英語でありがとう・ごめんねを言おう ── 日本語の「すみません」は、英語では二つに分かれる
この単元について
英語でありがとう・ごめんねを言おう、という学習は、名前をおぼえる学習とは少しちがいます。動物や色のように「目の前にあるもの」をさして言うのではなく、気もちを相手にわたすための言葉だからです。だから、言葉そのものより「どんなときに口から出るか」のほうが大事になります。
ここでむずかしいのは、日本語の「すみません」です。ぶつかったときも、人を呼びとめるときも、何かをしてもらったときも、日本語はぜんぶ「すみません」でいけてしまいます。ところが英語には、この便利な一言がありません。あやまるときと声をかけるときで、使う言葉が最初から分かれているのです。この分かれ目をつかむことが、この学習のいちばんの中心です。
三つの言葉と、その役わり
おぼえる言葉は三つだけです。数はとても少ないのに、使い分けだけがむずかしい、というめずらしい学習になります。
| 英語 | 近い読み方 | 役わり | 口から出る場面 |
|---|---|---|---|
| Thank you. | サンキュー | してもらった、をかえす | えんぴつをひろってもらった |
| I'm sorry. | アイム ソーリー | わるかった、をつたえる | 足をふんでしまった |
| Excuse me. | イクスキューズ ミー | これから話しかける、を知らせる | 前の人に道をあけてほしい |
表の右の二つのらんを、じっくり見くらべてみてください。sorry と excuse me は、日本語にするとどちらも「すみません」になってしまいます。でも英語では、もう起きてしまったことに使うのが sorry、これから何かをお願いするときに使うのが excuse me と、時間の向きがはっきりちがいます。
見分けは「もう起きた?」の一問だけ
まよったときは、頭の中でこう聞いてみます。
「わるいことは、もう起きた?」
もう起きているなら I'm sorry.、まだ起きていなくてこれから話しかけるだけなら Excuse me.。このたった一問で、二つはきれいに分かれます。
| 場面 | もう起きた? | 言う言葉 |
|---|---|---|
| 走っていて人にぶつかった | 起きた | I'm sorry. |
| 人の前を通してもらいたい | まだ | Excuse me. |
| かりた本をよごしてしまった | 起きた | I'm sorry. |
| 先生に質問しに行く | まだ | Excuse me. |
| やくそくの時間におくれた | 起きた | I'm sorry. |
おもしろいのは、日本語だとこの五つが全部「すみません」で通ってしまうことです。日本語のほうが楽に見えますが、英語のほうは言葉を聞いただけであやまっているのか、呼びかけているのかが相手に一発でわかるという長所があります。どちらがえらいという話ではなく、ちがう作りになっている、ということです。
Thank you. は、言う回数がちがう
Thank you. の意味はまよいません。むずかしいのは意味ではなく回数です。英語を使う国では、日本の学校よりずっと多く Thank you. が飛びかいます。おつりをうけとったとき、ドアをおさえてもらったとき、名前をよばれて返事をしたあとまで、こまかく言います。
日本語では、会しゃくやおじぎで気もちをつたえることがよくあります。だまって頭を下げれば「ありがとう」がとどく、という形です。英語ではそこを声に出してうめるので、言わないと「気づいていないのかな」と思われてしまうことがあります。
ですから、練習するときは「新しい言葉をおぼえる」ではなく、今までおじぎでやっていた場面を、声にしてみると考えたほうが近道になります。
ちょっとだけ気もちを強くしたいとき
- Thank you. … ふつうの「ありがとう」
- Thank you very much. … 「本当にありがとう」
- Thanks. … 友だちどうしの、かるい「ありがと」
小2のうちは Thank you. だけで十分ですが、very much を後ろにつけるとていねいになる、という感かくは早めにさわっておくと後が楽になります。
言われたときに、だまらない
あいさつは、言うだけで終わりません。言われたときの返事までがワンセットです。ここがぬけていると、相手が Thank you. と言ってくれたのにこちらがだまってしまい、会話が止まります。
