ひらがなが ぜんぶ 書けるように なった あとに 来る、つぎの かべです。共通するのは 「書く」と「読む」が ずれる こと。
この たんげんで 出て くる 3つは、ぜんぜん ちがう ものに 見えて、じつは 共通する 考えかたで 解けます。それは 「音を いくつ 数えるか」 です。
そして いちばん 効く 方ほうが、手を たたきながら 声に 出す ことです。1音で 1回 たたきます。
この あとの せつめいでも、ずっと この「手を たたく」方ほうを つかいます。耳で 分からない ものを、体の 動きで 分かる ように する ── これが この たんげんの コツです。
「がっこう」「きって」「らっぱ」── ちいさい「っ」が 入る ことばです。
子どもが とまどう 理由は はっきり して います。「っ」には 音が ない からです。「が」「こ」「う」は 声に 出せますが、「っ」は 出せません。
では 何なのか。「っ」は 音を 止める 時間 です。「がっこう」と 言う とき、「が」の あと 一しゅん 息が 止まって いるのが 分かりますか。その 止まって いる 時間を 表す 字が「っ」なのです。
だから 手を たたく れんしゅうが 効きます。「っ」の ところでも、声を 出さずに 手だけ たたく。すると「あ、ここに 1つ ぶん あるんだ」と 体で 分かります。
「さか(坂)」と「さっか(作家)」
「おと(音)」と「おっと(夫)」
「まち(町)」と「まっち(マッチ)」
ならべて 声に 出すと、「っ」の 有る 無しで 意味が まったく かわる ことが 分かります。「っ」は ちゃんと 仕事を して いる のです。
「きゃ」「しゅ」「ちょ」── 2字 書くのに、音は 1つ。ここが むずかしい ところです。
「き」と「ゃ」で 1つの 音「きゃ」を 作ります。2字で 1音。これは ひらがなの きまりの 中で いちばん とくべつな ものです。
教えかたの コツは、ふつうの 大きさと くらべる ことです。
| 大きい「や」 | 小さい「ゃ」 |
|---|---|
| きや(き・や → 2音) | きゃ(きゃ → 1音) |
| しゆ(し・ゆ → 2音) | しゅ(しゅ → 1音) |
| ひよこ(ひ・よ・こ → 3音) | ひょこ(ひょ・こ → 2音) |
「ひよこ」と「ひょこ」を 声に 出して くらべると、はっきり ちがいます。字の 大きさが 音を かえて いる ── これは 子どもに とって おどろきの 発見です。
書く 位置も 大事です。たて書きなら 右上、よこ書きなら 左下 に 小さく 書きます。マス目の 4分の1 くらいの 大きさが 目安です。大きさが 中とはんぱだと、読む 人が まよいます。
3つめは、のばす 音です。ここが いちばん まちがえやすい ところです。
| 音 | 書きかた | れい |
|---|---|---|
| あー | 「あ」を たす | おかあさん、おばあさん |
| いー | 「い」を たす | おにいさん、おじいさん |
| うー | 「う」を たす | くううき、すうじ |
| えー | 「い」を たす(!) | とけい、せんせい、えいが |
| おー | 「う」を たす(!) | おとうさん、がっこう、ぞう |
問題は 下の 2つです。「えー」と 聞こえるのに「い」と 書く。「おー」と 聞こえるのに「う」と 書く。
「とけい」は「とけえ」と 聞こえます。「おとうさん」は「おとおさん」と 聞こえます。それなのに 書くのは「い」と「う」。聞いた とおりに 書くと まちがえる のです。
これは 「は・を・へ」と 同じで、むかしの 発音が 書きかたに のこった ものです。むかしは ほんとうに「とけ・い」「おと・う・さん」と 発音して いました。
「おおきい」「とおい」「こおり」「おおかみ」── これらは「お」で のばします。数が 少ないので、まとめて おぼえて しまう のが 早いです。
「大きな 氷の 上を 遠くまで 狼が 通る」── こんな 文を 作って おぼえる 方法も あります。
ここまで 見て きた 3つには、共通点が あります。
ぜんぶ「字の 数と 音の 数が 合わない」という 点で 同じです。それまで 1字=1音で うまく いって いたのに、そのルールが くずれる。だから むずかしいのです。
逆に 言えば、ここを 乗りこえると、日本語の 表記の しくみは ほぼ 分かった ことに なります。2年生いこう 出て くる むずかしさは、漢字の 量や 文章の 長さで あって、表記の しくみ そのものでは ありません。
この たんげんは、机に むかう より あそびの 中で 身に つく のが とくちょうです。
ふつうの しりとりに 手拍子を 足すだけです。「り・ん・ご」で 3回、「ご・り・ら」で 3回。「がっこう」が 出たら 4回。自ぜんに 音の 数を 数える れんしゅうに なります。
2つの ことばを 出して、どちらが 長いかを 当てます。「さくら」と「がっこう」── どちらが 音が 多い? 答えは「がっこう」(4音)。見た目の 字の 数では なく、音で くらべる のが ポイントです。
本や おかしの ふくろから、小さい「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」を さがします。「チョコレート」には「ョ」が ある。「シャンプー」には「ャ」が ある。見つけた 数を 競う と もり上がります。
どれも 5分で でき、道ぐも いりません。車の 中、おふろ、ねる 前 ── すきま時間に くりかえす ほうが、プリント 10まいより 効きます。音の ことは、音で おぼえる のが 近道だからです。
「がっこう」を「がこう」と 書く。音が 聞こえない ので、書き落として しまいます。
手を たたきながら 声に 出して、「手は 4回 なのに 字が 3つ しか ない」 ことに 気づかせます。
「きゃ」が「きや」に 見える。マスの 4分の1 の 大きさを 目で 見せます。お手本の 上に うすい 紙を 置いて なぞらせるのも 有効です。
「せんせい」を「せんせえ」、「おとうさん」を「おとおさん」と 書く。これは 耳が 正しい しょうこです。
しかる のでは なく、よく 出て くる ことばを 目で おぼえる ように します。「おかあさん・おとうさん・おにいさん・おねえさん」は 家ぞくの 呼びかた なので、書く きかいが 多く、いちばん おぼえやすい 入口です。
Q1 「らっぱ」は 手を 何回 たたきますか。
A 3回(ら・っ・ぱ)。「っ」でも 1回 たたきます。
Q2 「きゅうしょく」は 手を 何回?
A 5回(きゅ・う・しょ・く)… ではなく 4回です。きゅ/う/しょ/く。小さい字は 前の 字と セットで 1回。
Q3 「せんせい」と「とけい」── のばす音は「い」ですか「え」ですか。
A どちらも 「い」。「えー」と 聞こえても「い」と 書きます。
ひらがなを全部書けるようになって安心した頃に、この単元でつまずくケースが非常に多いです。特に長音の「えー→い」「おー→う」は、大人でも説明しづらいところです。
効果的なのは、手拍子を使った音節分けです。しりとりや言葉集めの遊びに手拍子を加えるだけで、自然と音の数を意識するようになります。お風呂や車の中でもできます。
なお、この3つが完全にできるようになるのは2年生の終わり頃という子も珍しくありません。1年生のうちに完璧を目指すより、間違えたときに一緒に手を叩いて確認する、という関わり方のほうが長い目で見て効果があります。