すきなものをつたえよう ── 「すき!」で通じる日本語、like が一人で立てない英語

この単元について

3年生の外国語活動でいちばん長く付き合うことになるのが、この「すきなものをつたえよう」です。すきな色、すきなスポーツ、すきな食べもの。友だちとカードを見せ合いながら、I like blue.(アイ ライク ブルー)のような文を言い合う、あの活動です。

言っていることはかんたんに見えます。でもこの単元には、じつは英語という言葉の作りのひみつが、まるごと一つかくれています。それは「日本語とちがって、英語の文には席が決まっている」ということ。ここが見えると、3年生の英語だけでなく、この先6年間の英語がぜんぶ楽になります。

日本語は「すき!」の一語で会話になる

まず、ふだんの日本語を思い出してみます。給食のとき、となりの子にこう聞かれたとしましょう。「イチゴすき?」。あなたはなんと答えますか。

たぶん「すき!」の一言です。これでちゃんと会話が成立しています。だれがすきなのか(わたし)も、なにがすきなのか(イチゴ)も、口に出していないのに、ちゃんと伝わっている。言わなくても分かることは言わない。これが日本語のやり方です。

ところが英語で、Like!(ライク)とだけ言っても、文にはなりません。聞いた相手は「え、だれが? なにを?」という顔をします。ここが今回の学習の入り口です。

like は一人で立てない ── 左右に席が二つある

英語の like は、一人では立てない言葉です。かならず、前に「だれが」の席、うしろに「なにを」の席がついてきます。

だれがどうするなにを
I(わたしは)like(すきだ)blue.(青が)
I(わたしは)like(すきだ)soccer.(サッカーが)
I(わたしは)like(すきだ)apples.(りんごが)

この「だれが・どうする・なにを」の3点セットがそろって、はじめて文になります。日本語の「すき!」が一輪車だとしたら、英語の like は前と後ろに車輪がないと走れない三輪車のようなものです。

なぜそんなに窮屈なのかというと、じつは日本語と英語で、「すき」の言葉としての種類がちがうからです。日本語の「すきだ」は、「しずかだ」「きれいだ」とおなじ、様子をあらわす言葉のなかまです。ところが英語の like は、run(走る)や eat(食べる)とおなじ、動きをあらわす言葉のなかまとして扱われます。動きの言葉は「だれがやるのか」を言わないと始まりません。走るなら走る人が、食べるなら食べる人がいるはずだからです。英語では「すきだと思う」ことも、心の中の動きの一つとして数えられている、と考えると分かりやすいでしょう。

だから、すきなものをつたえたいときは、まず I(わたし)から始める。これがこの単元でいちばん大事な型です。

「なにを」の席には、ならった言葉が全部入る

3点セットの型が一つ手に入ると、作れる文の数が一気にふえます。「なにを」の席に、これまでならった言葉を入れかえるだけでよいからです。

入れる言葉英語の文近い読み方
色I like green.アイ ライク グリーン
スポーツI like dodgeball.アイ ライク ドッジボール
くだものI like grapes.アイ ライク グレープス
動物I like cats.アイ ライク キャッツ
教科・時間I like music.アイ ライク ミュージック

色の英語、くだものの英語、動物の英語。べつべつの時間にならってきた言葉たちは、じつはこの「なにを」の席に入れるための部品だったのです。部品を10個知っていれば10この文が、20個知っていれば20の文が作れます。単語をおぼえる勉強と、文を作る勉強が、ここで一本につながります。

すきじゃないとき・たずねるとき

すきなものの話には、あと二つの形がセットでついてきます。

英語近い読み方意味
I don't like natto.アイ ドント ライク ナットーなっとうはすきじゃない
Do you like natto?ドゥ ユー ライク ナットーなっとうはすき?
Yes, I do.イエス アイ ドゥうん、すきだよ
No, I don't.ノー アイ ドントううん、すきじゃない

「すきじゃない」は、like の前に don't を置くだけ。3点セットの型はくずれません。たずねるときは、文の頭に Do をつけて、I を you(あなた)に取りかえます。

