3年 理科 音のふしぎ

高い音は、大きい音ではない ── 音の高さを決めているのは、1秒間にふるえる回数

歌のときに「もっと大きい声で」と言われて、つい高い声を出してしまったことはありませんか。逆に「声が高すぎるよ」と言われて、小さい声にしてしまったことは。これは言いまちがいではなく、多くの人が本当に2つをひとまとめにして覚えているから起きます。音には、たがいに関係のない別々のつまみが2つついています。1つは大きさ、もう1つは高さです。この記事では、高さのほうのつまみだけを、ものさし1本で自分の手で回してみます。

教科書のどこに出てくるか

3年生の理科「音のふしぎ」では、音が出ているものはふるえていること、ふるえを止めると音も止まることをたしかめます。大きい音ほど大きくふるえる、というところまでは教科書に出てきます。ところが高い音と低い音のちがいが何なのかは、小学校ではほとんど説明されません。学校できちんと習うのは中学生になってからです。

それなのに、みなさんは毎日のように高さを使っています。音楽ではドレミを歌い、リコーダーで穴をふさぎ、体育館では低い声の先生と高い声の先生の区別を一瞬でつけています。使っているのに理由を習わないところは、たいてい頭の中でとなりの考えとくっついてしまいます。音の場合、そのとなりにあるのが「大きさ」です。

まず、ごちゃまぜになっている2つを分ける

音について何か言うとき、わたしたちは2種類のことを言っています。1つは「よく聞こえる/聞こえない」という話。もう1つは「ピーという感じ/ブーという感じ」という話です。前者が大きさ、後者が高さです。

大きさ高さ
言い方大きい・小さい高い・低い
つまみの正体どれだけ大きくふるえるか1秒間に何回ふるえるか
遠くへ行くと小さくなる変わらない
音楽で使う場面強く弾く・弱く弾くドを弾く・ソを弾く

3行目がいちばん分かりやすい見分け方です。校庭のはしから聞こえる笛の音は、耳もとで聞くよりずっと小さいけれど、低くはなっていません。同じ笛の音として聞こえます。もし大きさと高さが同じものなら、遠ざかるほど音はどんどん低くなっていくはずですが、そんなことは起きません。

2つが別々だということは、組み合わせが4通りあるという意味でもあります。

       小さい     大きい  高い    耳もとの蚊   ふえ・ホイッスル  低い    遠くのトラック 太鼓・大だいこ

蚊の羽音を思い出してください。ほとんど聞こえないくらい小さいのに、とても高い音です。大だいこはその逆で、体にひびくほど大きいのに、うんと低い音です。この2つが同時に成り立っているだけで、「大きい=高い」ではないことがはっきりします。

高さを決めているのは「1秒間に何回ふるえるか」

音が出ているものはふるえています。そのふるえには、ふれはばと回数という、数えられるものが2つあります。

ふれはば(どれだけ大きく行ったり来たりするか)  小さい  ─\_/─\_/─  → 小さい音  大きい  ─\ /─\ /─         \/   \/   → 大きい音 回数(1秒間に何回行ったり来たりするか)  少ない  \_/\_/\_/  → 低い音  多い   \/\/\/\/\/ → 高い音

上の2つは、たがいに邪魔をしません。大きくふるえながらゆっくりふるえることも、小さくふるえながら速くふるえることもできます。だから音は、大きさと高さをそれぞれ自由に選べるのです。

人の耳が聞き取れるのは、だいたい1秒に20回から2万回までと言われています。これより少ないと、音というよりゆれとして体に感じます。これより多いと、鳴っていても人には聞こえません。犬をよぶための笛を吹いても人には聞こえないのは、笛がこわれているからでも音が小さすぎるからでもなく、回数が多すぎて人の耳の担当の外に出ているからです。犬の耳は、その外側まで担当しています。

