「わたしわ」と 書いて しまう。じつは これ、耳が 正しい しょうこ なのです。
「わたしは 学校へ 行きます」── この 文を 声に 出して 読んで みて ください。
「は」と 書いて「わ」と 読む。「へ」と 書いて「え」と 読む。字と 音が くいちがって いる のです。
だから「わたしわ」と 書く 子は、まちがえて いるのでは ありません。聞こえた とおりに、正かくに 書いて いる のです。むしろ 耳が よい しょうこ だと 言えます。
この ことを 大人が 分かって いると、教えかたが かわります。「ちがうでしょ」と 言うのでは なく、「そう 聞こえるよね。でも 書く ときは とくべつな きまりが あるんだ」と 教える ことが できます。
むかしは、「は」は そのまま「は」と 読んで いました。「わたしは」は「わたしha」と 発音して いたのです。
ところが 長い 年月の 中で、音の ほうが かわって いきました。「は」が「わ」の 音に なった のです。でも 書きかたは むかしの まま のこった。それが 今の じょうたいです。
つまり、この きまりは だれかが 意地わるで 作った ものでは なく、言葉の れきしの あと なのです。1年生に くわしく 説明する ひつようは ありませんが、「むかしは そう 読んで いたんだよ」と 一言 そえるだけで、なっとくする 子も います。
では、どういう ときに「は」「を」「へ」を つかうのでしょう。かんたんな 見わけかたが あります。
ことばの うしろに くっついて、はたらきを あらわす とき です。教科書では「くっつきの ことば」と よぶ ことが あります。
| 字 | いつ つかう | れい |
|---|---|---|
| は(わ) | 「〜について 言うと」の しるし | ぼくは げんきです |
| を(お) | 「なにを」の しるし | 本を よむ |
| へ(え) | 「どこへ」の しるし | 学校へ 行く |
この 3つは、かならず ことばの うしろに つきます。文の はじめに 来る ことは ありません。「は りんごが すきです」とは 言いませんね。
まよったら、その 字の 前に ことばが あるか を 見ます。
「わたし+は」→ 前に ことばが ある → は
「わに」の「わ」→ 前に ことばが ない(ことばの 一部)→ わ
「わたしわ」と 書いて しまった とき、「わたし」と「わ」に 分けられるか 見て みると、気づきやすく なります。
3つの 中でも「を」は とくべつです。
「は」は「はな」「はし」など、ふつうの ことばでも つかいます。「へ」も「へや」「へび」で つかいます。ところが 「を」は、くっつきの ことば 以外では ほとんど つかいません。
つまり、「を」を 書く ときは、ほぼ 100% くっつきの ことば なのです。「を」が 出て きたら「なにを」の しるし。これは とても 分かりやすい 目じるしに なります。
ぎゃくに 言えば、「を」を 書く きかいは 少ないので、形を わすれやすい という 問題も あります。「を」の 書き順は 3画。よこ線から 書き始めます。ときどき 書いて かくにん して おくと よいでしょう。
この たんげんは、プリントで ○×を つけるより、じっさいに 文を 書く ほうが 身に つきます。
とくに 3ばんめが こうかてきです。「わたしわ こうえんえ 行きました」と 書いた 紙を 見せて、「どこが へん?」と 聞きます。人の まちがいなら 見つけやすく、しかも 楽しく できます。
この 3つの 字は、日記を 書けば ほぼ 毎回 出て きます。1日 2〜3行の 日記 を つづけるのが、いちばん 自ぜんな れんしゅうです。
直す ときは、赤ペンで ばつを つけるのでは なく、正しい 字を 下に そっと 書いて あげる くらいが よいでしょう。書く ことが きらいに ならない ことが 何より 大事です。
すこし 先の 話に なりますが、じつは「は」には もう ひとつ おもしろい はたらきが あります。
つぎの 2つの 文を くらべて みて ください。
どちらも 正しい 日本語ですが、感じが ちがいます。①は「ぞうと いう どうぶつに ついて 言うと」という、せつめいの 感じ。②は「(ほかでは なく)ぞうが」という、えらんで いる 感じです。
1年生に この ちがいを 教える ひつようは ありません。でも 「は」は、話だいを しめす はたらきを して いる と いう ことは、大人が 知って おくと 役に立ちます。
「わたしは」の「は」は、「わたしに ついて 言うと」という 意味なのです。だから 文の さいしょに よく 出て きます。「これから この ことに ついて 話すよ」という 合図 ── そう 考えると、なぜ この 字が こんなに よく 出て くるのかが 分かります。
ちなみに、外国の 人が 日本語を 学ぶ とき、この「は」と「が」の 使い分けは いちばん むずかしい ところの 一つ だと 言われて います。日本の 子どもは、それを 耳から しぜんに 身に つけて いる わけです。すごい ことです。
ルールを おぼえた あと、こんどは 行きすぎて「わたしは はなが すき」を「わたしは はなが」ではなく 全部 直そうと して しまう。
「ことばの うしろに つく ときだけ」と、はんいを はっきり させます。ことばの 中の 音は そのまま です。
「学校え 行く」と 書いて しまう。「へ」は 行き先を あらわす とき だけです。
「どこへ?」と 聞ける なら「へ」。「え」は「絵」「えき」など ことばの 一部の とき です。
「本お よむ」と 書いて しまう。「を」は「なにを?」と 聞ける ときだけ です。
「お」は「おかあさん」「おちゃ」など ことばの 一部。「なにを?」で たしかめる のが いちばん かんたんです。
Q1 つぎの 文の まちがいを 直しましょう。「ぼくわ ほんお よみます」
A 「ぼくは ほんを よみます」。どちらも くっつきの ことばです。
Q2 「こうえんえ いきます」の まちがいは?
A 「こうえんへ いきます」。行き先なので「へ」です。
Q3 「わたしは はなが すきです」── この 文の「は」は 2つ あります。どちらが くっつきの ことば?
A 最初の「は」(わたし+は)。2つめは「はな」という ことばの 一部なので、そのまま「は」と 読みます。
Q3が できたら すばらしいです。同じ「は」でも 役わりが ちがう ことに 気づけて います。
この単元は1年生の国語で最も間違いが多いところですが、それは子どもの能力の問題ではなく、日本語の表記自体が持つ例外だからです。「聞こえた通りに書く」という、それまで正しかった方法が突然通用しなくなる、最初の関門です。
効果的なのは、間違いを指摘することより、正しい文をたくさん読ませることです。音読を続けていると、「わたしは」という字面が目に焼き付き、自然と書けるようになります。
また、この3つを完全に使い分けられるようになるのは2年生以降のことも多く、1年生のうちに完璧を求める必要はありません。焦らず、日記や手紙の中で繰り返し出会わせてください。