友だちに 夜 会った とき、「おはよう」と 言ったら どうでしょう。文として まちがっては いません。でも 聞いた 人は きっと「あれ?」と 思います。学校では「お父さん、お母さん、先生」と 同じように、あいさつも ならって きました。でも、なぜ あいさつだけは、言う 時間に よって 言葉が 変わるのでしょうか。しかも あいさつには、もう 一つ ふしぎな ルールが あります。一人では 終われない あいさつが あるのです。
「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」。この 3つは、どれも 同じ はたらきを して います。だれかと 会った ときに「会いましたね」と いう 気もちを つたえる、それだけの 言葉です。意味は 同じなのに、どうして 3つも あるのでしょうか。
答えは かんたんです。この 3つは、言う 時間が ちがうだけで、同じ あいさつの 言いかたを 3つに 分けた ものだからです。朝に 会ったら「おはよう」、お昼すぎに 会ったら「こんにちは」、くらく なってから 会ったら「こんばんは」。これだけです。
| 時間 | 使う あいさつ | 目じるし |
|---|---|---|
| 朝 おきてから お昼前まで | おはよう(ございます) | 学校へ 行く ころ |
| 昼 お昼すぎから くらく なる前まで | こんにちは | 外が まだ 明るい |
| 夜 くらく なってから | こんばんは | 外が くらい |
ここで 大事なのは、時計の 時間 何時何分で 決めるのでは なく、外が どれくらい 明るいかで 決まる、と いう ことです。夏は 7時でも まだ 明るいので「こんにちは」、冬は 5時で もう くらいので「こんばんは」。きっちりした 時間の きまりは なく、目に 見える 明るさが 目じるしに なって います。
だから、夜に なってから「おはよう」と 言うと、聞いた 人は 頭の 中で「いまは 朝では ないのに、どうして?」と 一しゅん こんがらがって しまうのです。まちがいでは ないのに へんに 聞こえるのは、言葉の 意味では なく、時間が あって いないからです。
あいさつには、もう 一つ おもしろい きまりが あります。「おはよう」は、言った 人に 向かって「おはよう」と 同じ 言葉を 返せば、それで 会話が とじます。けれども、あいさつの 中には自分だけでは ぜったいに 終われず、まわりの だれかが ちがう 言葉で 返す ことで、やっと 1つの あいさつが 完成するものが あります。
| 出かける 人が 言う | 見おくる 人が 返す | いつ 使うか |
|---|---|---|
| いってきます | いってらっしゃい | 家を 出る とき |
| ただいま | おかえりなさい | 家に もどった とき |
| もしもし | もしもし/はい | 電話を かけた とき |
「いってきます」だけを 言って、だれも「いってらっしゃい」と 答えなかったら、少し さびしい 気もちに なりませんか。それは 気のせいでは ありません。この あいさつは、はじめから二人で 1つの あいさつに なる ように 作られて いて、片方だけでは 完成しないのです。「もしもし」も 同じです。電話を かけた 人だけが「もしもし」と 言い続けても、受けた 人が「もしもし」や「はい」と 答えなければ、通じて いるのか 分からず 会話に なりません。
つまり あいさつには、自分一人で 言いきれる ものと、相手の 返事が あって はじめて 1つに なる ものの 2しゅるいが ある、と いう ことです。
いま 出て きた「いってきます/いってらっしゃい」は、言う 人と 答える 人が ちがう 2人組の あいさつでした。でも 食事の 前後に 言う「いただきます」「ごちそうさまでした」は、少し ちがう しくみに なって います。
この 2つは、どちらも 食事を する 本人が、自分一人で 言う 言葉です。相手に 返事を もとめる あいさつでは ありません。「いただきます」で「これから 食べはじめます」と いう 始まりを 告げ、「ごちそうさまでした」で「もう 食べ終わりました」と いう 終わりを 告げて います。
| あいさつの しゅるい | れい | だれが 言うか |
|---|---|---|
| 2人組で 完成する あいさつ | いってきます ⇔ いってらっしゃい | 出かける 人と 見おくる 人 |
| 自分一人で 区切りを 告げる あいさつ | いただきます/ごちそうさまでした | 食事を する 本人 |
食事の あいさつにも、作って くれた 人や いっしょに 食べる 人への 気もちは こもって いますが、「返事を しないと とじられない」しくみには なって いません。同じ「あいさつ」と いう 言葉で まとめられて いても、できあがり方が ちがう ものが まじって いるのです。
学校の 帰りに 先生や 友だちと 言う「さようなら」。この 言葉を、家族に 向かって 使う 人は あまり いません。家に 帰った ときは「ただいま」、夜 ねる ときは「おやすみ(なさい)」です。なぜ 家族には「さようなら」を 使わないのでしょうか。
「さようなら」は、もともと「しばらく 会わなく なる」別れの ときに 使う 言葉です。学校の 友だちとは、次に 会うまで また 1日空きます。だから「さようなら」が ぴったりです。けれども 家族は、少し 時間が たったら また 同じ 家で 会います。すぐに また 会う 相手には「さようなら」は 使わないのです。
