「どこから 書いても、同じ 字に なるのに」。そう 思った ことは ありませんか。じつは 書き順が 決まって いるのは、字を 上手に 見せる ため では ありません。書く 人が まよわない ため です。
だれかが 会ぎを ひらいて 「この 字は ここから 書く ことに しよう」と 決めた わけでは ありません。何百年も、たくさんの 人が 筆で 字を 書いて きた 中で、いちばん 手が らくに 動く 順番 だけが のこりました。歩きやすい ところを みんなが 歩いて いると、いつのまにか 道に なる。あれと 同じです。
だから 書き順を まもると、書く スピードが 上がります。ぎゃくに 自分だけの 順番で 書くと、筆を 持ちかえる ような むだな 動きが 入り、字を 書く たびに 少しずつ 時間を そんします。
漢字は 2年生だけで 160字 ならいますが、書き順を 1字ずつ 丸暗記する 必要は ありません。下の 6つを 知って いれば、はじめて 見る 字でも たいてい 当てられます。
| きまり | れい | おぼえかた |
|---|---|---|
| ① 上から 下へ | 三・言 | 紙は 上から 下に 読むから |
| ② 左から 右へ | 川・州 | 右ききが 手を よごさない 向き |
| ③ よこが 先、たてが あと | 十・大 | 「よこ→たて」で ×じるしを 作る |
| ④ 中が 先、左右が あと | 小・水 | まん中の はしらを 先に 立てる |
| ⑤ かこいは 先、しめるのは 最後 | 国・回 | はこを 作って から 物を 入れる |
| ⑥ つらぬく 画は 最後 | 中・車 | くしは 具ざいを ならべてから さす |
この 6つは、漢字だけの 話では ありません。カタカナの「ナ」は よこ線が 先(③)、「メ」は 左に はらう 線が 先(②)。ひらがなの「せ」も、よこ線を 引いて から たての 線に 進みます。学校で ならう 文字の ほとんどが、この ならびの 中に おさまって います。だから きまりを 先に 入れて おくと、字が ふえても おぼえる ことは ふえません。
とくに つよいのは ①と ②です。この 2つだけで、ひらがな 46字の ほとんどが せつ明 できます。「あ」も「き」も「ま」も、よこの 線を 上から じゅんに 引いて いくだけです。
子どもが つまずくのは、むずかしい 字では なく、形が にて いるのに 書き順が べつ の 字です。代表が 「右」と「左」です。
| 字 | 1画目 | りゆう |
|---|---|---|
| 右 | ノ(はらい) | もとは 手の 形。手の 部分から 書く |
| 左 | 一(よこ) | もとは 工の 道ぐ。長い よこ線が 先 |
見た目は そっくりな 2字ですが、1画目が ちがいます。もとに なった 大むかしの 形が ちがう からで、ここは きまりでは とれない、数少ない「おぼえる しか ない」 ところです。ほかにも、「上」は たてが 先(③の れいがい)、「九」は ノが 先、「田」は 外がわを 作って から 中を 書く といった、聞かれやすい 字が あります。
もう 一つ、よく 出る まちがいが 「馬」や「無」の ような、下に 点が 4つ ならぶ 字です。点は 4つ とも 左から 右へ、さいごに 書きます。上の 部分を ぜんぶ 作って から 台を しく、と おぼえると まよいません。これも きまり①の「上から 下へ」の なかまです。
ここで 大じな 考え方が 一つ。れいがいの 字は そんなに 多く ありません。多くの 字は きまりで とれて、こまるのは ほんの 数字だけ。だから「全部 おぼえなきゃ」と 思わなくて だいじょうぶです。
大人に 見て もらわなくても、あって いるかを 自分で しらべる 手だては あります。
いちばん やって しまいがちなのが、まちがった 順番の まま 何十回も 書きうつす ことです。手は くり返した 動きを おぼえるので、まちがいの ほうを れんしゅう して しまう ことに なります。書き始める 前に 見本を 見る。たった これだけで、あとで 直す 手間が なく なります。
いま すぐ テストの 点が 上がる わけでは ありません。とくを するのは 少し 先です。
Q1 書き順が ちがうと、テストで ばつに なりますか。
A できあがった 字が 正しければ、ふつうは 正かいです。ばつに なるのは「書き順を 答える 問題」だけ。ただし 形が くずれて 読めないと、そこで 点を 落とします。
Q2 左ききでも 同じ 順番で いいですか。
A 同じで かまいません。もとは 右ききの 筆づかいから 生まれた 順番ですが、線の 重なり方じたいは 手に 関係なく 決まって います。書きにくい ときは 紙を 少し かたむけると らくです。
Q3 ひらがなにも 書き順は ありますか。
A あります。しかも ひらがなは 曲線が 多い ぶん、順番が ちがうと 形の くずれが 漢字より 目立ちます。「な」「ま」「や」あたりが 要ちゅういです。
Q4 今から 直すのは、もう おそいですか。
A おそく ありません。ただし 一度に 全部は 直せないので、新しく ならう 漢字から 正しい 順番で 書き始めると、むりなく 入れかわって いきます。
筆順は「正誤」の問題として扱うと、子どもにとってただの理不尽な規則になります。実際、公的な指針でも筆順は指導上の目安とされ、複数の書き方が認められている字もあります。叱る材料にはせず、「そのほうが速く書ける」という利点として伝えるほうが定着します。
直すタイミングにもコツがあります。すでに書き終えた字を後から指摘すると、子どもは書いた成果ごと否定されたように受け取ります。有効なのは、新しい漢字を習った当日、最初の一回目を一緒に書くことです。最初の一回が正しければ、その後の練習はすべて正しい反復になります。
もし直したい字が複数あるときは、一日に一字だけにしてください。筆順は手の運動の記憶なので、上書きには時間がかかります。一度に何字も直そうとすると、どれも中途半端なまま混乱だけが残ります。