この単元で本当に学ぶのは、風やゴムの性質ではありません。理科の実験のやり方そのものです。
2年生の生活科でも、風とゴムでおもちゃを作りました。3年生では何が違うのでしょうか。
| 2年 生活科 | 3年 理科 | |
|---|---|---|
| やること | 作って遊ぶ | 調べる |
| 知りたいこと | もっと速くしたい | 力と動きの関係 |
| やり方 | いろいろ試す | 条件を1つだけ変える |
| 記録 | 感想 | 距離を測って数値で |
2年生では「もっと速くしたい」と思って、いろいろ変えてみました。ゴムを太くして、車を軽くして、車輪を大きくして──。
でも、これでは何が効いたのか分かりません。3つ同時に変えたら、どれのおかげか判断できないのです。
3年生では、ここを厳密にします。変えるのは1つだけ。それが理科の実験です。
これが理科でいちばん大事なきまりです。
変えるのは1つ、ほかは全部そろえる。これで初めて「ゴムの長さのおかげで遠くまで走った」と言えます。
もし車も変えてしまったら、遠くまで走ったのがゴムのせいか車のせいか分かりません。
実験中に、うっかり別のことも変えてしまうことがあります。
・途中で違う車を使った
・床がざらざらの場所とつるつるの場所で試した
・強く投げてしまった
これでは結果を比べられません。実験前に「そろえるもの」を書き出しておくと防げます。
この考え方を条件制御といいます。3年生では言葉まで習いませんが、4年生・5年生・6年生とずっと使い続ける、理科の中心的な方法です。
理科の実験には、決まった流れがあります。
とくに①予想が大事です。予想せずに実験すると、ただの作業になってしまいます。
「なぜなら」をつけるのがポイントです。国語で学んだ「理由を言う」が、理科でも必要になります。
そして、予想が外れてもよいのです。むしろ、外れたときのほうが学びは大きい。「思っていたのと違った、なぜだろう?」から、本当の理解が始まります。
また、③結果と④考察は別のものです。ここも国語の「事実と感想を分ける」と同じ話です。
| 結果 | 考察 | |
|---|---|---|
| 内容 | 実際に起きたこと | そこから考えたこと |
| 例 | 5cmで3m、10cmで6m走った | のばす長さが2倍なら距離も約2倍になる |
| 人による | 変わらない | 解釈が分かれることも |
ゴムで動く車を使って、実際に調べてみます。
| ゴムをのばす長さ | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 平均 |
|---|---|---|---|---|
| 5cm | 2m80 | 3m10 | 2m90 | 約2m90 |
| 10cm | 5m60 | 6m20 | 5m90 | 約5m90 |
| 15cm | 8m40 | 9m00 | 8m70 | 約8m70 |
結果から分かることは何でしょうか。
ここで注目してほしいのが、3回ずつ測っていることです。
なぜ3回でしょうか。1回だけでは、たまたまかもしれないからです。手のはなし方が少しずれたり、床の状態が違ったり。何回か測って平均を出すと、確からしくなります。
これも理科の大事なきまりです。1回の結果で決めつけない。
そして、ゴムには限界もあります。のばしすぎると切れてしまう。また、何度も使うとゴムが伸びてしまい、同じ力が出なくなります。実験の途中でゴムを交換すると、条件が変わってしまうので注意が必要です。
風でも同じように調べます。送風機(せんぷうき)を使い、風の強さを変えます。
| 風の強さ | 走った距離 |
|---|---|
| 弱 | 約1m50 |
| 中 | 約3m20 |
| 強 | 約5m10 |
結論はゴムと同じです。力が大きいほど、動きも大きくなる。
風の実験では、そろえるべき条件がいくつかあります。
とくに送風機からの距離は忘れがちです。毎回同じ位置に車を置くよう、床に印をつけておきます。
また、風の実験では「ほ」を変える実験もできます。風の強さは同じにして、ほの大きさだけを変える。すると「風を受ける面が大きいほど、遠くまで走る」ことが分かります。
これも1つだけ変える実験です。同じ道具で、変える条件を変えれば、別のことが調べられます。
2つの実験から、共通の結論が出ます。
あたりまえに思えるかもしれません。でも、実験で確かめたことに意味があります。
そして、これは身のまわりで役に立つ知識でもあります。
また、力を調整するという考え方も生まれます。「遠くへ飛ばしすぎた」なら、力を弱くすればよい。力の大きさで結果をコントロールできると分かります。
この考え方は、6年生の「てこのはたらき」につながります。力の大きさと、はたらきの関係を数値で扱う単元です。
「ゴムも長くして、車も軽くしよう」としてしまう。
実験前に「変えるもの」「そろえるもの」を紙に書く。書いておくと、途中で気づけます。
1回測っただけで「こうだ」と決めてしまう。
3回は測る。ばらつきがあることを実感すると、複数回測る意味が分かります。
「ゴムを長くしたら遠くまで走ってすごかった」──「すごかった」は考察でも結果でもなく感想です。
結果は数値だけ、考察は「〜と言える」の形で書き分けます。国語の報告文と同じ区別です。
Q1 「ゴムを長くのばすと遠くまで走るか」を調べるとき、そろえる条件を3つ挙げましょう。
A 同じ車・同じゴム・同じ床・同じ向き・同じ人がはなす、など。
Q2 なぜ3回ずつ測るのですか。
A 1回だけではたまたまかもしれないから。何回か測って平均を出すと確からしくなります。
Q3 次のうち「結果」はどれですか。「10cmで6m走った」「思ったより遠くて驚いた」
A 前者。数値で書かれた事実が結果です。
Q4 風の力を強くすると、車の動きはどうなりますか。
A 遠くまで(速く)動く。力が大きいほど動きも大きくなります。
この単元は、理科の実験方法を学ぶ最初の機会です。「条件を1つだけ変える」という考え方は、6年生まで、そして中学・高校でもずっと使います。
家庭で実験の話を聞いたら、「ほかに変えたものはない?」と聞いてみてください。条件をそろえる意識が育ちます。
また、予想が外れたときこそ声をかけてあげてください。「思ってたのと違った」は、理科では貴重な経験です。「なんでだろうね」と一緒に考えるだけで十分です。
ゴム鉄砲や紙飛行機など、家でできる遊びでも「1つだけ変えて試す」ことができます。「今度はゴムだけ変えてみよう」と言うだけで、実験になります。