まるい形、では説明になりません。円には正確な定義があり、それが分かるとコンパスを使う理由も分かります。
「円ってどんな形?」と聞かれたら、多くの人は「まるい形」と答えます。でもそれでは、たまご形やだ円との区別がつきません。
算数では、円をこう定義します。
この「同じきょり」が円のすべてです。どこか1か所でもきょりが違えば、それは円ではありません。
| ことば | 意味 |
|---|---|
| 中心 | まん中の点 |
| 半径(はんけい) | 中心から円までの直線。またはその長さ |
| 直径(ちょっけい) | 中心を通って、円の端から端までの直線 |
そして、いちばん大事な関係がこれです。
直径は、半径2本ぶんです。中心から片側へ1本、反対側へ1本。合わせて直径になります。
コンパスを使うと、きれいな円が描けます。なぜでしょうか。
答えは単純です。コンパスは、針とえんぴつの間のきょりを変えない道具だからです。
つまり、コンパスは円の定義をそのまま道具にしたものです。「同じきょりの点を集める」を機械的にやっているのです。
これが分かると、コンパスの使い方のコツも見えてきます。
とくに「針を動かさない」が最重要です。針がずれると、中心からのきょりが変わってしまいます。
じつはコンパスには、もう一つ大きな使い方があります。長さを写しとることです。
ものさしで測って書き写すより、正確で速いのがコンパスです。ものさしだと「4.7cmくらい」と読み間違えることがありますが、コンパスなら長さそのものを移せます。
この使い方は、こんな場面で活躍します。
とくに三角形の作図では、コンパスが必須です。「辺の長さが3cm・4cm・5cmの三角形」を描くには、コンパスで長さを写しとる技術が必要になります。
だから、この単元ではコンパスに慣れること自体が目標でもあります。円をたくさん描き、模様を作り、長さを写す。手が覚えるまで使うことに意味があります。
円を立体にしたものが球です。ボール、ビー玉、地球。
球の定義も円とまったく同じです。1つの点から同じきょりにある点を、空間ぜんぶで集めた形。
球にも中心・半径・直径があります。そして、球には円にない大きな特徴があります。
どの向きに切っても切り口は円。これは球だけの性質です。
そして、中心を通るように切ったとき、切り口の円がいちばん大きくなります。このときの円の直径が、球の直径です。
これは実験で確かめられます。ねん土で球を作って切ってみる、オレンジやリンゴを切ってみる。中心からずれるほど、切り口は小さくなることが目で分かります。
ボールの直径をはかるのは、意外と難しい問題です。ものさしを当てても、どこが直径か分からないからです。
そこで、こんな方法を使います。
2枚の板(または本)ではさんで、板の間のきょりをはかる。これで直径が正確に求められます。
なぜこれでよいのか。板は球に1点で接するので、板と板の間のきょりは、必ず球のいちばん太いところ=直径になるからです。
この考え方は「はしをそろえる」の応用です。1年生の「おおきさくらべ」から続く測定の基本が、ここでも生きています。
円は生活のあちこちにあります。しかも理由があって円になっているものが多いです。
・車輪:中心からのきょりが同じだから、なめらかに転がる
・時計:針が回るのに都合がよい
・マンホールのふた:どの向きでも穴に落ちない(四角だと対角線で落ちる)
「なぜ円なんだろう?」と考えると、円の性質が見えてきます。
途中で開き具合が変わる、針がずれる。
コンパス自体の問題のこともあります。ゆるいコンパスはネジを締める、それでもだめなら買い替えを検討してください。道具が悪いと、いくら練習しても上達しません。
また、紙のほうを回すやり方も試してみてください。コンパスを持つ手は動かさずにすみます。
「直径6cmの円を描きなさい」に、コンパスを6cmに開いてしまう。
コンパスの開き=半径です。直径6cmなら、半径は3cm。
問題文を読んだら、まず半径がいくつかを書き出す習慣をつけます。
頭の中で立体を切るのは難しい作業です。
実物を切って見せるのがいちばんです。ねん土、オレンジ、ゆで卵。実際に見ると一発で分かります。
Q1 半径5cmの円の直径は何cmですか。
A 5×2=10cm。
Q2 直径8cmの円を描くには、コンパスを何cmに開きますか。
A 8÷2=4cm。コンパスの開きは半径です。
Q3 球をどこで切ると、切り口の円がいちばん大きくなりますか。
A 中心を通るところ。このときの直径が球の直径です。
Q4 コンパスを使って、同じ長さの直線を2本引いてみましょう。
A 1本目の長さにコンパスを開き、そのまま移して印をつけます。ものさしより正確です。
Q5 円の中に引ける直線で、いちばん長いものは何ですか。
A 直径。中心を通る直線がいちばん長くなります。
Q5は、言われてみれば当たり前ですが、意識したことがない子が多い性質です。円の中に定規をあてて、いろいろな向きに直線を引いてみると確かめられます。中心を通ったときだけ、いちばん長くなるのです。
これは球の切り口の話とまったく同じ構造です。中心を通るときが最大──円でも球でも、中心が特別な点であることが分かります。
そして、この性質があるからボールの直径を板ではさんで測れるのでした。1つの性質が、別の場面で道具になる。算数の面白いところです。
この単元でつまずく子の多くは、コンパスの操作そのものが原因です。まずコンパスの状態を確認してください。ネジがゆるんで開き具合が変わるものは、練習しても上達しません。
使い方のコツは「紙を回す」ことです。手首をひねるより安定します。100円ショップのものでも、しっかりしたものを選んであげてください。
また「直径6cmの円」で半径3cmに開く、という変換は間違えやすいところです。問題を読んだら半径を書き出す習慣をつけると防げます。
球の切り口は、実物で見せるのが一番です。オレンジやゆで卵を切るとき、「中心を通ると切り口が大きいね」と一言添えるだけで、立体の感覚が育ちます。