冬の あいだ、何も なかった 校ていに、ある 日 とつぜん ぜんぶが そろって 出て くる ように 見えます。花、虫、あたたかい 風。だから 春は「いっせいに はじまる 季節」だと 思われがちです。けれども じっさいに 1つずつ 見て いくと、生きものには 目を さます じゅんばんが あり、その じゅんばんは 毎年 だいたい 同じ だと 分かります。
秋の 記ろくを 見た 人は、おぼえて いるでしょうか。あきの 記ろくで、さくらの 木は「葉が ぜんぶ 落ちても、枝の 先に 来年の 花の もとが もう ついて いる」と 書きました。冬の あいだ、その 木は じっと して いましたが、何も して いなかった わけでは ありません。
春に なると、同じ 校ていでも 出て くる じゅんばんが 決まって います。はやく 出る ものと、おそく 出る ものが あるのです。
| じゅんばん | 出て くる もの | とくちょう |
|---|---|---|
| いちばん はやい | つくし | 葉が まだ 1まいも ない 土から、いきなり 出る |
| つぎ | たんぽぽ・オオイヌノフグリ | 日なたの、かれ草の あいだから 出る |
| その あと | さくら | 秋から じゅんびして いた つぼみが ひらく |
| さいごの ほう | 虫たち | 気温が じゅうぶん 上がって から 動き 出す |
この じゅんばんは、「たまたま」では ありません。生きものごとに、動き 出す ための あたたかさの めやすが ちがうからです。気温が ひくい うちから 動ける ものが さきに 出て、もっと あたたかさが 必要な ものは あとから 出ます。だから 校ていを 1回 見ただけでは、春の はじまりは 分かりません。何回も 見て、出て くる じゅんばんを たしかめるのが、この 単元の やり方です。
春に さいしょに 見つかる ものの 一つが つくしです。土手や 空き地に、ふでの ような 形で、ぴょこぴょこ 出て きます。
ここで おどろく 話が あります。少し して から 同じ 場しょに 行くと、つくしは 見あたらなく なり、かわりに 細い 緑の 草が びっしり 生えて います。これは スギナと いう 名前の、べつの 植物の ように 見えます。
じつは、つくしと スギナは 同じ 1本の 生きものです。地面の 下で つながって いて、さきに 出て くる ふでの ような 部分が「つくし」、そのあと 出て くる 緑の 草の ような 部分が「スギナ」と よばれて いるだけなのです。
つくしの 先に ある、あみの もようの ぶぶんを そっと ゆすると、こなの ような ものが 出て きます。これは たねの かわりに なる もので、ここから まわりに とんで いきます。つくしは 花も みも つけない かわりに、この こなで なかまを ふやします。
「つくしを 見つけたら、少し たって から また 同じ 場しょを 見に 行く」と、ふでの 形が 緑の 草に 変わって いく ようすが 自分の 目で たしかめられます。
たんぽぽは、いつも ひらいて いる わけでは ありません。よる と、寒い 日や くもりの 日には、花びらを とじて しまいます。
これは しおれて いるのでは ありません。たんぽぽは 花の 中を、雨や 寒さから 守る ために、とじたり ひらいたり して いるのです。花の 中に ある 大切な ところ(みつや、たねの もと)を、天気が 悪い あいだは しまって おく、と 考えると 分かりやすいです。
| 天気・時間 | 花の ようす | りゆう |
|---|---|---|
| 晴れて あたたかい ひる | 大きく ひらく | 虫に 来て もらいやすく する |
| よる | とじる | 寒さと つゆから 守る |
| 雨の 日・寒い 日 | とじた まま | 花の 中を ぬらさない |
同じ 場しょの たんぽぽを、朝と、よく 晴れた ひると、ゆう方の 3回 見て みると、同じ 花が ひらいたり とじたり する ようすが 分かります。もし つぼみの まま 1本も ひらいて いなければ、「今日は 寒い」「くもって いる」など、その 日の 天気と 合わせて 考えると、理由が 見えて きます。
あきの 記ろくを もう 一度 見て みます。あの ときは、さくらの 枝の 先に、小さな 丸い ふくらみが あるのを 見つけました。あれが、いよいよ ひらく ばんが きます。
ふくらみは、冬の あいだ ずっと おなじ まま、じっと して いた わけでは ありません。じつは、さくらの つぼみが ひらく ためには、いちど しっかり 寒さに 当たる ことが 必要です。あたたかい ままだと、いつ ひらいて よいか 分からず、花が おくれて しまいます。寒い 冬を すごした からこそ、春の あたたかさが 来た とき、「もう ひらいて よい」と 分かるのです。
だから、寒い 冬が ないと、春に さくらは きれいに さかないと 言われます。寒さを いやな ものだと 思いがちですが、さくらに とっては 花を ひらく ための、なくては ならない じゅんびの 時間なのです。
秋に 見た 同じ 枝を、冬、そして 春に もう 一度 見に 行くと、ふくらみ → そのまま → ひらくという 1年の 流れが、自分の 目で つながります。
あきの 記ろくで、虫たちは それぞれ ちがう すがたで 冬を こす、と 調べました。春は、その すがたから もとの 動く すがたに もどる季節です。
| 虫 | 冬ごしの すがた | 春に どう なるか |
