3年 社会 農家・工場の仕事

農家・工場の仕事 ── 作るだけでは、仕事は終わらない

野菜を育てる、製品を作る。それだけでは私たちの手には届きません。その先に何があるのでしょうか。

前の単元とのつながり

「店ではたらく人」で、商品には産地があると学びました。

キャベツは群馬県、たまねぎは北海道。では、その産地では何が起きているのか。それを調べるのがこの単元です。

【前の単元】店 ← 商品が来る 【この単元】産地・工場 → 商品を作る つながると… 作る(農家・工場) ↓ 運ぶ 集める(市場・倉庫) ↓ 運ぶ 売る(店) ↓ 買う(わたしたち)

この流れを追うと、1つの商品にたくさんの人が関わっていることが分かります。

農家の1年

農業には季節のリズムがあります。1年を通した仕事の流れがあります。

時期仕事
冬〜春土づくり、たねまき、なえづくり
春〜夏植えつけ、水やり、草取り、消毒
夏〜秋収かく、選別、出荷
秋〜冬片づけ、来年の準備、機械の整備

いちばん見落とされがちなのが「土づくり」です。作物を植える前に、何か月もかけて土を準備します。

よい土でないと、よい作物は育ちません。肥料を混ぜ、耕し、休ませる。目立たない仕事ですが、これが収かくを決めます。

そして、農家の仕事は毎日続きます。水やり、草取り、虫の確認。1日休むと、作物に影響が出ます。

2年生の生活科で野菜を育てた経験が、ここで生きます。あのときの世話を、何百倍の規模でやっているのが農家です。

農家の工夫

農家には、たくさんの工夫があります。なぜその工夫をするのかを考えるのがこの単元です。

工夫目的
ビニールハウス寒い時期でも育てられる、雨風から守る
時期をずらして植える収かく時期を分散、長く出荷できる
品種を選ぶ病気に強い、おいしい、育てやすい
農薬を減らす安全な作物を求める人が増えたから
機械を使う人手不足、作業が楽になる
選別する大きさをそろえて売りやすくする

とくにビニールハウスは重要です。これによって季節に関係なく作物が作れるようになりました。

冬にトマトやきゅうりが食べられるのは、ハウス栽培のおかげです。ただし、冬に暖房を使うので、燃料代がかかります。だから冬の野菜は高くなります。

そして「時期をずらす」工夫も面白いところです。同じ野菜を、少しずつ日をずらして植える。すると収かくも少しずつずれて、長い期間出荷できます

一度に全部できてしまうと、売り切れません。計画的に作るのも農家の仕事です。

出荷までの流れ

収かくしたら終わりではありません。ここからが大変です。

  1. 収かく 早朝、涼しいうちに
  2. 洗う・切る 土を落とし、形を整える
  3. 選別する 大きさ・形で分ける
  4. 箱づめ 傷まないように詰める
  5. 出荷 トラックで市場や店へ

③選別が意外と大変な作業です。大きさをそろえないと、箱に入らないし、値段もつけられません。

そして、ここで問題も起きます。形が悪い野菜は売れないのです。味は同じでも、曲がったきゅうりや小さすぎるトマトは、店に並びません。

これを規格外野菜といい、捨てられることもあります。近年は「もったいない」として、安く売ったり加工品にしたりする動きが広がっています。

また、収かくは早朝が基本です。涼しいうちに取ると、野菜が長持ちするからです。農家の朝は、とても早いのです。

新せんさを保つ工夫

野菜は取ったときから鮮度が落ちていきます。だから、時間との戦いです。
朝取りして、その日のうちに出荷
保冷トラックで運ぶ
産地直送で市場を通さない
「朝取り野菜」と書いてあるのは、この工夫の結果です。

工場の仕事

工場も、地域によって作っているものが違います。

工場の種類作るものその土地にある理由
食品工場パン、お菓子、飲み物原料の産地が近い、消費地が近い
伝統工芸焼き物、織物、漆器昔からの技術、原料がある
機械工場部品、機械交通が便利、関連工場が近い

工場も、そこにある理由があります。原料が近い、運びやすい、技術がある。偶然その場所にあるわけではありません

工場の工夫も、農家と似ています。

とくに衛生管理は、食品工場の見学でいちばん印象に残るところです。エアシャワーでほこりを落とし、白い服に着替え、手を何度も洗う。ここまでやるのかと驚きます。

なぜでしょうか。食べ物だからです。1つでも問題があれば、多くの人の健康にかかわります。

地産地消という考え方

最近よく聞く言葉に地産地消(ちさんちしょう)があります。

地産地消 = 地域で作ったものを、地域で消費する

この考え方には、いくつかの良さがあります。

良い点説明
新せん運ぶ距離が短いので、すぐ届く
安心誰が作ったか分かる
環境によい運ぶための燃料が少なくてすむ
地域が元気に地元の農家が続けられる

学校給食でも、地元の野菜を使う取り組みが広がっています。給食だよりに「今日のにんじんは○○市産です」と書いてあることがあります。

ただし、すべてを地産地消にはできません。バナナやコーヒーは日本ではほとんど作れません。冬に採れない野菜もあります。

だから、地元のものと遠くのもの、両方を使い分けるのが現実です。

この視点は、5年生の「これからの食料生産」で本格的に学びます。食料自給率、輸入、地産地消──日本の食を考える大きなテーマです。

つまずきやすいところ

その1 「作る」だけに注目する

育てる・作る部分しか見えていない。
その後の流れまで追います。選別・箱づめ・輸送・販売。手元に届くまでが仕事です。

その2 工夫の理由を考えない

「ビニールハウスがあった」で終わる。
「なぜ使うの?」と問います。寒さから守る、雨風を防ぐ、時期をずらす。目的とつなげます。

その3 自分の生活とつながらない

遠い世界の話だと感じてしまう。
給食や食卓とつなげる。「今日の給食のキャベツは、どこで誰が作ったんだろう」。自分が食べているものだと気づくと、興味がわきます。

やってみよう

Q1 農家が土づくりに時間をかけるのはなぜですか。

A よい土でないと、よい作物が育たないから。目立たないが大事な仕事です。

Q2 ビニールハウスを使うと、どんなよいことがありますか。

A 寒い時期でも育てられる、雨風から守れる、収かく時期を調整できる。

Q3 なぜ収かくは早朝にするのですか。

A 涼しいうちに取ると、野菜が長持ちするから。

Q4 地産地消の良い点を2つ挙げましょう。

A 新せん、安心、運ぶ燃料が少ない、地域の農家が続けられる、など。

まとめ

おうちの方へ

この単元は、食卓との結びつきが強い内容です。食事のときに「これはどこで作られたと思う?」と聞くだけで、学習の復習になります。
直売所や道の駅に行く機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。生産者の名前が書かれた野菜を見ると、「誰かが作っている」という実感がわきます。
また、規格外野菜の話も伝える価値があります。「曲がったきゅうりは味が同じなのに売れない」──もったいないという感覚と、社会の仕組みの両方を考えるきっかけになります。
給食だよりに産地が書いてあれば、地図で確認してみてください。地理の学習にもつながります。