レジの 前で 手が 止まって しまう子は、計算が おそい わけでは ありません。どの コインから さがせば いいのかを 決めて いない だけです。じつは その 順番は、もう 決まって います。
財布の 中を あけて みて ください。日本の コインは、これで ぜんぶ です。
この 6しゅるいだけで、1円から 999円までの どの 金額でも 作れます。3円でも、47円でも、738円でも、986円でも 作れます。作れない 金額は 1つも ありません。
ここが ふしぎな ところです。999とおりも ある のに、どうして 6しゅるいで 足りるのでしょうか。お金の 数え方の おもしろさは、ぜんぶ ここから 始まります。
先に、6まいの コインを ならべて くらべて おきます。あとで つまずきの 話に つながります。
| コイン | 大きさ(さしわたし) | 重さ | あな | ふちの ギザギザ |
|---|---|---|---|---|
| 1円 | 20.0 mm | 1.0 g | なし | なし |
| 5円 | 22.0 mm | 3.75 g | ある | なし |
| 10円 | 23.5 mm | 4.5 g | なし | なし |
| 50円 | 21.0 mm | 4.0 g | ある | ある |
| 100円 | 22.6 mm | 4.8 g | なし | ある |
| 500円 | 26.5 mm | 7.1 g | なし | ある |
よく 見て ください。大きさは 金額の 順に なって いません。いちばん 小さいのは 1円玉ですが、その つぎに 小さいのは 50円玉です。そして 10円玉は、100円玉より 大きいのです。
重さも 同じで、金額の 順では ありません。5円玉(3.75g)は 50円玉(4.0g)より 軽く、10円玉(4.5g)は 100円玉(4.8g)より 軽いです。金額が 大きい コインほど 大きくて 重い、という きまりは ない ── 見分けるときに いちばん だまされやすい ところです。
6しゅるいを、もう一度 よく 見て ください。ある きまりが かくれて います。
1年生と 2年生の 算数では、10 あつまると 位が 1つ 上がる と ならいました。10のまとまりが 10こで 100。100が 10こで 1000。数の 世界には、10の ところにしか 「まとまる 場所」が ありません。
ところが お金には、その 半分の 5の ところにも まとまる 場所が ある のです。
これが お金だけの とくべつな しくみです。数の 勉強では、5円玉に あたる ものが ありません。でも お金では、9まで 数えないうちに 一度 まとまれる のです。
9円を 作って みましょう。
9まいが 5まいに なりました。ほぼ 半分 です。そして この とくが、一の位・十の位・百の位の 3つの 位ぜんぶで 同じように はたらきます。
いちばん 枚数が 多く なる 999円で くらべると、ちがいが はっきり します。
15まいと 27まい。12まいも ちがいます。5の まとまりを 足した おかげで、コインの しゅるいは 3つ ふえた だけ なのに、持ち歩く 枚数は こんなに 減りました。
1つの 金額だけでは ぐうぜんかも しれないので、999とおり ぜんぶ 計算して みました。いまの 6しゅるいなら、いちばん 少ない 枚数は へいきんで 7.5まい。5円・50円・500円が ない 国なら へいきんで 13.5まい です。6しゅるいの コインは、財布を うすく する ために えらばれた 6つ なのです。
では じっさいに 作って みましょう。お店で「738円です」と 言われた ところです。
やり方は 1つだけ。いちばん 大きい コインから 順に、入る だけ 入れる。これだけです。
10まいです。500円1まい・100円2まい・10円3まい・5円1まい・1円3まい。たしかめると 500+200+30+5+3 で、ちゃんと 738円に なって います。
コツは、のこりを 声に 出して 書く こと。「738、238、38、8、3、0」と 減って いくのを 見れば、とちゅうで まちがえても すぐ 気づけます。
「大きい ほうから」は かんたんすぎて、ほんとうに いちばん 少ないのか しんぱいに なります。そこで、1円から 999円までの 999とおり ぜんぶで たしかめました。
けっかは、べつの 出し方の ほうが 少なく なる 金額は 1つも ありません でした。どの 金額でも、大きい ほうから 入れる だけで いちばん 少ない 枚数に なります。頭を ひねる 必要は ないのです。
コインの しゅるいが ちがえば、この やり方は 通じません。
もし「1円・3円・4円」だけの 国が あったと します。6円を 大きい ほうから 出すと、4 + 1 + 1 で 3まい。でも 3 + 3 なら 2まい です。大きい ほうから 出したのに、負けて しまいました。
日本の コインは、こういう ことが おきない ように ならんで います。だから「大きい ほうから」を 信じて いいのです。
1000円さつで 738円を 払うと、おつりは 262円です。生活科の「おつかいに 行って みよう」で 出てきた とおり、おつりは ひき算の 答えです。
ここでは その 先を やります。262円が 何まいで 返って くるかを、受け取る 前に 決めて おく のです。やり方は 払うときと 同じ、大きい ほうから です。