| 相手が言ったこと | こちらの返事 | 意味 |
|---|---|---|
| Thank you. | You're welcome. | どういたしまして |
| I'm sorry. | That's OK. | だいじょうぶだよ |
| Excuse me. | Yes? | はい、なあに? |
三つとも短い言葉です。とくに That's OK. は、あやまってきた相手をゆるす言葉なので、言えるようになると教室の空気が変わります。あやまる練習と、ゆるす練習は、いつも二人一組でやるようにすると、どちらの役も身につきます。
まちがえやすいところ
1. sorry を「かわいそう」の意味で使う場合がある
I'm sorry. は、じつは「あやまる」だけの言葉ではありません。相手に悲しいことがあったとき、「それはつらかったね」という気もちでも使われます。小2の段階でここまで教える必要はありませんが、英語の歌や絵本で出てきたときに「あやまってないのにソーリーだ」とまよう子がいます。そのときは相手の気もちに心を寄せる言葉なのだ、と一言そえるだけで足ります。
2. Excuse me. を大きな声で言いすぎる
Excuse me. は、話しかける前の小さな合図です。遠くから大声で言うと、呼びつけているように聞こえます。近づいてから、ふつうの声でが基本です。
3. 「ソーリー」とのばしすぎる
カタカナの「ソーリー」は、はじめを長くのばします。英語の sorry は、はじめが短く、後ろも強くありません。のばさずに、ぽんと軽く言うほうが近い音になります。
4. 何に対してかを言わないまま終わる
これは英語だけの問題ではなく、言葉ぜんたいの問題です。ぶつかって I'm sorry. とだけ言ってすぐ行ってしまうと、あやまった感じが弱くなります。日本語でも英語でも、相手の顔を見てから言うのがいちばんきいてきます。
家や教室でできる短い練習
1. 「どっち?」カード
場面を書いた紙を10まい作り、sorry と excuse me のどちらかをえらんで置いていきます。答え合わせのときは、正かいかどうかより「もう起きた?」と声に出して考えられたかを見てあげてください。
2. 一日三回チャレンジ
家の中で Thank you. を一日に三回言う、というだけの遊びです。回数を数えるので、言う場面を自分でさがすようになります。
3. ゆるす役をやる日
きょうだいや友だちと、あやまる役とゆるす役を入れかえます。That's OK. を言うほうが、じつは口に出しにくいことに気づきます。
4. しずかな Excuse me.
ろうかで前をふさがれた場面を作り、声の大きさだけを変えて二回言ってみます。どちらが気もちよく通してもらえそうか、耳で比べます。
他の学びとのつながり
国語
小2の国語では、ていねいな言い方や、相手に合わせた話し方をならいます。英語のこの学習は、その考え方を別の言葉でもう一度やっているだけなので、「相手によって言い方を変える」という同じ一本の軸でつなげて話すとよく通ります。
生活科
まちたんけんで地いきの人に話しかける場面は、まさに Excuse me. のはたらく場面です。日本語で「すみません、しつもんしてもいいですか」と言う練習が、そのまま英語の練習にもなります。
道とく
あやまる・ゆるすという行いそのものは、道とくで考えることです。英語の時間では言い方を、道とくの時間では気もちを、と分けて考えると、どちらも薄くなりません。
まとめ
- おぼえる言葉は Thank you.・I'm sorry.・Excuse me. の三つだけ
- 日本語の「すみません」は、英語では sorry と excuse me に分かれる
- 見分けは「わるいことは、もう起きた?」の一問。起きたら sorry、まだなら excuse me
- Thank you. は意味ではなく回数がちがう。おじぎでやっていた分を声にする
- 返事の You're welcome.・That's OK.・Yes? までがワンセット
ここでならう英語は、全部あわせても六つほどの短い文です。それでも、言えるようになると相手の顔が変わるので、手ごたえがとてもはっきりしています。上手な発音よりも、相手を見て、間を空けずに言えたかどうか。そこさえできていれば、もう十分につたわっています。