ここで一つ、ふしぎなことに気づいた人はいないでしょうか。聞かれたのは「すきか」なのに、答えの Yes, I do. には like が出てきません。「うん、すき!」のつもりなら Yes, I like. と言いたくなるのに、そうは言わないのです。じつはこの do には、英語の答え方のおもしろい決まりがかくれているのですが、その種明かしは6年生でじっくりやります。3年生のいまは、Do で聞かれたら do で返す、と型でおぼえてしまってかまいません。あいことばのようなものだと思ってください。

まちがえやすいところ

1. I をおとして Like soccer. と言ってしまう

日本語の「サッカーすき!」に引っぱられて起こる、いちばん多いまちがいです。気もちは完全に正しいのですが、英語としては「だれが」の席が空席のまま。言い出しはかならず I から。まよったら、胸に手を当てて I と言ってから続ける、と体で決めておくとまちがえません。

2. Yes, I like. と答えてしまう

Do you like blue? に Yes, I like. と返すのも、よくあるまちがいです。正しくは Yes, I do.。さきほど書いたとおり、理由の説明は先の学年にあずけて、いまは「Do には do で返す」の型を口ぐせにしておきましょう。

3. apple と apples ── s がつくのはなぜ?

教科書の文をよく見ると、I like apples. と、apple に s がついています。これは「りんごを1個だけすき」なのではなく、りんごというなかま全体がすきだからです。英語では、なかま全体の話をするときに s をつける決まりがあります。じつは s をぬいて言うと、くだもののりんごではなく「りんごの実のかたまり・中身」のような、ちょっとへんな聞こえ方になることさえあります。s のくわしいしくみは5年生でならうので、いまは「すきなものには s がつくことが多い」と頭の片すみに置いておくだけで十分です。

4. 「大すき!」と言いたいとき

「すき」より強く言いたいときは、文の最後に very much(ベリー マッチ)をたします。I like dogs very much.(犬が大すき)。日本語の「大」を英語では文の後ろにつける、という置き場所のちがいも、あわせておぼえておくと便利です。

家や教室でできる短い練習

1. すきなものインタビュー

家族に Do you like ~? で3つ質問してみます。なっとう、犬、ピンク。答える側は Yes, I do. か No, I don't. だけでよいので、英語が得意でないおうちの人でも付き合えます。意外な答えが返ってくると、それだけで盛り上がります。

2. 3点セットならべ

紙を3まい用意して「I」「like」「すきなもの」を1まいずつに書き、机の上でならべて文を作ります。3まい目だけを取りかえれば、文がいくらでも作れることが目で見て分かります。

3. 給食で一言

給食に出たもので、すきなものがあったら心の中で I like ~. と言ってみます。カレーの日は I like curry.。毎日メニューが変わるので、練習の材料が向こうからやってきてくれます。

他の学びとのつながり

国語 ── 主語とじゅつ語

3年生の国語では、文の「だれが(主語)」「どうする(じゅつ語)」をならいます。英語の3点セットは、まさにこれと同じ話です。ちがいは、日本語は主語をよく省略するのに対して、英語はほとんど省略しないこと。国語で主語をさがす練習は、そのまま英語で I を言いわすれない練習にもなっています。

これまでの英語 ── 単語が部品になる

色・くだもの・動物の言い方をならったときは「ものの名前あつめ」でした。この単元からは、あつめた名前が文を組み立てる部品に変わります。ならった単語が多いほど作れる文がふえるので、前の単元にもどって言葉をさがし直すのも、立派な勉強です。

6年生の英語へ

Yes, I do. の do の正体、そして don't の中身が何であるかは、6年生でくわしくならいます。そのとき「3年生のあのあいことばは、こういう仕組みだったのか」と分かる日が来ます。型でおぼえたことに、あとから理由が追いつく。英語の勉強には、そういう楽しみ方もあるのです。

まとめ

すきなものの話は、まちがえても だれもこまらない話題です。だからこそ、英語の文の型を体に入れる練習台として、いちばん安心して使えます。すきな色、すきな食べもの、すきな動物。I から始めて、すきなものでしめくくる。この小さな三輪車に乗れるようになったら、この単元は合格です。