おもしろい ことに、「さようなら」は 本当は「友だちとの 別れ」に いちばん よく 合う 重い 言葉で、よく 聞く ことばの ように 感じて いても、実は 使う 場面は かぎられて います。だれに、どんな ときに 使う 言葉なのかを 知って いると、まちがえにくく なります。
「こんにちは」を ひらがなで 書く とき、さいごの 字は「わ」では なく「は」です。読む ときは「こんにちわ」のように「わ」の 音が しますが、書く ときは「は」。これは まちがいでは なく、ちゃんと 理ゆうが あります。
むかし、この あいさつは「今日は、お元気ですか」のように、長い 文の はじめの 部分でした。「今日は(きょうは)」の「は」は、「は」「を」「へ」の あいさつで 出て くる、文を つなぐ あの 助詞の「は」と 同じ なかまです。長い 文の あとの 部分が だんだん 省かれて、「こんにちは」の 部分だけが あいさつの 言葉として のこりました。だから 書く ときは 助詞と 同じ「は」を 使い、読む ときだけ「わ」の 音に なるのです。「こんばんは」も 同じ しくみです。
お昼すぎの うす暗い 時間など、「こんにちは」と「こんばんは」の どちらか まよう ことが あります。そんな ときは、どちらを 言っても 大きな まちがいには なりません。目じるしは「外の 明るさ」なので、まよったら その 場の 明るさを 見て 決めれば じゅうぶんです。
家を 出る ときに「ただいま」、帰って きた ときに「いってきます」と、うっかり 逆に 言って しまう 子が います。見分け方は かんたんで、これから 出かけるのか、もう 着いたのかを 考える だけです。出る ときは「これから 行ってきます」、着いた ときは「今、ただ いま 着きました」と、言葉の 中に すでに 答えが 入って います。
学校で おぼえた「さようなら」を、そのまま 家の 中でも 使おうと する 子が います。でも 家族には「さようなら」より「ただいま」「おやすみ」の ほうが 合って います。だれに 向けた 言葉かで、使う あいさつが かわることを おぼえて おくと、まちがえにくく なります。
あいさつは、ドリルで おぼえる より、毎日 の 生活の 中で 自然に くり返す ほうが、ずっと 早く 身に つきます。
Q1 「こんにちは」は 何時から 何時まで 使えますか。
A 時計の きっちりした 時間は 決まって いません。だいたい お昼すぎから、外が くらく なり始める 前まで が 目じるしです。明るさで 考えれば、まよう ことは あまり ありません。
Q2 お昼前の「おはよう」は まちがいですか。
A まちがいでは ありません。朝 起きてから お昼前までは「おはよう」の はん囲 なので、11時ごろに 会っても「おはよう」で 大じょうぶです。「おはよう」から「こんにちは」に 切りかわる、きっちりした 時間は 決まって いません。
Q3 「いってらっしゃい」を 言い わすれたら、どうなりますか。
A 何も 悪い ことは 起きません。ただ、「いってきます」は だれかが 返して くれる ことで 気もちよく とじる あいさつなので、できる ときには 返して あげると、出かける 人も 安心できます。
Q4 先生に「さようなら」、お友だちにも「さようなら」で いいですか。
A はい、学校で 別れる ときは、先生にも 友だちにも「さようなら」で かまいません。「さようなら」は 相手の 立場に 関係なく、「しばらく 会わなく なる」場面で 使う あいさつだからです。
Q5 外国の あいさつも、時間で かわりますか。
A 多くの 国で かわります。英語にも 朝の あいさつ、昼の あいさつ、夜の あいさつが それぞれ あり、日本語と 同じように 時間で 言葉を 分けて います。あいさつを 時間で 分ける 考え方は、日本だけの ものでは ないのです。
あいさつの 指導は「元気な 声で 言いましょう」という 態度の 面で 語られる ことが 多く、言葉の しくみとして 整理される 機会は あまり ありません。しかし この 単元で いちばん 伝えたいのは、あいさつには時間で 切り分けられる 1人完結の もの(おはよう・こんにちは・こんばんは)と、相手の 応答が あって はじめて 1つに なる もの(いってきます⇔いってらっしゃい)、自分一人で 区切りを 告げる もの(いただきます/ごちそうさまでした)という、少なくとも 3しゅるいの ちがう しくみが まざって いる、という 気づきです。
特に 2人で 完成する あいさつは、「言った 人の 言葉が 浮いた ままに ならないように、まわりが 受け止めて 返す」という、コミュニケーションの いちばん 基本の 形を 子どもが 早い うちに 体で 覚える 貴重な 機会でも あります。おうちで「いってらっしゃい」「おかえりなさい」を かならず 声に 出して 返して あげることが、そのまま いちばん よい 練しゅうに なります。
「さようなら」を 家族に 使わない 理由のように、あいさつは 時間だけでなく「相手との 関係」でも 言葉が 変わります。似た 視点は 関連記事の「まちの人と なかよく なろう」でも 取り上げて いますので、合わせて 読んで みて ください。