3 作文で方言を使ってしまう

会話文以外でも方言で書く。
作文は共通語で書くのが原則です。ただし、会話文の中なら方言を使ってよく、かえって人物らしさが出ます。

やってみよう

Q1 方言と共通語、どちらが正しい言葉ですか。

A どちらも正しい言葉です。役割がちがうだけで、場面によって使い分けます。

Q2 共通語が必要なのはどんな場面ですか。

A ニュース、教科書、全国の人との会話、災害時の情報など。全員に正確に伝える必要がある場面です。

Q3 なぜ地方に古い言葉が残っているのですか。

A 新しい言葉が中心から広がるため、遠い地域ほど古い形が残るからです。

Q4 家族に「昔使っていた方言」を聞いてみましょう。

A おじいさん・おばあさんに聞くと、今は使われていない言葉が出てくるかもしれません。

まとめ

おうちの方へ

この単元で最も伝えたいのは、「方言は劣った言葉ではない」という価値観です。かつて学校で方言を禁じた時代もありましたが、現在の国語教育では方言の価値を認めたうえで、共通語との使い分けを教えます。
お子さんが方言を恥ずかしがるようなら、「それはこの土地の言葉だよ」と伝えてあげてください。自分の言葉に誇りを持つことは、自分の育った場所を肯定することにつながります。
方言の調査は、家庭でこそできる学習です。祖父母がいらっしゃれば、ぜひ話を聞く機会を作ってください。世代間の交流にもなり、消えつつある言葉の記録にもなります。
引っ越し経験のあるご家庭なら、二つの地域の言葉を比べるだけで生きた教材になります。