ものさし1本で、高さを自分の手で変えてみる

ここまでの話は、道具を買わなくてもすぐ確かめられます。用意するのは、プラスチックのものさし1本だけです。

  1. ものさしを机の上に置き、はしを机から外へ出します。
  2. 机の上にのっている部分を、手のひらでしっかりおさえます。
  3. 外へ出ている先を、もう一方の手ではじきます。ビーンと鳴ります。
  4. 外へ出す長さを短くして、もう一度はじきます。
外へ出す長さと、聞こえる音          │========== 長い → ゆっくり → 低い          │======     ふつう          │===        短い → 速く  → 高い     机のはし ─┘

長く出すとブーンと低く、短くするとビィーンと高くなります。このとき、はじく強さは変えていません。変えたのは長さだけです。つまり、大きさのつまみにはさわらずに、高さのつまみだけを回したことになります。

反対に、長さを変えずに強くはじいてみてください。音は大きくなりますが、高さは同じままです。今度は大きさのつまみだけを回したことになります。この2つを続けてやると、つまみが本当に別々であることが自分の手で分かります。

なぜ短いほど速くふるえるのかというと、短いものはかたくて戻りが速いからです。長く出したものさしはぐにゃりとしなって、ゆっくり戻ってきます。これは、ふりこのひもを長くするとゆっくり、短くすると速く行ったり来たりするのとまったく同じ理由です。ふりこは1秒に1往復くらいなので目で数えられますが、ものさしは速すぎて数えられません。数えられないだけで、起きていることは同じです。

輪ゴムと弦 ── つまみは3つある

次は輪ゴムです。あき箱に輪ゴムを何本かかけて、はじいてみます。ギターやバイオリンと同じしくみが、そのまま手の中にできます。

変えるものこうすると音はなぜ
張り方ぴんと強く張る高くなる戻る力が強く、速く行き来する
太さ細いゴムにする高くなる軽いので動かしやすい
長さ指でおさえて短くする高くなるものさしと同じ

ギターをのぞきこむと、弦が6本ならんでいて、右へ行くほど細くなっているのが分かります。太い弦は低い音、細い弦は高い音の担当です。演奏する人が弦を指でおさえているのは、鳴る部分の長さを短くして、もっと高い音にするためです。そして演奏の前にくるくる回してねじを調整しているのは、張り方を変えて回数を合わせているのです。3つのつまみが全部使われています。

やってみよう

輪ゴムを口の前で横にのばして、はじきながら少しずつ引っぱってみてください。引っぱるほど音がだんだん高くなっていくのが、音の高さが連続して変わるようすとして聞こえます。ピアノのように1つずつとびとびではなく、すべり台のように変わります。

息で鳴らすものは、ふるえているのが「空気」

リコーダーには、はじく弦がありません。それでも高さが変わります。ふるえているのが、管の中に入っている空気のかたまりだからです。

穴を全部ふさぐと、空気のかたまりは管のいちばん下まで続く長いものになります。長いのでゆっくりふるえ、低い音になります。下のほうの穴を開けると、空気はそこから外へ出られるようになり、かたまりが短くなります。短いので速くふるえ、高い音になります。

リコーダーの中の空気  全部ふさぐ  │■■■■■■■■■│ 長い → 低いド  半分ふさぐ  │■■■■■     中くらい  ほとんど開ける│■■        短い → 高いラ

「穴をふさぐほど低い」というのは、指がふさがっているぶん音がこもって低くなる、という話ではありません。ふるえている空気そのものの長さが変わっているのです。ものさしを長く出したときと、同じことが管の中で起きています。

同じビンなのに、吹くのとたたくので逆になる

ここが、この記事でいちばんおもしろいところです。ガラスのビンを3本用意して、水を少し・半分・たくさん入れます。そして2通りのならし方をします。

ビンの中の水口をふくと横をたたくと
少ない低い高い
半分中くらい中くらい
たくさん高い低い

同じビンなのに、結果がまるきりひっくり返ります。ふしぎに見えますが、ふるえているものがちがうと考えれば、どちらもここまでの話のままです。

口を横からふくとき、ふるえているのは水の上に残っている空気です。水が多いほど空気の場所がせまくなり、リコーダーで穴を開けたときと同じで短くなるので、高くなります。

