3年 社会 地いきにつたわるお祭りと年中行事

地いきにつたわるお祭りと年中行事 ── 同じ日に、同じことをくり返す理由

近所の神社のお祭りは、毎年ほとんど同じ時期にあります。だれが「いつやるか」を決めているのでしょうか。そして、なぜ何十年も同じ日をくり返すのでしょうか。

前の単元とのつながり

「市のうつりかわり」では、道具や乗り物が新しくなると人々のくらしも変わっていくことを学びました。せんたく板は洗たく機になり、かまどはガスこんろになりました。くらしの多くは、便利な方に置きかわってきたのです。

ところが、置きかわらずに残ったものがあります。それがお祭り年中行事です。太鼓をたたき、みこしをかつぎ、同じ道を通る。もっと楽な方法があるのに、わざと昔のやり方を守っています。

ここに、この単元のいちばんおもしろい問いがあります。「便利さで置きかえてはいけないもの」を、地いきの人はなぜ選んで残しているのかということです。

年中行事は、一年のカレンダーに並んでいる

年中行事とは、毎年きまった時期にくり返される行事のことです。全国どこでも見られるものと、その土地だけのものがあります。

【一年の年中行事の例】 1月 正月・どんど焼き(正月かざりを燃やす) 2月 節分(豆まき) 3月 ひな祭り 5月 田植え・端午の節句 7月 七夕・夏祭り 8月 お盆(先ぞをむかえる) 9月 お月見 11月 秋祭り・七五三 12月 大みそか

この表を上から下まで見ると、あることに気づきます。行事の多くが、田や畑の仕事の区切りに置かれているのです。

春の行事は「これから米を作るので、うまくいってほしい」という願い。秋の行事は「今年もとれた、ありがとう」というお礼。夏の行事は、作物が育つ大事な時期に、台風や病気の害が出ないようにという願いでした。

つまり年中行事は、思いつきで散らばっているのではありません。米づくりの一年に合わせて置かれた、地いきの共通のリズムだったのです。

お祭りの日は、だれが決めたのか

お祭りの日づけは、市役所が決めているわけではありません。多くはその神社やお寺に古くから伝わってきた日で、何百年も変わっていないものもあります。

ただし今は、少しずつ「動かす」判断がされています。平日にすると働いている人が参加できないため、もとの日にいちばん近い土曜・日曜にずらす地いきが増えました。

【変えないもの / 変えてよいもの】 変えない … 神社での儀式の順番、みこしの通る道、太鼓のリズム 変えてよい … 開さいの曜日、時間帯、係の分たん方法 → 「中身」は守り、「やり方」は今に合わせる

この線引きが大事です。全部を昔のままにすると人が集まらず、続けられません。かといって全部を変えると、それはもう別の行事になってしまいます。どこまで変えてよいかを、地いきの人たちが話し合って決めているのです。

お祭りを支えている人たち

お祭りの当日、見えているのはみこしや屋台です。しかし当日までに、たくさんの人が動いています。

【一つのお祭りを支える人】 ・自治会/町内会 … 全体の計画、お金の集め方、当日の係の割りふり ・保存会 … 太鼓や おどりを次の世代に教える ・神社の人 … 儀式を行う ・消防団・けいさつ … 道路の通行止め、けが人への対応 ・市役所 … 道路使用の許可、ごみの回収 ・子ども会 … 子どもみこし、かざりづくり

「市役所の仕事」で学んだように、道路を一時的に通行止めにするには許可が必要です。お祭りは、地いきの人の力と、市の仕事の両方がかみ合って初めて成り立つ行事なのです。

そして、いちばん人手が必要なのは当日ではありません。太鼓の練習です。数か月前から夜に集まり、少しずつ音を合わせていきます。この時間があるから、当日の音がそろいます。

受けつぐことが、むずかしくなっている

今、多くの地いきでお祭りが「続けにくい」と言われています。理由は大きく三つあります。

【続けにくい理由】 ① 子どもや若い人が減った → みこしをかつぐ人が足りない ② 引っこしてきた人が多い → 行事を知らない人がふえた ③ 教える人が高れいになった → 太鼓やおどりの伝え手が減った

そこで、こんな工夫が始まっています。近くの地いきといっしょに開く。子どもみこしを軽く作りかえる。動画で太鼓のたたき方を記録して残す。引っこしてきた家にも案内を配って、初めての人でも参加しやすい係を用意する。

どれも「昔のまま」ではありません。それでも中心にあるものは同じです。人が集まる理由を、毎年一度だけ、意図してつくり出しているということです。

自分の地いきの行事を調べる手順

この単元は、教科書を読むだけでは終わりません。自分の住む場所を調べて初めて意味が出ます。次の順で進めると、まとまった調べ学習になります。

【調べ方の手順】 1 いつ・どこで あるかを確かめる(市の広報、神社の けいじ板) 2 いつから続いているかを調べる(図書館の郷土しりょう) 3 だれが準備しているかを聞く(自治会の人、保存会の人) 4 何を守り、何を変えたかを聞き取る 5 分かったことを年表か地図にまとめる

4番が、この調べ学習のいちばんの見どころです。「昔と今でちがうところはありますか」と一つ聞くだけで、地いきの人が悩んで決めてきたことが見えてきます。

聞き取りをするときは、先に質問を紙に書いておくと落ち着いて聞けます。答えをその場でメモし、あとで「つまりどういうことか」を自分の言葉で書き直すと、写しただけの記録になりません。

やってみよう

Q1 春と秋に行事が多いのは、どんな仕事と関係がありますか。

A 米づくり。春はうまくいくようにという願い、秋はとれたことへのお礼。

Q2 お祭りの開さい日を、もとの日から近い土日にずらす地いきがあるのはなぜですか。

A 平日だと働いている人や子どもが参加しにくいから。参加できる人をふやして続けるための工夫。

Q3 お祭りで道路を通行止めにするには、どこの許可が必要ですか。

A 市役所やけいさつ。地いきの人の力だけでは行えない。

Q4 地いきの人に聞き取りをするとき、いちばん大事な質問はどれですか。

A 「昔と今でちがうところはありますか」。守ったものと変えたものが同時に分かる。

まとめ

おうちの方へ

この単元は、家庭での一言が学習の入り口になります。「うちの近所のお祭りは何月だった?」と話題にするだけで、子どもは自分ごととして考え始めます。
お住まいの市区町村の広報紙やウェブサイトには、年間の行事予定がのっていることが多くあります。図書館の郷土しりょうのコーナーには、地いきの行事の由来をまとめた本が置かれている場合もあります。
聞き取りをする場合は、相手の都合をうかがってから、短い時間で行うようにしてください。自治会の役員をされている方や、長く住んでいるご近所の方が答えやすい相手です。
ご家庭の出身地が今の住まいと別の場合は、その土地の行事とくらべると学習が深まります。同じ「夏祭り」でも、地いきによってやることがまったくちがうと気づくことが、この単元のねらいに直結します。