|---|---|---|
| カマキリ | たまご | あたたかく なると、たまごから 小さな カマキリが 何十匹も 出て くる |
| アゲハ | さなぎ | さなぎの 中で すがたを 変えて いて、せなかが われて ちょうが 出て くる |
| テントウムシ | おとなの まま、集まって | 集まって いた 場しょから はなれ、1匹ずつ 花や 草へ 動き 出す |
| コオロギ | たまご(土の 中) | あたたかい 土の 中で たまごから 子どもが 出る |
とくに おもしろいのは アゲハです。あきの 記ろくで 見つけた、木の みきや かべに ついた さなぎ。あれを 覚えて おいて、春に もう 一度 同じ 場しょを 見に 行くと、もう 空っぽに なって いたり、せなかの われた あとが のこって いたり します。それは、中の 虫が 冬の あいだに すがたを 変えて、ちょうに なって 出て いったしょうこです。
カマキリの たまごも 同じです。あきに 見つけた あわの ような かたまりを 春に 見に 行くと、まわりに 小さな カマキリの 赤ちゃんが たくさん 歩いて いる ことが あります。秋に 見た ものが、春に どう なったかを くらべると、1年の つながりが はっきり 分かります。
あきの 記ろくでは、「木を 1本 決めて、葉・地面・枝の 先の 3か所を 見る」と いう やり方を つかいました。春は、同じ 木を もう 一度 見るのが、いちばん つながりが 見える やり方です。
カードに 書く ときも、あきの 記ろくと 同じ 決まりを つかいます。「きれいでした」で 終わらせない。かわりに 数と 場しょを 書きます。
こう 書いて おくと、秋・冬の 記ろくと 見くらべる ことが できます。「あきに ふくらみだった ものが、春に 花に なった」と、1まいの カードだけでは 見えない つながりが、4まいの カードを くらべると 見えて くるのです。
① 花が 一気に 咲いたと 思って しまう
校ていが 急に 花で いっぱいに なった ように 見えますが、じっさいには つくし → たんぽぽ → さくらの ように、出て くる じゅんばんが あります。1回だけ 見て「春が 来た」と 書くのでは なく、何回か 見て じゅんばんを たしかめると、より よい 記ろくに なります。
② つくしと スギナを べつの 植物だと 思う
見た 目が ぜんぶ ちがうので、べつの 植物に 見えます。しかし 地面の 下では つながって いて、同じ 1本の 生きものです。さきに 出る 部分と、あとから 出る 部分の 名前が ちがうだけです。
③ たんぽぽが とじて いると「しおれた」と 思う
とじて いるのは、弱ったのでは なく、花の 中を 寒さや 雨から 守って いる ためです。晴れて あたたかく なれば、また ひらきます。寒い 朝に 見て「花が なくなった」と 書いて しまう まちがいに 気をつけましょう。
Q1 つくしと スギナは、べつの 植物でしょうか、同じ 植物でしょうか。
A 同じ 植物です。地面の 下で つながって いて、さきに 出る ふでの ような 部分が つくし、あとから 出る 緑の 草の ような 部分が スギナと よばれて います。
Q2 寒い 朝に たんぽぽが とじて いました。花が だめに なったのでしょうか。
A だめに なったのでは ありません。たんぽぽは 寒い 時間や 雨の 日、よるは 花を とじて、中を 守って います。あたたかく 晴れれば、また ひらきます。
Q3 さくらの つぼみが ひらくには、あたたかさだけで よいでしょうか。
A あたたかさだけでは ありません。その 前に、冬の あいだに 寒さを しっかり すごして おく ことが 必要です。寒い 冬が あったから こそ、春の あたたかさで ひらく じゅんびが できます。
Q4 あきに 見た アゲハの さなぎが、春に 空っぽに なって いました。何が あったのでしょうか。
A 中の 虫が、冬の あいだに すがたを 変えて ちょうに なり、さなぎから 出て いった と 考えられます。せなかの われた あとが のこって いれば、それが しょうこです。
Q5 春を さがす とき、1回 見に 行くのと、何回か 見に 行くのでは、どちらが よいでしょうか。りゆうも 言いましょう。
A 何回か 見に 行く ほうが よいです。生きものは じゅんばんに 目を さますので、1回だけでは その じゅんばんが 分かりません。秋・冬・春で 同じ 場しょを くらべる ことで、1年の つながりが 見えます。
2年生の生活科で「はる」は、入学・進級の準備であわただしく、秋や冬にくらべて観察が手薄になりやすい単元です。できれば、昨年の秋・冬に観察した木や場所をそのまま使って、「あのとき見たものが、今どうなっているか」を一緒に確認していただけると、1本の記事を読むより学びが深くなります。
つくしとスギナが同じ植物であることは、大人でも知らない方がいます。「つくしの後に出てくる緑の草、見たことある?」と聞いてみると、お子さんが得意げに説明してくれるかもしれません。
たんぽぽの開閉は、晴れた日の朝・昼・夕方で観察すると違いが分かりやすいです。寒い日や雨の日に「花がなくなった」と心配するお子さんには、「守っているだけ」と伝えてあげてください。
桜のつぼみが開くには寒さに当たる必要があるという話は、「暖かい地域より寒い地域のほうが早く咲く年がある」といった意外な現象の理由にもつながる、発展的な話題です。