いっぽう横をたたくとき、ふるえているのはガラスと、中の水をふくめた全体です。水が多いほど重くなり、重いものは動き出すのも止まるのもゆっくりなので、低くなります。

口をふく  → ふるえるのは 空気   → 水が多い=空気が短い → 高い 横をたたく → ふるえるのは ビン+水 → 水が多い=重い    → 低い

この実験のいいところは、どちらが正しいかを当てる問題ではないことです。どちらも正しく、見ている相手がちがうだけです。音のことを考えるときはいつも「いま、何がふるえているのか」を先に決める、ということが身につきます。

気をつけて

ガラスのビンは、かたい物で強くたたくと割れます。えんぴつや割りばしで、軽くコツンとたたくだけで十分に鳴ります。並べるときは、ビンどうしがぶつからないようにはなして置いてください。

声の高さは、のどのひだの長さで決まる

自分の声も同じ考え方でできています。のどの奥には、細いひだが2枚むかい合ってついていて、息が通るときにこれがふるえます。ものさしや弦とまったく同じ役目です。

このひだが短くてうすいと速くふるえて高い声になり、長くて厚いとゆっくりふるえて低い声になります。小さい子どもの声がみんな高いのは、元気だからでも一生けんめいだからでもなく、体が小さいぶんひだも短いからです。

大きくなる途中で声が低くなっていくことがあります。これは、のどのひだが成長して長く厚くなり、ふるえる回数が減るからです。調子が悪いわけでも、のどをいためたわけでもありません。ものさしを長く出せば低くなるのと同じで、当たり前の変化です。変わっていく途中は声が出しにくくなることもありますが、少しずつ落ち着きます。

歌うときに高い音を出そうとすると、のどに力が入りがちです。けれども、力を入れて出すのは大きさのほうのつまみです。高さのつまみは、ひだを引きのばす別の動きで回しています。「大きくすれば高くなる」と思ってどなってしまうと、のどをいためるばかりで音は高くなりません。2つが別々だと知っておくと、この損をしなくてすみます。

ドレミのひみつ ── 1オクターブ上は、ちょうど2倍

最後に、音楽とつなげておきます。ピアノには同じ名前の音がいくつもあります。低いドと、その右のほうにあるドです。ちがう高さなのに、なぜ同じ「ド」と呼ぶのでしょうか。

理由は、回数がぴったり2倍になっているからです。楽器の音合わせに使う「ラ」の音は、1秒に440回ふるえています。その1つ上の「ラ」は、880回です。さらに上は1760回。足し算ではなく、かけ算でならんでいます。

 低いラ   1秒に  440回  その上のラ 1秒に  880回 ← 440 × 2  その上のラ 1秒に 1760回 ← 880 × 2

ちょうど2倍になっている2つの音は、人の耳にはとてもよく似て聞こえます。だから別の名前をつけずに、同じ「ラ」と呼ぶことにしたのです。名前が同じなのは、たまたまではなく数で決まっているということになります。

ものさしの実験を思い出してください。外へ出す長さをだいたい半分にすると、音はぐっと高くなりました。弦を指でおさえてちょうどまん中で鳴らすと、1オクターブ上の音が出ます。長さ半分と、回数2倍は、同じことを別の側から言っただけなのです。

つまずきやすいところ

その1 強くたたけば高い音になると思う

太鼓を強くたたいても、出るのは大きい音で、高い音ではありません。強さで変わるのはふれはばだけだからです。高さを変えたければ、太鼓の皮の張り方を変えるか、もっと小さい太鼓に持ちかえる必要があります。

その2 速くたたけば高い音になると思う

「速くふるえる=高い」と覚えたあと、今度はこちらへ転びがちです。手を速く動かしてトントントンとたたいても、1回ずつの音の高さは変わりません。たたく速さとものがふるえる速さは別のものです。手はどんなにがんばっても1秒に10回くらいですが、太鼓の皮は1回たたかれるだけで1秒に何百回もふるえています。

