学校のまわりを地図にしたら、次は市全体です。歩いて行けない広さを、どうやってつかむのでしょうか。
「学校のまわり」の単元では、実際に歩いて調べました。でも市全体となると、そうはいきません。
ふつうの市は、はしからはしまで10km以上あります。歩けば何時間もかかります。
だから、調べ方が変わります。自分の足のかわりに、地図と資料を使うのです。
| 調べたいこと | 使うもの |
|---|---|
| 市の形・広さ | 市の地図、白地図 |
| 土地の高さ | 色分けされた地図、立体模型 |
| 交通 | 路線図、道路地図 |
| 公共しせつの場所 | 市のパンフレット、市のホームページ |
| 人の数 | 市の統計、市勢要覧 |
ここで初めて、「人が作った資料を読んで調べる」という学び方が登場します。これは4年生以降、ずっと使い続ける方法です。
市の地図をいきなり見ても、情報が多すぎて何も見えません。見る目を4つに分けるとうまくいきます。
| 目 | 見るもの | 問い |
|---|---|---|
| ① 土地の高さ | 山・丘・平地・川 | 高いところはどこ? |
| ② 交通 | 駅・線路・大きな道路 | 人はどう動く? |
| ③ 公共しせつ | 市役所・図書館・病院 | だれのためにある? |
| ④ 土地の使われ方 | 住たく・店・工場・田畑 | なぜそこにある? |
1回に1つずつ、白地図に書きこんでいきます。4枚の白地図を作るつもりでやると、混ざりません。
そして最後に4枚を重ねて見ると、「まちの形」が浮かび上がります。
市の地図には、色がついているものがあります。
色を見れば、その市が平らなのか、山が多いのかが一目で分かります。
そして、ここに大事な事実があります。
ほとんどの市で、家や店は平らで低い土地に集まっています。
理由は単純です。家を建てやすい、道路を作りやすい、水を運びやすい。山の斜面に町を作るのは大変だからです。
そして、その平らな土地はたいてい川がつくったものです。長い年月をかけて川が土を運び、平地ができ、そこに人が住みついた。川と人のくらしは、いつもセットになっています。
この「川 → 平地 → 人が住む」というつながりは、5年生の「国土のようす」でもう一度出てきます。3年生のうちに、自分の市で体験しておくと理解が深まります。
次に、駅・線路・大きな道路を書きこみます。
すると、たいてい次のことに気づきます。
ここで「なぜ?」を考えます。
交通が先にあって、そこに人と店が集まる。この順番が分かると、まちの成り立ちが見えてきます。
市役所、図書館、市民体育館、公園、消防署、病院。これらを公共しせつといいます。
| お店 | 公共しせつ | |
|---|---|---|
| 作った人 | 会社や個人 | 市(みんなのお金) |
| 目的 | もうけるため | みんなのため |
| なくなる? | もうからなければ閉店 | 簡単にはなくならない |
公共しせつは税金で作られ、運営されています。だから「もうからないから閉める」ということが起きにくいのです。
そして場所の決め方にも特徴があります。お店が駅前に集中するのに対して、公共しせつは市の中にちらばっています。消防署も学校も、遠すぎると困る人が出るからです。
この話は「市役所の仕事」の単元とまっすぐつながります。
最後に、土地の使われ方を色分けします。「学校のまわり」でやったことを、市全体に広げるだけです。
多くの市が、この「輪のような形」になっています。中心から外へ向かって、使われ方が変わっていく。
もちろん例外もあります。海に面した市なら、海ぞいに港と工場が並びます。高速道路のインターチェンジの近くに、大きな倉庫や工場ができることもあります。
大事なのは、自分の市がどんな形をしているかを、自分の目で確かめることです。教科書に書いてある形と違っていても、それが正解です。
市の地図は文字も線もぎっしりです。全部見ようとすると疲れてしまいます。
「今日は駅と線路だけ」と決めて、それ以外は無視します。1回1テーマ。これで急に読めるようになります。
ふだんの会話では両方「まち」と言うので混ざります。
社会科の「市」は、市役所が1つある、行政のまとまりです。住所の「○○市」がそれです。「まち」は感覚的な言葉、「市」はきちんと境目のある区切り、と分けて教えます。
「あっちのほう」で済ませてしまう。
市全体を扱うようになると、方位なしでは説明が成立しません。「市の北がわは山」「南に川が流れている」。前の単元で学んだ8方位を、ここで実際に使わせます。
Q1 市を調べるとき、なぜ歩いて回るだけではだめなのですか。
A 市は広すぎて歩ききれないから。地図や資料を使って調べます。
Q2 家や店は、高い土地と低い土地のどちらに多いですか。
A 低くて平らな土地。建物も道路も作りやすいからです。
Q3 線路が平地をまっすぐ通っているのはなぜですか。
A 電車は急な坂やカーブが苦手だから。平らな土地がえらばれました。
Q4 図書館と本屋さんは、何がちがいますか。
A 図書館は市が税金で作った公共しせつ、本屋さんはもうけるためのお店です。
Q5 自分の市を、方位を使って説明してみましょう。
A 「北がわに山があって、南に川が流れている。駅は市の真ん中あたり」のように言えたら合格です。
Q5は、地図を見ながらでかまいません。見ながら言葉にすることが練習になります。
そして、もう一歩進めるなら「もし駅がなかったら、この市はどうなっていたか」と聞いてみてください。答えは出なくていいのです。まちの形に理由があると気づくことが、社会科の入り口になります。
この単元は「暗記もの」に見えて、じつは見方を育てる単元です。市の名前や施設名を覚えることより、「なぜここにあるのか」と考える習慣のほうが、あとあと効いてきます。
おすすめは、車や電車で移動するときに窓の外を見ながら話すことです。「今、家が減って畑が増えたね」「もうすぐ駅だから建物が高くなってきた」。移動そのものが、市を横切る観察になります。
地図アプリの航空写真も強力です。自分の市を上から見て、緑の多いところ、灰色のところを探すだけで、土地の使われ方が体感できます。
もう一つ、市のホームページには市の広さ・人口・特産品がまとまっています。調べ学習の材料として、そのまま使えます。