小1「英語で虫の名前を言おう」
虫の英語は、机の上ではおぼえにくい
色や数字の英語は、カードをめくって何回も言えばおぼえられます。ところが虫の英語だけは、同じやり方をしてもなかなか口から出てきません。理由はかんたんで、虫はカードの中ではなく、足もとや草のかげに急にあらわれるものだからです。目の前にアリが歩いているそのときに「ant」と言えた子は、次の日もその単語をおぼえています。反対に、教室でantのカードを十回見ただけの子は、校庭でアリを見つけても「あ、アリだ」としか言いません。
だからこのページでは、虫の名前を「おぼえる言葉」ではなく「見つけたしゅんかんに言う言葉」としてあつかいます。生活科で虫とりをする一年生にとって、英語は本を開く時間ではなく、外に出ている時間のほうがチャンスが多いのです。
校庭で出会いやすい虫の言い方
まずは、学校のまわりでほんとうによく見かける虫からはじめます。図かんに出てくるめずらしい虫よりも、今日その場で言えるかどうかを先に考えるほうが、一年生には合っています。
| 虫 | 英語 | 読み方の目安 | 言うときのコツ |
|---|---|---|---|
| アリ | ant | アント | 短くパッと言い切る。「アントー」と伸ばさない |
| チョウ | butterfly | バタフライ | はじめの「バ」を強く。あとは軽く流す |
| テントウムシ | ladybug | レイディバグ | 「レイ」を長めに。bugは「虫」という意味 |
| バッタ | grasshopper | グラスホッパー | grass(草)とhop(はねる)が合わさった名前 |
| カブトムシ | beetle | ビートル | 「ビー」を長く。カブトもクワガタもbeetleの仲間 |
| トンボ | dragonfly | ドラゴンフライ | dragon(りゅう)とfly。名前のゆらいを話すとよろこぶ |
| セミ | cicada | シケイダ | まん中の「ケイ」を強く。少しむずかしいので後まわしでよい |
| クモ | spider | スパイダー | 「スパイ」を強く。じつは昆虫ではない(後で説明) |
この八つをいちどにおぼえる必要はありません。校庭でその週に会った虫だけをえらんで、二つか三つずつ足していくほうが身につきます。冬に「grasshopper」を練習しても、はねるバッタがいないので、言葉だけが宙にういてしまいます。
見つけたしゅんかんに使う、たった一つの形
単語だけを言えるようにしても、会話にはなりません。といって一年生に長い文はむりです。そこで、次の一つの形だけをくり返し使います。
(見て! チョウだ!)
「Look!」は「見て!」というあいずです。虫をゆびさしながら言えば、それだけで相手に伝わります。言えたらすぐ相手が反応してくれるので、一年生には手ごたえがあります。なれてきたら、聞いたほうも返してみましょう。
B:Wow! Nice!(わあ! いいね!)
返事は「Wow!」「Nice!」「Cute!」のどれか一つで十分です。大事なのは正しい返事をすることではなく、虫を見つけた気もちが英語でやりとりされた、というたいけんをつくることです。
もう一歩すすみたい子には、数をたずねる形をそえます。アリの行れつは一年生がかならず立ち止まる場めんなので、じっさいに数える活動につながります。
Five ants!(五ひき!)
日本語と英語で、線の引き方がちがう
虫の名前には、日本語と英語でなかまの分け方そのものがちがうものがあります。ここは一年生でもおもしろがるところで、しかも高学年の理科につながる大事な入り口です。
- カブトムシもクワガタもbeetle。日本語ではべつの名前ですが、英語ではどちらも「かたい羽をもつ虫」という一つのグループに入ります。区べつしたいときは rhinoceros beetle(カブトムシ)のように前に言葉をつけます。
- bugは「小さな虫ぜんぶ」をざっくりさす言い方です。名前が分からない虫を見つけたときは「Look! A bug!」で切りぬけられます。一年生にはとてもべんりなにげ道になります。
- クモ(spider)は昆虫ではありません。足が六本ならinsect(昆虫)、八本ならクモのなかまです。英語で名前を言うついでに足を数えると、それだけで理科のかんさつになります。
「英語は日本語をそのまま置きかえたもの」だと思っていると、こういう場めんでつまずきます。ことばごとに、まとめ方がちがうと早いうちに知っておくと、高学年で単語がふえたときに混乱しにくくなります。
学校でできる活動
虫めがねウォーク
校庭を五分歩き、見つけた虫を英語で言うだけの活動です。言えたらカードにシールをはります。見つけられなかった日は「No bugs today.(今日は虫がいなかった)」と言っておわります。見つからない日があるのもしぜんなことで、そのときの言い方まで用意しておくと、活動がつづきます。
虫のヒントクイズ
先生が三つのヒントを出し、子どもが英語で答えます。
It has black dots.(黒い点があるよ)
It's small.(小さいよ)
→ ladybug!
色と大きさの言葉をすでに習っているので、前にやったことを使いまわせるのがこのクイズのよいところです。新しい単語だけを足していくのではなく、もっているものを組み合わせて言えた、というかんかくを育てます。
虫の動きまね
「butterfly」と言われたら手をひらひらさせ、「grasshopper」ならその場で一回ジャンプします。体を動かすときおくに残りやすく、しかもgrasshopperがなぜ「草をはねるもの」なのかを、せつめいせずに分からせることができます。
家でできること
家庭では、わざわざ英語の時間をつくる必要はありません。虫が話だいに出た、そのついでで十分です。
- さんぽのとちゅうでアリを見つけたら、大人のほうが先に「Look! An ant!」と言ってみる。子どもは答えなくてもよく、聞いているだけで耳がなれます。
- 虫のえほんを読むとき、絵の中の虫を一つだけ英語で言う。ぜんぶやろうとすると読書がとぎれて楽しくなくなります。
- 虫とりに行った日の夜、「今日は何に会った?」と日本語で聞き、子どもが答えた虫だけを英語で言いなおしてあげる。
気をつけたいのは、発音の直しすぎです。「シケイダじゃなくてもっとこう」と何度も言われると、一年生は言うのをやめてしまいます。この時期にいちばん大事なのは正かくさではなく、見つけたときに英語が口から出るかどうかです。
虫がにがてな子へ
クラスには虫をさわれない子、見るのもこわい子がかならずいます。その子に無理やり虫を近づけるのは、英語の学習としてもぎゃくこうかです。こわいものの名前を言わされたきおくだけが残ってしまいます。
そういう場合は、絵カードや図かんの写真で言う、遠くからゆびさして言う、友だちが見つけた虫を「Wow!」と受けとめる役をする、といったやり方でまったく問題ありません。英語で言えるようになることと、虫をさわれるようになることは、べつのことです。
まとめ
- 虫の英語は、カードより外で出会ったしゅんかんにおぼえる
- まずはその週に会った二〜三しゅるいだけ。冬にバッタを練習しない
- 形は「Look! A 〜!」の一つでよく、返事は「Wow!」で足りる
- 名前が分からない虫は「A bug!」で切りぬけられる
- beetleやspiderのれいから、日本語と英語で分け方がちがうことに気づける
- 発音を直しすぎない。虫がにがてな子は写真やゆびさしでよい
生活科の虫とりと外国語活動は、時間わりの上ではべつの教科です。けれど一年生にとっては、どちらも「草むらでなにかを見つけた」という同じ体けんの中にあります。そのかさなりを利用できると、英語はおぼえるものではなく、使ったことのあることばになっていきます。