その3 遠くの音は低くなると思う

遠くの音は小さくなりますが、高さはそのままです。ただし、遠くから聞こえる音が低く感じることは実際にあるので、まちがえるのも当然です。これは高い音のほうが途中でさえぎられて減りやすく、低い音だけが残って届くために起きます。音そのものが低くなったのではなく、高いぶんが先に消えて、低いぶんだけが生き残ったのです。となりの部屋のテレビから、話の中身は分からないのにドンドンという低い音だけが聞こえてくるのも、同じ理由です。

やってみよう

Q1 耳もとの蚊の音はとても小さいのに、とても高い音です。これはなぜ説明がつくのでしょう。

A 大きさと高さが別のつまみだからです。蚊のはねはふれはばが小さいので音は小さく、いっぽうで1秒間に何百回も動いているので回数は多く、高い音になります。もし大きさと高さが同じものだったら、小さくて高い音は存在できないことになります。

Q2 ものさしを机から長く出してはじくと低く、短くすると高くなりました。このとき変わったのは、ふれはばと回数のどちらでしょう。

A 回数です。長いものはしなってゆっくり戻るので回数が少なく、短いものはかたくて速く戻るので回数が多くなります。同じ強さではじけばふれはばは変わらないので、大きさはそのままで高さだけが変わったことになります。ふりこのひもを短くすると往復が速くなるのと同じ理由です。

Q3 水をたくさん入れたビンは、口をふくと高い音、横をたたくと低い音になります。矛盾していないのはなぜでしょう。

A ふるえている相手がちがうからです。ふいたときにふるえるのは水の上の空気で、水が多いほど空気が短くなるので高くなります。たたいたときにふるえるのはビンと水の全体で、水が多いほど重くなるので低くなります。「いま何がふるえているか」を決めれば、どちらもふつうの話になります。

Q4 犬をよぶ笛を吹いても、人にはまったく聞こえません。笛はこわれているのでしょうか。

A こわれていません。この笛は1秒間にふるえる回数が多すぎて、人の耳が担当している範囲(およそ20回から2万回まで)の外に出ているのです。音は確かに出ていて、犬の耳はその外側まで届くので聞こえます。音が小さいのではなく、高すぎて耳が受け取れないという状態です。

Q5 1秒に440回ふるえる「ラ」の1つ上の「ラ」は、1秒に何回ふるえるでしょう。また、なぜ同じ名前で呼ぶのでしょう。

A 880回です。1オクターブ上がると回数はちょうど2倍になります。2倍の関係にある音は人の耳にとてもよく似て聞こえるため、別の名前をつけずに同じ「ラ」と呼ぶことになりました。弦をまん中でおさえると長さが半分になって1オクターブ上が出ますが、これは長さ半分と回数2倍が同じことだからです。

まとめ

おうちの方へ

音の高さが振動数で決まるという内容は、正式には中学校の理科で扱います。小学3年では「音はふるえ」「大きい音は大きくふるえる」までで、高さには踏みこみません。それでもこの記事を書いたのは、お子さんは高さのほうを先に、毎日使っているからです。音楽の授業、リコーダー、声の出し方。使っているのに説明がないと、すぐ横にある「大きさ」とくっついて、「大きい声=高い声」という覚え方が固まってしまいます。合唱の指導でよく起きる混乱がこれです。
ご家庭では、まずものさし1本から試してみてください。準備がいらず、長さを変えるだけで高さが変わるのがその場で分かります。次に、同じ長さで強くはじく/弱くはじくをやって「大きさだけ変わった」を体験させると、2つのつまみが別だという話が一度で通ります。
余裕があればビンと水の実験を。ふいたときとたたいたときで結果が逆になるので、「なぜ逆なの」と必ず聞いてきます。そこで「ふるえているものが何か、いっしょに考えてみよう」と返していただくと、理科の考え方そのものの練習になります。答えをすぐに言わなくて大丈夫です。
なお、ここでは「振動数」「ヘルツ」「周波数」「振幅」といった言葉はあえて使わず、「1秒間にふるえる回数」「ふれはば」という言い方にとどめました。中学でその名前に出会ったときに、今回の表とものさしの記憶がそのまま結びつくようにするためです。440回という数字だけは、楽器の音合わせで実際に使われている値なので残しました。