6まい。手のひらに のった コインが 6まい なら、たぶん 合って います。4まいだったり 9まいだったり したら、そこで「すみません」と 言えます。数える 前に 答えを 持って いるから、ちがいに 気づける のです。
もう 1つ、おとなが 何も 言わずに やって いる わざが あります。738円の とき、1000円さつだけで なく 1円玉を 3まい いっしょに 出す のです。
もらう コインが 6まいから 5まいに 減り、そのうえ 財布に たまって いた 1円玉3まいが 出て いきました。下の けたを そろえて 出すと、こまかい コインが 減って いく ── これが 財布を うすく たもつ しくみです。
「じゃあ 1円玉を 738まい 持って いけば いいのでは?」と 思った子は、いい ところに 気づきました。でも それは できません。
日本には、同じ コインは 1回の 支払いで 20まいまで という きまりが あります。21まい目からは、お店が「それでは 受け取れません」と 断って よいのです。1円玉738まいは、20まいを はるかに こえて います。
重さでも むりが あります。1円玉は 1まい ちょうど 1g なので、738まいは そのまま 738gです。
3年生で ならう 重さの たんい(g・kg)が、ここで さっそく 役に 立ちます。1円玉は ちょうど 1gなので、はかりの 目もりを たしかめる ときの おもりとして つかえます。10まい のせて 10gに なれば、その はかりは 信じて いいのです。
いちばん 多い まちがいです。そして「あなが あるのが 5円玉」と おぼえて いる子が 多いのですが、それでは 決まりません。上の 表を もう一度 見て ください。あなが あるのは 5円玉と 50円玉の 2つ です。
見分けるのは 色です。5円玉は 茶色っぽい、50円玉は 銀色。大きさは 5円玉の ほうが わずかに 大きい(22.0mmと 21.0mm)ですが、手のひらでは 分かりません。あなを 見つけたら、つぎに 色を 見る ── この 2だんかいで 決めます。
ばらばらの まま 上から 数えると、かならず どこかで 見失います。先に 山を 作る のが 正かいです。
ばらばらに 数えると まちがえるのは、あなたの せいでは ありません。同じ 数え方を くりかえせない 形に なって いる からです。形を なおせば、まちがいは 減ります。
これは 計算の まちがいでは なく、順番の 問題です。もらった コインを すぐ 財布に 入れて しまうと、もう たしかめられません。
手のひらの 上で 枚数を 数えてから、財布に 入れる。さきに 予想した 枚数と 合って いれば、そのまま しまって よいのです。
Q1 738円を いちばん 少ない 枚数で 作ると 何まいですか。
A 10まい。500円が 1まい、100円が 2まい、10円が 3まい、5円が 1まい、1円が 3まいです。大きい ほうから 入れる だけで、この 組み合わせに たどりつきます。
Q2 5円玉・50円玉・500円玉が ない 国で、999円を 作ると 何まいですか。
A 100円が 9まい、10円が 9まい、1円が 9まいで 27まい。日本の コインなら 15まいなので、12まいの さが 出ます。
Q3 1000円さつで 738円を 払うと、おつりは 何円で 何まいですか。
A 1000-738で 262円。100円2まい・50円1まい・10円1まい・1円2まいの 6まい です。
Q4 1円玉だけで 738円を 払えますか。
A 払えません。同じ コインは 20まいまでと 決まって いるので、お店は 断って よいのです。しかも 1円玉は 1まい 1gなので、738まいで 738gに なります。
Q5 10円玉と 100円玉、大きいのは どちらですか。
A 10円玉(23.5mm)。100円玉は 22.6mmで、少し 小さいです。大きさは 金額の 順には なって いません。
Q2が いちばん 大事な 問題です。答えの 27まいは、5の まとまりが なかったら 財布が どうなるかを 見せて います。いつも つかって いる 6しゅるいは、ぐうぜん 6しゅるいなのでは ない と 分かれば、この 記事の 半分は 分かった ことに なります。
硬貨の体系そのものは、教科書の単元にはありません。2年生の算数でお金が出てくるのは「大きい数」や「たし算・ひき算」の題材としてで、「なぜ6種類なのか」「なぜ大きいほうから出せばよいのか」は説明されないまま、レジの前での実技だけが求められます。この記事はそこを埋めるものです。
ご家庭でおすすめなのは、財布の中身を全部出して6つの山に分けさせることです。分けるだけで数えやすくなる体験は、そのままひっ算の「位をそろえる」に接続します。次の段階として、支払う前に「何枚出す?」「おつりは何枚返ってくる?」と予想させてから実際に払うと、予想と結果を突き合わせる習慣がつきます。
なお「大きいほうから取れば最小枚数になる」は、日本の硬貨だから成り立つ性質です(1円から999円まで全数を計算して、例外が0件であることを確かめています)。一般には成り立たず、本文で挙げた1円・3円・4円の国では崩れます。算数の「いつでも言えること」と「この場合だけ言えること」のちがいを、身近な例で話せる材料としてお使いください。