計算ドリルを20問解いて、最後にこたえのページを開き、上から順に○をつけていく。×が2つあったので、赤えんぴつで正しい答えを書いて終わり。──よくある丸つけです。でも、この20分のうち、力がついたのはどこだったでしょうか。じつは丸つけは、解いている時間より大事になることがあるのです。
ふしぎな言い方に聞こえるかもしれません。でも考えてみてください。すでに全問できる問題を20問解いても、あなたは1ミリもかしこくなりません。時間が過ぎただけです。
ドリルが配られる本当の理由は、「まだできていないところを、あなたに見つけてもらうため」です。20問のうち18問は、あなたがもうできることの確認。のこりの2問こそが、そのドリルの中身なのです。
ということは、×を見つける作業=丸つけこそが、ドリルの本番だということになります。解くのは、×を見つけるための準備です。
この順番がひっくり返っていると、「宿題をやったのに、テストでできない」ということが起こります。解くところで力を使いきって、いちばん大事な丸つけを、だるい後片づけとしてすませてしまっているからです。
×がつくのがいやで、つい答えを見ながら解いてしまう。あるいは、まちがえたところをこっそり書き直して○にしてしまう。気持ちはとてもよく分かります。
でも、×の正体をはっきりさせておきましょう。×は「あなたがダメだった」というしるしではありません。「ここを直せば点が増える」という場所を教えてくれる矢印です。
宝の地図に×印がついていたら、そこを掘りますよね。丸つけの×も同じです。掘る場所を教えてくれているのです。
「全部○だった」=いい勉強ができた、ではありません。全部○なら、それはすでに知っていることを20回くりかえしただけ。新しく手に入れたものはゼロです。
ときどき×が出るくらいの問題を選ぶほうが、じつは伸びます。
だから、○の数を数えて一喜一憂する必要はありません。数えるべきなのは、「今日、直せた×の数」のほうです。
ここが、多くの人が損をしているところです。ふつうは全部解き終わってから、まとめて丸つけをします。でも、これにはひとつ大きな問題があります。
20問全部解いてから丸つけをすると、何がこまる?
1問目をどう考えたか、もう覚えていない
1問目で×だったとき、「なんでこう書いたんだっけ」が思い出せません。思い出せないと、まちがえた理由が分からない。理由が分からないと、赤で正しい答えを写すことしかできません。それでは、次も同じまちがいをします。
おすすめは、区切りごとに丸つけをするやり方です。
5問ずつでも、1ページごとでもかまいません。大事なのは、自分の頭の中がまだ残っているうちに答え合わせをすることです。
もうひとつ利点があります。1問目のやり方をまちがえていた場合、まとめて丸つけだと20問ぜんぶが×になります。5問ごとなら、×は5問でとまる。まちがったやり方を15回も練習しなくてすむのです。
やり方を決めておくと、毎回まよわずにできます。
ポイントは5番です。赤えんぴつで正しい答えを書きうつすのは、「直し」ではなく「写し」です。写している間、頭はほとんど働いていません。手だけが動いています。
直しとは、答えをかくして、もう一度自分で解くこと。それができてはじめて、その×は○に変わったと言えます。
ここが、丸つけでいちばん差がつくところです。×はぜんぶ同じに見えますが、中身は3種類あり、直し方がまったくちがいます。
| ×の種類 | どんなとき | 直し方 |
|---|---|---|
| ①うっかり | やり方は合っていたのに、数を書きまちがえた・くり上がりを忘れた | その場で解き直す。次回は見直しの方法を変える |
| ②あいまい | なんとなくで解いた。当たるときもある | 教科書のその単元を読み直す |
| ③わからない | まったく手が出ない。何をすればいいのか思いつかなかった | 前の学年・前の単元にもどる |
たとえば「23÷4=5あまり3」を「4あまり7」と書いてしまった場合。これは①でしょうか、③でしょうか。
見分け方は、「答えを見る前に、自分でおかしいと気づけたか」です。「あまりはわる数より小さい」というきまりを知っていて、たまたま確認をわすれただけなら①。きまり自体を知らなかったなら②です。
①を教科書から読み直すのは時間のむだですし、③をその場で解き直そうとしても、解けるようにはなりません。種類が分かってはじめて、正しい手当てができるのです。
3年生のうちは、①なのか②なのかを自分で決めるのがむずかしいこともあります。そのときは×のよこに「たぶん①」と書いておくだけで十分です。当たっているかどうかより、分けようとしたことに意味があります。
力がつかないどころか、逆に損をしてしまう丸つけがあります。
これをすると、ドリルはただの書き写しになります。しかも本人には「できた」という感じが残るので、テストの日まで、できないことに気づけません。いちばん高くつくやり方です。
×が消えても、できないことは消えません。消えるのは、あとで見直すための手がかりだけです。テスト前に見返したとき、どこが弱いのかが分からなくなります。
まちがえた式の上から、正しい式を書いてしまう。こうすると、自分がどう考えてまちがえたのかが読めなくなります。まちがえた式は消さずに残し、直しは下やよこに書きましょう。まちがえた考え方こそが、次に同じ失敗をふせぐ資料です。
おうちの人がつけてくれると楽ですが、そのときいちばんおいしいところ(×さがし)を人にわたしていることになります。まずは自分でつけて、そのあと見てもらう。この順番がおすすめです。
自分で丸つけができるというのは、「自分の答えが正しいかどうかを、自分で判断できる」ということです。これは、算数のかなり大きな力です。
たとえば、あまりのあるわり算では「あまり<わる数」を確かめれば、答えを見なくても自分で×が見つけられます。かけ算のひっ算なら、けたの数がだいたい合っているかで気づけます。答えのページがなくても丸つけができる場面は、思ったより多いのです。
この予想が当たるようになると、テストの見直しで本当にまちがいを見つけられるようになります。見直しても何も見つからない、という人の多くは、「あやしいところ」の見当がついていないのです。
4年生になると、テストが返ってきたあとの「テスト直し」が本格的に始まります。そこでやることは、じつは今日の丸つけとまったく同じです。ふだんの宿題で丸つけをきたえている人は、テスト直しでもすぐに手が動きます。
18問正解だった、という数字だけ見て終わる。
見るべきは残りの2問です。ノートの日づけのよこに「今日直した×:2」と書く習慣をつけると、見る場所が自然に変わります。
直したその場ではできるのに、1週間後にまた同じところでまちがえる。
直した問題に印をつけておき、数日後にもう一度だけ解く。これで定着がまったくちがいます。印をつけるのは、そのためでもあります。
半分以上×だったら、それは問題がむずかしすぎる合図です。あなたの問題ではありません。前の単元か、前の学年にもどりましょう。×が2〜3個で止まるくらいの問題が、いちばん伸びる場所です。
Q1 ドリル20問がぜんぶ○でした。この勉強で、新しく手に入れたものは?
A ほとんどありません。もうできることの確認です。次はもう少しむずかしい問題に進みましょう。
Q2 「32÷5=5あまり7」と書いて×でした。これは①うっかり・②あいまい・③わからない、のどれ?
A 「あまり<わる数」を知っているなら①(確認わすれ)。知らなかったなら②。正しくは6あまり2です。
Q3 ×の問題を、赤えんぴつで正しい答えに書きなおしました。これで直しは終わり?
A まだです。それは「写し」です。答えをかくして、もう一度自分で解けたら終わりです。
Q4 20問を5問ずつに分けて丸つけをする利点を、2つ言えますか。
A ①まちがえた理由を覚えているうちに確認できる ②まちがったやり方のまま最後まで解き続けずにすむ。
Q1とQ3は、大人でもうっかりまちがえるところです。「やった量」ではなく「変わった量」で勉強を見る、という考え方に慣れていきましょう。
丸つけは、家庭学習の中で唯一「大人が代わりにやってしまいがちな工程」です。時間はかかりますが、まずお子さん自身につけさせ、そのあとで確認する順番に変えるだけで、同じ宿題の意味が変わります。
声のかけ方としては、「何問できた?」より「今日はどこが×だった?」のほうが効果的です。前者は結果を、後者は次にやることを見る問いかけだからです。×を報告しても叱られないと分かると、子どもは自分から×を見せるようになります。
×の3分類は、はじめは大人が一緒に仕分けてあげてください。「これはやり方は合ってたね、ただの書きまちがい」と言ってもらえると、子どもは自分の×が全部同じ重さではないことを知ります。これが分かるだけで、×への恐怖はかなり減ります。
なお、半分以上×が出る教材は、難易度が合っていないサインです。学年どおりの教材にこだわらず、一段もどす判断をしてあげてください。もどることは遅れではなく、いちばん速い近道です。